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ピョンヤン市内をゆく(8)~その他まとめて<後編>~


さて前編に引き続き、もうすこし市内観光を。

●凱旋門

高さ60mで
「パリの凱旋門より10m高い」ことで有名ですw

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これも花崗岩製で1万個以上の石を組んで1982年に完成。
金日成主席が日本の植民地支配からの解放闘争に勝利し、
祖国へ凱旋したことを記念する…のだそうです。

門の両側には「1925」と「1945」の文字があり、
「1925」は金日成主席が革命を志してピョンヤンを発った年、
「1945」は日本軍を朝鮮から撤退させ彼が凱旋帰郷した年。
…ま、あくまでも北朝鮮国内で教えられている歴史です。
ここの高さや石の数には特に意味はないようです(笑)が
世界最大の石造門だとのこと。

内部にはエレベーターがあり、三重屋根の最下段まで上がれます。
ここは展望台として再整備され、
2016年から観光客にも開放されました。
展望台への入場料も「千円」ww

さっそく上がってみます。

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凱旋門から北方向。
主体思想塔ほど極端に高くないので
絶景、ではありませんが程よい眺めです。
人やクルマの動きが良く見える面白さがありますね。

反対側へ回って南方向。

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市内中心部を望みます。
ここからもあの三角形の柳京ホテルが。

すぐ隣には金日成競技場があります。

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2011年のワールドカップ予選では
日本代表と北朝鮮代表とがここで対戦しましたね。
当時ニッポンのサポーターも百人以上訪れたそうです。

近くに映画館も見えました。

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その名も「凱旋映画館」。
やたら勇ましい名前に思えますが
ま、最寄りの地下鉄駅も「凱旋駅」だし
大通りの名前も「凱旋通り」なので普通に地名ですね。

日中は上映していないのでしょうか。閉まっているよう。
上映中の映画の看板が両端に1枚ずつ出ていますよ。
左は「民族と運命」。ずっと続いてる代表的なシリーズです。
右は「我が家の物語」。これは知らないなぁ。現代劇かな。

展望スペースは広々。
ベンチもあり、景色とともにゆったり会話も楽しめそう。

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夜景なんか見ながらだといい感じかも。

デートスポットにもいいですね♪と施設の人に言うと
やっぱりそういう市民もいるそうな。
市民カップルの入場料はいくらなのかは聞きそびれましたが
夜7時まで開放しているそうです。

●人民大学習堂

ここもけっこう有名です。
いわゆる「国会図書館」のようなもの。
金日成広場の前に建つ伝統的朝鮮様式の建物で
軍事パレードの時など、ここの前に
ひな壇と貴賓席が設置されてますね。
こちらは入り口のある裏(?)側。

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延べ床面積10万㎡以上という巨大施設で
20以上の各種閲覧室や資料室のほか、

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800席の大講堂もあります。

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蔵書数は「数千万冊」だそう。
希望する本はカウンターで申請すると
自動的にコンベアで運ばれてきます。

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中央ホールには巨大シャンデリア。
大理石造りの床や柱、手すりといい
図書館には不釣り合いなほどの豪華さです。

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上階は自由閲覧コーナー兼休憩スペース。
1階壁際に見えるモニター画面では蔵書検索ができます。
以前は膨大な数が並ぶカード目録をめくっていましたが
現在は全体的にコンピューター化されていて、
利用者カードを作成するとオンライン検索のほか
入退館、貸出返却手続きまでできるそうです。

また、館内には多くの講義室があり、
市民対象の外国語講座などが開講。

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この時のぞいた部屋はちょうど英語講座の始業直前でした。
みんな熱心に予習してます。
ドア開けたらむっちゃ見られた…(苦笑)

英語のほかにも中国語、ドイツ語、ロシア語などのほか
語学以外の教養講座もいろいろあるそうですが
やはり語学講座が一番人気だとのこと。
希望者は全員、無料で受講できるんだそうです。
仕事などの都合に合わせて受講できるよう
朝8時からの昼間部と夜6時からの夜間部の
それぞれ同じ科目の講座が組まれていて
語学講座ならだいたい5か月程度で修了との説明でした。
そのへんは図書館というより公民館的な感じですね。

6階へ上がるとここにも展望台があります。
真っ正面には金日成広場とあの主体思想塔。

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広場の両側にある建物は
左の兵士の看板がある方が朝鮮中央歴史博物館。
右の赤旗がついてる方は朝鮮美術博物館だそうです。
看板と建物とはぜんぜん関係ありませんでしたww

