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生き継ぎ

♪ ここで泣いて泣き止んで 生命(いのち)生き継ぎ 笑ってバトンを繋げますように 離れても大丈夫 届くくらいの花火きっと上げるよ

生き継ぎという或るアーティストの楽曲を聴いてはっとした。私は今まで残された者が可哀そうで、空で見守ってね、助けてね、という概念に勝手にとらわれていたように思う。本当は先に逝ってしまうことがどれだけ辛いか、残した者のことがどれくらい心配かしれないのに。
だけどこの歌詞を書いた人は来てではなく自分が空に花火を打ち上げると言うのだ。来なくても届くくらい大きく高く空に打ち上げようとしている。強いなー、いやいや心を強く居るんだなーと。

2009年8月に突然夫が急性白血病という告知を受けた。お医者様の話では1か月集中治療室に、その後一般病棟に移り半年で退院と聞いていた。なのに9日後他界してしまい、あの9日間は私にとって目の前で起こるリアルなドラマだった。あれからずっと私はその9日間を引き摺ったまま生きてきたような気がする。知らない内に自分が被害者のように感じ、笑いながらも半分人生に絶望して投げやりに生きていた。別に誰が悪いわけでもないのに、だ。

当時の私は無理やり笑わなきゃって思うから余計に心のバランスが崩れていたようで、或る時友人が知人のペットが亡くなったという話をした時に私は何故か笑顔を作ってしまった。瞬間自分でもおかしい、壊れてると気づいた。そういう心と頭と動作がアンバランスな時期は徐々に減っていったけどそれでもたまに現れて相手に違和感を持たれてしまう。
でも心底笑えてない人に早く気づける善い面もある。必ずしもマイナスとも思えず、勝手に仲間意識も生まれ近づきたくなってしまう。

コロナでなかなか三重に帰れない日が続いていて、ようやく昨年の夏に十三回忌をしてきた。家族でするお葬式や回忌は亡くなった人の為ではなく、実は残された人が踏ん切りをつける為の手助けであるとも言われている。法事は一つ進むごとに一つ自分も前に進める。そういう意味でも私の昨夏の帰省は幾つかの負の意識を乗り越えたような気持ちになれた。
それでも幾分かまだ残って燻っていた自分自身の被害者意識をこの歌の言葉が搔っ攫ってくれた。そうだ、私も花火をあげよう!

コロナが明けたのか、みんなが withコロナを考え出したからか、今年は各地で花火大会が再開される。私の部屋のベランダからも何年かぶりで花火が観られる。空に咲いた花火を観ながらこれから自分がどんな風に暮らそうかと考えてみよう。自分がもしこの世から居なくなったら、その時子供たちにどんな風に暮らしていてほしいのか、それが空に向けて告げたい自分の暮らしと近いのではないか。

東京のお盆は地方より1か月早く来るのをご存じだろうか。私は渋谷のシニアたちに番組の中で教わった。渋ラジにやってくるシニアの方々は渋谷の生き字引きであり、若い人の何倍も経験豊富な知識人であり、まだまだ元気いっぱい動き続けている活動家でもある。
長く生きていると嬉しいことも多いけど失敗や悲しみも若い人の何倍も経てきているはずだ。それでもいつも元気にやってきてくれるから尊敬している。あのパワーを真似て私も自分のできる事をできる範囲で後に継いでいかねばと思う。

夏はお盆、秋にはお彼岸、空を見上げる時間が増える。「恋空」という若い子の映画の中で、病室で、ミカが「空が晴れてたらヒロが笑ってる、雨だったらヒロが泣いている」っていう台詞があって、だからか私は晴れが好きだ。でも宮沢賢治のアメニモマケズでは「ヒデリノナツハ オロオロアルキ」という一文もあり万人の為の正解が在りえないのも解る。正も負もみんなに等分に分け与えてほしいと神様に願う。

昨年も一昨年もこの時期に命についての note を綴ってきたように思う。それはきっと自分のもやもやを具現化したかったんだと今は気づく。昨年の夏を経て、この歌詞に出逢ってやっと私の両肩が軽くなった気がする。
夫によく言われていた。レストランで注文してからまたメニューを見てこっちが良かったかなと迷っている奴が私。注文が終わったら一切見ない夫。善いバランスの夫婦だった。

YouTubeより引用
天才凡人 - 生き継ぎ【OFFICIAL LYRIC VIDEO】 - YouTube

生き継ぎが入ったアルバム『The Letters』配信リンク

7月29日 追記
私は打ち上げられた花火を観て綺麗とか癒されるとかしか感じてなかったけど、最近、この年になって花火が始まった理由を知った。
享保18年(1733)
死者たちの慰霊や悪疫退散のため打ち上げられた江戸の花火。
2023年7月29日 19:00~20:30
今夜は隅田川の花火大会の日である。ちょっと観てこよう!

國學院大學メディア ARTICLEより引用
なぜ日本では夏に多く花火大会が行われるのですか? – 國學院大學 (kokugakuin.ac.jp)  外国人から見たニッポン


2024年7月31日 追記

渋谷のラジオで特番を作らせていただきました
表舞台には立てないから私は花火師です
大好きなアーティストにご出演いただき
大好きなライブの番組をオンエアできる私は幸せだなと思います

今日は夫の誕生日
空で、打ち上げた花火をしかと受けとって下さいな
私は今こんなことして生きてます!
局からもらえた放送枠が今日というのも不思議な縁です

https://x.com/shibuyanoradio/status/1818292547497742465


Photo bysono_note 
この楽曲のMVに沢山の手の写真が出てくるため、
トップに入れる絵、お借りしました。


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