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あとがきにかえて。

ここまでずるずるダラダラと
北朝鮮へ行ってきたときの記録を綴ってきました。
まだ細かいネタはいろいろあるんですが
なんかこううまくまとまらなくてキリがないので
ここらでいったん区切りをつけましょうということで
まとめっぽい記事を上げることにします。
…今回はたぶんあんまりおもしろくないです(苦笑)。


そもそも世界にあまたある国々の中から
こんなふうにわざわざ北朝鮮を取り上げてる時点で
「なんだこいつ」ってな感じかもしれませんよね。

たしかにいま「北朝鮮」で伝えられる情報と言えば
「ヤバい」「コワイ」「とんでもない」ような内容ばかりです。
でも、日々そんなことばかりが伝えられる国の中でも
たくさんの人が毎日の生活を営んでいます。

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そうした人たちは、どんなふうに暮らしているんだろう。

今回の旅行で、私がいちばん関心を持っていたのは
名所めぐりや買い物ではなく、そこでした。
私が現地へ行って見聞きし、感じたその部分を
ここの記事にできるだけ盛り込んでみたつもりです。

私自身はここで取り立てて北朝鮮を宣伝しようとか
擁護しようと思っているわけではありません。
ただやっぱり実際に行ってみるとそこには
私たちと同じようにふつうに暮らす人々の姿がありました。

満員のバスに揺られて通勤するダルそうな顔。

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送迎する保護者でにぎわう保育園。

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橋の上から釣りの様子を眺めるヒマな人(笑)

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どこの国でもふつうに見られる光景が
ここにもあたりまえにあるんですよね。
ガチガチの統制社会や恐怖政治と言われる北朝鮮にだって
平然とルール違反(?)する困ったさんもいれば

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警察に捕まって叱られるドライバーもいます。

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なんだか得体の知れない国のようでも
それを下で支えている愛すべき庶民がいます。


もちろん、政治的に見れば北朝鮮という国家は
他国の意見を受け付けずに核開発をしつこく続けたり
人権を充分に尊重していないという憂慮に答えなかったり
国際ルールを無視した密輸貿易の疑いを持たれたり
また、日本に対しては
拉致被害者に対する調査や保護に真摯に対応しないなど
さまざまな問題が多く指摘されているのは事実で
世界から信用されるには充分でないという主張ももっともです。

でもしかし、
国家の政治や姿勢について言うならば
例えば中国だって核弾頭を手放そうとはしません。
軍備も毎年どんどん増強して今では軍事費世界第2位。
今年度は約20兆円と日本のおよそ4倍もの巨費を投じて
周辺諸国へあからさまな圧力をかけ続けています。

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                          ⓒ中央電視台
香港には口出し、台湾には威嚇、
尖閣諸島周辺で毎日のように公船をうろうろさせ
チベット族やウイグル族などの少数民族に対しては
弾圧まがいに「中国化」の施策を強要しています。
また、知らない人も多いようですが
ここ数年で日本人も10人以上が現地で突然逮捕され
詳しい罪状も不明なまま収容所に拘留されたり
非公開裁判にかけられたりしています。
さらに個人の監視や抑圧、ネットによる情報収集や統制など
実は北朝鮮よりひどいんじゃないかとさえ思えることも。

なのに中国に対してはそんな目であまり見ませんよね。

国交があるから、あるいは経済的な関係が深いから、
いろんな理由があるでしょう。
でも市民レベルでの交流や親善が長く培われていることも
その大きな土台となっているように思います。
「政治的にはいろいろあるけど…」という感覚ですよね。
お互いが相手のことをよく知るのは理解への第一歩です。

例えばご近所でも、あるいは学校や職場でも
顔は知ってるけど挨拶や会話をしない人に対しては
勝手な思い込みの感情を持ってしまいませんか?

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そしてそれって案外マイナスなイメージに傾きやすい。
「なんか愛想がなくて気難しそうな人」とか
「カッコつけてる感じでちょっと嫌な奴」とか。
でも何かのきっかけで話してみると急に仲良くなったり。

国と国との関係も、根本は同じ事だと思うんですよ。
国だってつまりは一人ひとりの人の集まりなんだから。
なのでやっぱり
まずは個人レベルででも相手に関心を持つこと、
そして少しずつでも
お互いを知ることが大切なんではないでしょうか。
知らないことには違いも見えないし、
違いが見えないとその隙間を埋めることもできません。

確かに埋めようのない溝に気付く可能性もありますが
もしかしたらいろんな共通項だってあるかもしれない。
先入観で拒否してしまって目も合わせない、っていうのは
お互いにとって不幸でもったいないことだと思います。