かつては前を流れる大同江のど真ん中から
主体思想塔に匹敵する高さ150mの
巨大噴水が2本、豪快に噴いてたんですが
最近は節電のためか止まってるようです。

●紋繍遊泳場

最後は2013年にオープンした大レジャーランド
紋繍(ムンス)遊泳場のご紹介。

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水の波をイメージしているであろう正門ゲート。
客待ちタクシーが並んでいます。
以前の北朝鮮では考えられなかった光景ですよ。

脇には営業案内の看板がありました。

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小さいほうの枠には9時から19時までという営業時間。
下に黄色で月曜休業・木曜設備点検と書かれてます。
営業止めての設備点検が毎週あるんだな。なんとマメな。
でも点検日は休みじゃなくて仕事してるよ!という意味か
あくまで木曜は「休業」としないところにこだわりを感じますw

メインの大きい方の枠では施設内の紹介。
赤い文字で「奉仕案内」とあります。
奉仕=サービス、ですね。

そして中身は大きく2つに区分。
黄色で「물놀이봉사」と「체육오락봉사」です。
「물놀이봉사(ムルノリポンサ)」って、直訳すると
「水遊び奉仕」なんですが(笑)、「プールエリア」ってことで。

北朝鮮は外来語を使わない意識がまだ根強くて
「プール」は「물놀이수조(水遊び水槽)」と呼びます。
なんだか大げさな感じですね。

ま、それはともかくこのプールエリア。
室内遊泳場のほかに野外遊泳場もあって
そのうえ各種サウナ室まであるそうです。
ちなみに北朝鮮で「ウォータースライダー」は
「水すべり台」です。でもまぁそのままですよね。
むしろ何でもかんでも英語にするよりわかりやすいかも。

2つめの「체육오락봉사(チェユゴラクポンサ)」は
「体育娯楽奉仕」で、まぁ「スポーツエリア」かな。
バレーにバスケ、バドミントンなどができる体育館と
各種運動器具を備えたジムや野外運動場も完備。

いちばん下の黄色い2行は便宜施設の案内。
理美容室に美顔、マッサージと飲食施設があるそうです。
なかなか規模が大きな施設ですよ。

ではさっそく突入です。
お、建物の入り口にはまた例の赤い額装が。

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「金正恩委員長が現地指導された」という表示です。
2013年5月6日~10月13日の5か月間で
なんと8回もやって来たそうな。
月イチ以上とは受け入れの担当者も大変だったろうなぁ…
指導者の現地指導としては異例の多さです。

ここからもわかるように、この紋繍遊泳場は
金正恩委員長の思い入れが特に強いイチオシ事業でした。
2013年1月に出した事業開始の建設命令は
「10月10日の党創建記念日までに完成させよ」。
何もない丘陵にわずか9か月で建設完成という
はた目にはもう無理難題と言っていいレベルなんですが
こう毎月のように現場を見に来られたんじゃたまりません。
ものすごい突貫工事でなんとかやり切っちゃいました。
この工事に従事したのも朝鮮人民軍。
落成式で金正恩委員長は大満足だったそうですが
ワタシのサラリーマン経験からは現場に同情しちゃいます。

こちら建設中の紋繍遊泳場。

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  (朝鮮外国文出版社「2013年の金正恩第1書記」から)

入り口近くに並ぶ何棟もの青い屋根、
たぶん部隊ごと住み込みで従事してたんでしょうね。
そのあたりの想いも噛みしめながら館内へ。

オプションで訪問したのでツアー代とは別料金となり
あらためて入場料15元(約800円)を支払います。
でも半券もらえず。どうせ外国人(案内員?)料金なんでしょね。

中へ入るといきなりショーウインドウ!

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水着の販売をしているようです。
が、デザインと言い色彩と言い、どうにも微妙。
マネキンの表情とポーズも…う~ん、なんというか。
スイムキャップはプール内で着用の規則があるため
ディスプレイ的に仕方ないんですが、それにしても…

こちらには子供用水着とレディススポーツウェア。

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いやこれも…う~んwww

それもそうですが、右側の子供水着のデザインは
あの米帝(笑)のヒーロー、バッ〇マンでは?!
まぁ一般市民は知らない話ですが、いいのかな。

入り口からいきなりカウンターパンチを食らいましたが
プールエリアへ入ってみると、おおすごい。

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2階吹き抜けの屋内プールエリアには
ウォータースライダーやいろんなプールがあって賑わってます。

天井にはおサカナが泳ぎ、

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プール内には怪しい宇宙人(?)もw

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             顔がちょっとコワいぞ

波の出るプールもあります。

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海水プールは狭いのに人気が集中。

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どうしてそんなに…?

