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『箪笥の肥やし』 着ない着物の行方は?・・・呉服繁盛店の作り方シリーズその1。

 一般的に、着物を着ないまま、箪笥に入れっぱなしにした状態、その着物を「箪笥の肥やし」と言います。

一口に「箪笥の肥やし」と言ってもそうなる理由には、様々なパターンがあります。
貴方の箪笥の肥やしは以下の何番に当てはまりますか?

1、作家物などの高価な着物で、持ち主とって身分不相応と思える着物。
また、希少性を売りにしている高価な紬など。
「着物が高価過ぎて、汚したりするのが怖くて、結局着てないんですよ。いざという時のためにとってあります。」という言葉を私は何度も耳にしています。しかし「いざという時」って、ほとんど来ないのです。
ご本人が亡くなったら確実にリサイクルショップ行きです。

2、結婚時に嫁入り道具として親に持たせて貰った着物。
「結局、気がついたら40年、着てません」と先日もコメントいただきました。これも、何度聞いた言葉か。この「箪笥の肥やし」が一番多いかもしれません。

花嫁道具の着物

3、呉服の展示会などにたまたま出向き、作家や販売員たちに言葉巧みに売りつけられた着物。 付き合いで買わされた着物。
仕立て上がって、羽織ってみたが鏡に写すと太って見える、老けて見えるなど、似合わないと判って結局着ない。冷静に見て「着たい」と思えないから着ない。また、高級な色留袖や訪問着など、良いものは分かるのだけど、自分の生活水準や交友関係では結局着る機会がない。
「時々箪笥から出して眺めてため息ついてます」とは、最近聞いた話。

4、一人で着付けできない人が衝動買いした普段着の着物。
普段着なので美容院などで有料で着付けてもらうのも馬鹿馬鹿しく、かと言って、独学て着付けを練習する程の熱意もなく、お金を払ってまでして着付けを習おうとも思わない。結局は「いつか着るだろう」と、箪笥の肥やしになる普段着。
普段着の「いつか着るだろう」の「いつか」も、ほとんど来ないのです。

一人で着られないから

5、若いころに買って着ていたけれど、趣味が変わり、体形が変わり、寸法直しするほどの執着もなく、結局箪笥の肥やし。譲る家族や親戚もなし。
このパターンはコメントで教えていただきました。

6、他人から貰ったが、いろんな事情で結局着なかった着物。
「ありがとう」と、貰ったは良いが、いざ着るとなると派手すぎるとか、裄が合わないなどといった問題点に気づき、結局箪笥の肥やし。貰ったものだから直して着るほどの愛着もなし。

7、最も単純な理由。「着て行くところがない」「着る機会がない」「着る理由がない」
私などは「そんな機会は自分で作れば良いだけのこと」「着たいと思う以外に理由などいらないのでは?」と思うのですが、立場や地域性からそれもままならない環境におられる女性も多いそうです。これもコメントで教えていただきました。

着たい着物があれば着る機会は現れる

8、気に入って着ていた着物、汚れたけどクリーニングや洗い張りなどのメンテナンスを相談する人がいないしめんどうくさい。しみ抜きなどにお金がかかりそうだ。
結局、リサイクルショップで次の着物を買って、汚れた着物はそのまま箪笥の肥やし。
このパターンも最近知りました。

9、最後は、業者にとって一番嬉しいお客様。
最初から着物を集めるのが趣味、買うことが喜び。
珍しい着物があると飛びつく。滅多に着物は着ないが着物は大好きと言うコレクタータイプ。だから、しつけ糸はわざと取らない。
ご本人亡き後、遺族がリサイクルショップに、というパターン。
このタイプの客が製造や販売業者に間違った価値を与え、勘違いさせてきました。

リサイクルショップに並ぶかつての箪笥の肥やし

以上、皆様の箪笥の中にも思い当たる着物があるのではないでしょうか。
賢明な呉服店のオーナーならばこれぐらいの分析は出来ていると思います。

貴方の箪笥の肥やしは何番に当てはまりますか?(複数?)
是非コメントで教えてください。

これ以外にも箪笥の肥やしになる理由はあればぜひ教えてください。

当然、帯も同じ様に箪笥の肥やしとなるのですが、帯はまだ他の着物に合わせたり、基本的にフリーサイズなので他人に貰ってもらえたり、着物に比べたら使い道はありますよね。

身近に引き取り手のないこれらの箪笥の肥やしがやがて捨てられるか、リサイクルショップに流れることになります。

しつけ糸が付いたまま

これを読んで、このままでは・・・になると、想像力を働かし、それならば・・・・こうしようと考えを巡らす。

それはみんなでやらなければならないことです。

着物を愛しているなら、作る人も、売る人も、買う人も・・・・

#呉服繁盛店の作り方 講師

#和文化デザイン思考 講師

#成願義夫

株式会社京都デザインファクリー

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