陰謀論のグラデーション
◾️はじめに 陰謀論のグラデーション
ついに陰謀論者がテーマのマンガ『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』(魚豊)の最終4巻が発売されました。
そこで今回は「陰謀論観」についてです。
「陰謀論観」とは「陰謀論に対してどのように向き合っているか」のことです。
僕は常々この陰謀論観のズレが「陰謀論者」と「アンチ陰謀論者」との話し合いの邪魔をしていると考えています。
具体的には、陰謀論者が挙げる「陰謀」の信憑性がグラデーション(荒唐無稽なものから現実に起きたことをベースに推測されたものまで)になっていることや、アンチ陰謀論者が指摘する「陰謀論」の浅さ(つまり馬鹿にした態度)が、話し合いを成立させないように影響してしまっていると感じるのです。
まずは僕さかもと五度の陰謀論観をお伝えしておきます。
その後お読みいただいている皆様の陰謀論観がより明確になるよう、さまざまな陰謀論の例を列記していきます。
僕の陰謀論観と全て合致する方もいれば、全部合わないという方もいらしゃるでしょう。そして合う合わないとは別に、グラデーションの濃淡が似ていたり全く違ったり、ということもあり得るでしょう。
グラデーションの濃淡とはつまり0か100か、では無い、ということです。
僕が目指すのはこの、グラデーションの濃淡に気づき合うこと、です。
「陰謀はあるんだ!」「いやそれ陰謀論でしょ(笑)」と100か0かに固執して議論をやめてしまう状況が改善されることを望みます。
陰謀論者もアンチ陰謀論者も手を取り合い助け合って行くべき、というのが僕の根本にある考えです。
◾️さかもと五度の陰謀論観
僕の陰謀論観は分かりやすいです。
「陰謀の有無など分かるわけ無い」という立場です。
一般人にバレるようなものは陰謀ではないでしょう。その意味では僕はアンチ陰謀論者なのかも知れません。
ですが僕は陰謀はあると考えています。というか陰謀はあるに決まってると思うのですが、アンチ陰謀論者の方々は何を持ってアンチになっているのでしょうか。
「陰謀論などありえない」という考えを持っているということは、陰謀論が無いという証拠を知っている、あるいは陰謀論が無いことを証明できる、ということになります。なぜそんな証明ができるのでしょう。
例えば一つの会社を取ってみても、出世争いやライバル失墜などで陰謀(ひそかに企む悪いはかりごと)を計画する人はいるでしょう。
社会はもっともっと大きい。そして全世界の国々ともなると悪い企みはものすごく複雑で多層的なはずです。
様々な人や組織が計画する物事が意図しない形で社会に波及することは十分に考えられます。そしてそれが陰謀論のような姿に見えることだってあり得るでしょう。
これが僕の陰謀論観です。
陰謀は超絶複雑で多層的。それゆえ個人の思惑を軽々超越して予期せぬ結末を引き起こす。
そして陰謀についての情報が我々に降りてくることなどありえず、だからこそ有るか無いかを我々が判別することなど出来ない。
◾️ワクチン陰謀論のグラデーション
陰謀論を語る上で「反ワクチン」はとても分かりやすいと思いますし、コロナ禍を経験した我々にとってとても身近な話題だと思います。
みなさんのお知り合いにも「反ワク」の方がいらっしゃることでしょう。
ワクチンに対する立場は「全てのワクチンは害悪」という方から「全てのワクチンは安全」という方までグラデーションになっていると思います。
「インフルエンザワクチンを打ったことあるけどいまいち効果がわからない」とか、「生ワクチンや不活化ワクチンはわかるけどm RNAワクチンってもうそれワクチンじゃなくね?」とか。
コロナ禍を経てワクチンに対する知識を増やした方が大半でしょう。
僕の立場はcovid-19に効果があるワクチンって実際に作れるの?と疑問視している立場です。