水をなめてみてるコもいましたよ。かわいいなぁ。

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ちゃんとしょっぱさを実感できたでしょうかw

プールサイドには軽食販売もある休憩コーナー。

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ただ、こう、全体を見てて気づいたのは
平日なのに子供も含めてけっこうな客入りなことと

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来場者の「おっさん・おばちゃん」率が意外と高いこと。

そのへんの疑問を案内係の職員さんに聞いてみましたが
現地では別に不思議でもないからか明確な回答は得られず。
ただどうやらこうした娯楽施設というものは
個人や家族で利用することももちろんあるんですが
職場や地域単位で福利厚生的に利用することが多いらしい。
いわば「慰安旅行」や「自治会行事」みたいな感じですね。
なので日本とは少し客層が異なるのではないかと。

そんなことを思いながら館内で写真撮ってましたが
あんまり熱心に撮るのも「別の目的」っぽいので(苦笑)、
そこそこで切り上げて2階のテラスへ。
ここからは野外遊泳場が見渡せます。

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いやマジでなかなかすごい。
総敷地面積12万5000㎡は半端ないです。
野外プールのオープンは夏期のみなので
このときはまだ閉められていました。
夏になるとここも利用者でいっぱいに。
最大で1日15,000人の利用があるそうです。


さて入り口の案内板にあったように
ここにはプール以外のサービス施設がいろいろ。
けっこう立派な理美容室もあります。
プールへ来て髪切る人なんているのかなと思いましたが

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ちゃんとお客さんがいましたよ。
むしろ理容エリアの男性客の方が多かった。
写真は撮ってませんが(笑)

こちら、店内に掲げられているヘアスタイル図。
これもあちこちで紹介されて有名になりましたね。

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ちょっと「昭和」な匂いがします。
「〇〇型」と、それぞれにスタイル名がついてるんですが
命名の意図があんまり見えないというか、
わかるようなわからないような独特の表現で。

例えば一番左の縦3人は、上から
「蝶スタイル」「翼スタイル」「半月スタイル」…
センター位置でいちばん目立ってるのは「波スタイル」。
ほかにも「ぶどう」「噴水」「かもめ」などなどありますが
そもそも違いが微妙すぎてわかんないです。
案内係の職員さんに「どのスタイルが好みですか?」と
聞かれましたが…う~ん。
皆さんはいかがでしょうか(笑)

せっかくなので男性用もどうぞ。

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こちらもかなり区別困難です。
命名も「波」「雲」「翼」…
男性版では「祝砲スタイル」がセンター(?)を飾りますw
しかしどれもネーミングセンスがすごい。
なお、右端のオジサンの髪形は「がちょうスタイル」だそうです。
「がちょう」って…ガアガア(苦笑)

あとほかにはビアホール。

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立ち飲み…いや、スタンドバースタイルですね。

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お客がいないのは
まぁさすがに平日の昼間だからでしょう。

卓球してる人はいましたけど。

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また、小じゃれたカフェもあって
なぜか案内員がずんずん中へ入っていきます。

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その後、当然のように着席し
メニューを差し出して「どれにしますか?」と。
何が何だかわからんままに
いちばんお安いエスプレッソを注文します。

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お値段は3元(約50円)。
ま、高いものではないんですが
きっちり案内員氏の分もおごらされました(苦笑)。
ここの立ち寄りもお約束のようですね。
味は良かったですよ。

窓際にはコーヒー豆を並べて作った
「커피(コピ=コーヒー)」の文字。

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手作りっぽい温かさが感じられます。

喫茶店だと思ってたら、お酒のカウンターもありました。

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夜はここでも呑む人がいるんでしょうね。

でもお店の看板は「サンライズコーヒー」。

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なんだかどこかで見たようなエンブレムではありますが。
最近は英語も堂々と使われるようになったんですねー。
ちなみに、下の朝鮮語は「サンライズ」じゃなくて
「日の出」という意味の固有語「ヘマジ」にされています。
「日の出コーヒー」。急に昔っぽくなりますねww

あまり時間がないので全館は見て回れず
このへんで出発となりました。
じゃあコーヒーなんか飲まなきゃいいのに…いやいや。

駐車場広場の横には
話題の「人工衛星ロケット」の顔出し看板が!

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紋繍遊泳場、なかなか楽しめました。

ワタシのここでの紹介は以上ですが
このほかにもピョンヤン市内にはたくさんの
おもしろそうな観光スポットや
意思にかかわらず連れてかれる(笑)名所などがあります。
気になる方はぜひ現地へ行ってみて
ご自分で体感してみてください。

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