そのタップが遠くの誰かを死なせてしまう
SNSの普及に伴い言葉で他者を傷付ける人がより目立つようになってしまいました。
今後も誹謗中傷は無くならないのでしょうか。
酷い投稿が減るために何が必要なのか改めて考えてみたいと思います。
◼️ 仕組みをいじる
以前ローレンス・レッシグの『CODE』という本が話題になりました。
そこでは人の行動は何によって制約されるか、ということを4つに分けて説明されています。
【法】
誹謗中傷にあたる投稿に対し「名誉棄損罪」や「侮辱罪」などが適用されますが、いまだにそのような投稿が無くならないところを見ると、まだまだ法による規制は改善の余地はありそうです。
SNSの普及スピードや誹謗中傷問題の量に対して法律が追い付いていないのが現状だと思われます。
【規範】
親からのしつけや社会的なルールなどをバージョンアップすると誹謗中傷は無くなるでしょうか。
確かにスマホの使い方やSNSとの接し方を学ぶことで誹謗中傷投稿をする人は減るでしょう。
ですがSNSがこれほどまで流行した時代は人類史上初めての状況なので、教えられる人が少ないという問題がまずあります。そして物心ついた時にすでにSNSがあるという世代が今後当たり前になっていきます。教えられる人はいないのにすぐにSNSを利用する若者は増え続けるわけです。
インターネットが普及する前であればネット掲示板やメーリングリストなどで徐々にネットマナー(ネチケ!)を学べたでしょう。現代は自身のスマホから全世界のスマホユーザーへSNS投稿が届いてしまいます。
ネット掲示板とSNSを例えるとしたら、集会所と回覧板の違いという感じでしょうか。
集会所(ネット掲示板)に集まってあーだこーだ言い合っていても、集会所に行かなければ何も聞こえて来ませんし、何か言いたい時に集会所に行って言い合いができました。
回覧板(SNS)は自分の意思とは関係なく自分の家に回ってきたり、特定の人にだけ伝えているつもりでも遠くの家にも自身の発言が回ってしまいます。
SNSについてルール(SNSエチケット)が共有されたとして、それで誹謗中傷は減るかもしれません。ですがまだまだ無くならない気がします。
【市場】
ではSNSに投稿する際やリツイートが料金制だとしたらどうでしょう。
これはかなり実効性がありそうです。
ですがSNS管理会社はやりたがらないでしょう。
誰もそのようなSNSは使わないからです。
【アーキテクチャ】
SNSの仕組みそのものを構築し直すのも効果的でしょう。
例えば誹謗中傷を含むと思われる投稿を検知し、投稿前に警告が表示されるというのはどうでしょうか。
他にも、同内容の投稿が自分のプロフィールに固定されたり、タイムラインに残るというのも自身の投稿の見直しや踏みとどまる契機になるかもしれません。
◼️ 結局は自制しかない
SNSにまつわる仕組みをいじられることで一定の抑止にはなるでしょう。
ですが完全に無くなるわけではないでしょうし、仕組みを変え過ぎるとSNSそのものの良さまで破壊してしまいます。
言わずもがなですが包丁や自動車と同じように使い方を自ら学ぶ必要があります。
学ぶ必要がある人にはこれらの言葉が届かず、すでに学んでいる人にしかこれらの言葉が実感できない、というもどかしさがありますが。
SNSでの誹謗中傷投稿にまつわる最良の教科書として『しょせん他人事ですから』(左藤真通、富士屋カツヒト、清水陽平)を推したいと思います。
軽い気持ちで誹謗中傷投稿をリツイートしたり、尊厳を傷つけるようなリプライを送った人がどうなってしまうのか、とてもわかりやすく丁寧に、恐ろしさまで含めしっかり描かれています。
「自分は関係無い」とは思わずぜひご一読ください。
僕が個人的にSNSの使い方で気をつけていることを挙げます。
・自分事と他人事を見極める
・主語をぼやかさない
・投稿ボタンを押す前に一呼吸
まずはそもそも他人事に口出ししない、というのを心がけています。
芸能人が不倫しようが、それを非難しようが、僕の人生とは一切関係ありませんし僕が幸せになることもありません。
そして投稿内容は僕がどう感じたかなどをメインとし、「男はこうする」とか「日本人ならこう」みたいな書き方を避けます。
最後に、自分が書いた投稿が誰かを著しく貶めていないかを確認するために一呼吸置きます。
怒りで我を忘れ勢いのまま投稿したりリツイートをしたりすることがあるかも知れませんが、1回のタップが人を傷付けてしまうという自覚を強く持って自分自身をコントロールしていたいものですね。
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