ワクチン全般に反対しているわけではありません。あくまで 「風邪ってそもそもワクチン作れないのでは?」という考えです。
ご存知の通り風邪のウイルスであるいわゆる旧型のコロナウイルスは変異し続けますから特効薬は無く、そのためみなさんは毎年のように風邪をひき続けます。
そしてワクチンの特性を踏まえるならば、普段から風邪ウイルスを体内に取り込んでおけば良いのでは?と考えます。つまり元気な時に風邪ウイルスを取り込み免疫を得る。そうすることで抗体を備えて風邪の流行に打ち勝つ。
さて、ワクチン陰謀論ですが、ウイルス学者の宮沢孝幸先生が新型コロナウイルスに対するお考えを述べ、苛烈に攻撃されたりしています。グラデーションで考えるならば宮沢先生のご意見についてもしっかり検証すべきだと考えます。
これを0か100かで考えるからワクチンに対する反対意見全てを「反ワク」の枠に押し込んでしまいます。
ワクチン陰謀論があるかはわからない。でも現実に起こっている問題は検証すべき。これしかないと思うのですが、なぜ陰謀論があるか無いかだけで話を終わらせようとするのでしょうか。
◾️タスキギー梅毒人体実験
黒人を梅毒の実験体として扱ったという事件が実際に起きたというのがとてもおぞましいです。
タスキギーというアメリカの町で黒人を対象に40年間行われた梅毒の人体実験で、その後クリントン大統領により政府からの正式な謝罪がされたとのことです。
非倫理的な実験が40年間もの長期間行われていたというのがとても恐ろしいですし、2024年現在まだ明らかになっていない大規模な人体実験も他にあるのでは無いかと想像するのもしょうがないと思います。
新型コロナウイルスワクチンに対してもタスキギー梅毒人体実験を引き合いに出す方もいますが、その真偽を証明するには何が必要なのでしょうか。
◾️ケネディ大統領暗殺
ケネディ暗殺についてはオズワルドが狙撃者とされていますが、いまだに真相が明かされない部分が多く、陰謀が渦巻いている事件です。
狙撃者が別にいるのではという意見や、ケネディ暗殺を計画した黒幕がいるという意見など様々です。
アンチ陰謀論者のみなさんはこの事件に対してどういうスタンスなのでしょうか。
オズワルド一人で全てやって、のちにオズワルドも殺されてしまっただけの事件なのでしょうか。
それともグラデーションのように少しは陰謀説を受け入れているのでしょうか。
◾️安倍元総理襲撃事件
個人的には事件当時から陰謀を疑っているのがこの安倍元総理襲撃事件です。
実行犯が別に居るのではないか?安倍元総理が搬送されている時に暗殺された可能性は無いのか、などいろんなことを考えました。
手製の散弾銃であの距離から正確に安倍元総理にのみ当てることなど可能なのか。山上被告は実は黒幕に担がれただけなのではないか。そもそも裁判はいつやるのかなど気になる点が多いです。
山上被告は統一教会に対する恨みがあったと言われてますが、安倍元総理にその怒りをぶつけるのもよく分かりません。
真犯人が別にいる説は色々検証されている方がいらっしゃいますので調べてみてください。数々の疑問が浮かび違和感を覚えると思います。
◾️飛行機から散布するケムトレイルって効率悪く無いですか?
陰謀論者に話題のケムトレイルですが僕は否定的です。
飛行機から散布するよりもっと効率的な方法あるだろって思うんですけど。
飛行機雲を見てばれるし風に流されちゃうような不正確な方法を取るとは思えません。
ケムトレイルって全然調べてないので目的がわからないのですが、もし人口削減とか健康被害などを狙うのならもっと効率的でばれにくい方法があると思うんですけど。
◾️ウクライナ侵攻の善悪
日本ではロシアによるウクライナ侵攻に対し、ロシアが悪者、ウクライナやアメリカが善という報道が多かったですが、これは偏向報道では無いのですか?
ロシア・中国側はウクライナ侵攻を肯定するでしょう。
どちらも偏向報道だと思います。
アメリカは大体10年ぐらいの周期で古くなった戦争兵器を処理するために戦争を引き起こすと言われています。
ウクライナ侵攻は、アメリカ自身が戦争をせず、古い兵器を処理するためにはうってつけのやり方に見えます。
ウクライナ侵攻が長期化すればアメリカも戦争兵器で儲かるでしょう。
まったく損をしません。
ウクライナがアメリカ側ということは、同じくアメリカ側についている日本もウクライナを応援すべきですよね。
ロシア側にウクライナを攻める理由があるのだとしたら、それについて議論することが大事だと思うのですが。
◾️貿易センタービルの崩落
2001年9月11日に発生した世界貿易センタービルへの航空機衝突ですが、これは陰謀論者にとって掘れば掘るほど謎が渦巻く出来事です。
第1ビル、第2ビルに衝突したとされる航空機ですが、ニュース映像では航空機の姿が見え、一般の撮影者の映像では航空機は無くただビルが爆破しただけ、というどちらが正しいのか分からない映像が拡散されています。
(今後生成AIの技術や加工技術が向上することで、我々は映像から真偽を見抜くことがますます不可能になっていくことでしょう)
そして、航空機衝突の第1第2ビルとは離れた場所にある第7ビルもなぜか崩落しました。第1第2ビルのがれきが当たって第2ビルは崩落したと言われていますが、それほどの威力のがれきが他の地域に飛散しなくて本当に良かったですね。第7ビルを狙い撃ちするかのような不思議ながれきで良かったです。
また世界貿易センタービルは当時の時点で古い建物だったらしく、維持費が大変だったとのこと。所有者が事件の数か月前に移り変わり、そして新しい所有者が多額の対テロ保険を掛けていた、とのことで、ますます怪しまれました。
つまり、古くなった世界貿易センタービルの維持費がもったいないため撤去したいが撤去費用も膨大になってしまう。テロ保険を掛けてテロに見せかけて解体作業をすれば大儲けできる。
このような考えを持つ人もいるかもしれません。
さらにはこれをきっかけにアメリカはイラクに対し「大量破壊兵器を隠し持っている」と判断し、イラク戦争が始まりました。ですが結局は大量破壊兵器などありませんでした。
なんでもありなアメリカは「無敵の国」なのでは?
◾️まとめ 「わかる」を過信せず分断にあらがおう
いかがでしたでしょうか。
すべてに「陰謀は無い」という考えをお持ちの方や、「すべて陰謀である」という方。そして「思惑が複雑に絡み合った結果陰謀に見える」という考えの方。さまざまでしょう。
「陰謀は無い」と言う方は、そもそも世の中のことを理解可能だと思い込み過ぎだと思います。自分の頭の中にある知識とこれまでの経験だけでなんでも判別できる、理解できると思うのは僕からすると傲慢に見えます。
僕は世の中の99.99999………%のことは分かりません。極微小のことしか知らないまま生きるしかないと思っています。
生涯かけてこの0.00000……1%を、0.00000……2%にする。
それが僕の決めた生きる価値です。
また、「すべて陰謀である」と言う方は、悪の親玉が居ると信じ過ぎな気がします。
社会というのはみんなが善きことと思って行動したり判断しているにも関わらず、意図せず誰かが不幸になってしまうものです。
そう。社会はものすごく複雑で、予測不能で収拾不能で制御不能です。
そして、人々の決断は必ず間違えます。
だからこそ我々はその都度議論をし、改善策を試し、また間違え、そしてまた議論をし続けなければなりません。
起きてしまった不幸な出来事に対し、理由付けや原因追及などを後付けし意味を持たせる。そして見抜いていた自分を誇る。この行為になんの意味があるのでしょうか。
悪さを見抜いたと。洞察力と知識と推理力がすごいと。誰かに賞賛されたいのでしょうか。認めて欲しいのでしょうか。すごい人物だと思われたいのでしょうか。
陰謀を見抜いていたとしても、誰も救えなければむなしいだけですし、誰かを救おうとする陰謀論者の振る舞い方は多くの人にとって迷惑となります。
アンチ陰謀論者も陰謀論者もどちらも冷静さを欠いているように見えます。
最後に、僕の考えを改めて書きます。
冒頭で申し上げた通り、僕は「陰謀の有無など分かるわけ無い」という考えです。
個人や会社が企む悪巧みは当然あるでしょう。そしてそれが意図せず巨大化し複雑化することもあるでしょう。
忖度が折り重なってありもしない存在へ取り返しの付かない献上をすることもあるかも知れません。
もちろん僕らが存在を知ることすらあり得ない人物が陰謀を世に放ってる可能性もあります。
例えそうだとしても「陰謀の有無など分かるわけ無い」。
この社会の全貌を知ることが出来ないのに似ています。
僕らはそもそも「わかる」ということを過信しない方が良い。
知識や経験を積み重ねていけば「わかるはず」という過剰な思い込みは、やがて知識や経験を積み重ねたのだから「わかった」という勘違いに転落します。
「陰謀かも知れないし陰謀じゃないかも知れない。だからみんなで議論をしよう」
分断ではなく共闘。
そうすることようやくで陰謀の是非にたどり着ける気がします。