もともと国が違うんだから文化も考え方も違います。
特に北朝鮮は独自の歴史教育で日本を教えるので
向こうにも特別な先入観があるのは否めません。
でも、だからといってこれからもずっと背中を向けあい
日本では「北朝鮮は怖い国」
北朝鮮では「日本は悪い国」
と一方的に思い込みを募らせていては何も変わりません。
相手の素顔を知ることでお互いに一人でも多く
「この人だったら…」と信じられる個人を見つけられれば
それはいつかきっと国どうしの考え方も変えると思います。

きょうも北朝鮮ではいつものように
子供たちが遊んだり

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学んだりして

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しんどいことも多いだろうけど
元気に暮らしていることでしょう。

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おとなたちもまたそれぞれ頑張りながら

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新しい一歩を踏み出したり

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時にはもの思いにふけったり

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あるいはご近所付き合いなどもこなしつつ

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おそらく私たちと同じように
笑って、怒って、泣いて、グチ言って
日々を紡いでいるはず。

一方で最近の国連からの発表によると北朝鮮では
「国民の4割が衛生的な水や食糧を充分に得られていない」
「子供たちの5人に1人が栄養不足」なのだそうです。
ただこの調査がどういった方法で行われたのかはわかりませんし、
そういう日本でも果たして何割のオトナや子供が
高品質な食糧で充分な栄養を得ているかは疑問ですが。

しかし少なくともこれは大都市ピョンヤン中心部の様子が
決してそのまま今の北朝鮮の姿を正確に映してはいない、
そういう事実を示しているんだとも言えます。
そこをほんの数日観光で回った程度の私が見たものだけで
北朝鮮の現状を語れる根拠になるはずもありません。
「いいところだけ見せられたんだろ」というご意見もごもっとも。

でもそもそも旅行者相手に見せるものが
「いいところ」ばかりなのはふつう当たり前でしょう。

外国のお友達が初めて日本へ遊びに来る時、あなたは
シャッター通りのようになってしまった商店街や
空き家の増えた団地を案内するでしょうか?

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片付けのできていない自宅に招き入れ、
コンビニ弁当で夕食を済ませるでしょうか。

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これは極端な例ですが、やはり誰だって
興味を持って初めて自国に来てくれた人には
お勧めの場所を見せおいしいものを食べてもらおうと頑張るハズ。

ガイド付き完全パッケージ旅行しかありえない北朝鮮で
いいところだけ見て高いメシばかり食べさせられるのは
あちらとしては至極当然の「おもてなし」感覚なのでしょう。

でもそうした行程の中でも、現地へ実際に行くからこそ
ふとした拍子に素の表情や空気に触れる瞬間があります。
それこそが実体験のだいご味であり、価値だと思います。
だからこそ少しでも北朝鮮に関心がある皆さんには
そのイメージが肯定的であれ否定的であれ、
ぜひ自分の眼で見、肌で直接感じてもらいたいのです。
ただ現状はコロナ禍で旅行そのものが難しいので
あくまでも一般論として、になってしまいますが。


ここで記事を作成する際には、
あえてそうした私の実体験による個人的な感想を
できるだけ率直にわかりやすく伝えるよう努めました。
写真も可能な限りそれをイメージしやすいものを選びました。
でも結局は私が一人で写真を選び、文章を考え
最終的に誰のチェックも経ず作ったもので
私の考え方というフィルターが通されているのも事実。
この内容をどう受け止めるかは皆さん次第です。

しかし同じように、
日々ネットや報道で伝えられる情報も
当然に発信する側による取捨選択を経ています。
限られた時間と資源で100%伝えることは物理的に不可能。
だから決してそれが「すべて」なのではありません。

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例えばもし、
日本のことを何も知らない人へこの国を説明するときに
その背景には触れず悪意に一部分だけを切り取って

「コスプレをした人が街なかを歩いている」

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                   ⓒ「あに〇運営委員会」さま

「子供の7人に1人が貧困」

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「小学生が警報ブザーを持って通学する」

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「通勤電車では女性を別の車両に隔離する」

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                     ⓒ東急電鉄さま

「毎年100人以上の先生が生徒にわいせつ行為をする」

わいせつ


「首都で毎年数千人が誰にも知られずに死ぬ」…

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こんな情報ばかりを並べて出したとしたら
いったいどんな国に見えるでしょうか。
日本だって「ヘンな国、怖い国」だと思われてしまうかも。
でもこれらの情報も決して「嘘」ではありません。
情報を選んで伝えるとイメージは容易に作ることができるんです。

たとえコロナ禍が収まったとしても、
北朝鮮への渡航自粛勧告が出ている今の日本で
ぜひ現地へ!などということは言えないのかもしれません。
でも、他人から伝え聞いた情報…そこにはこの記事も含まれますが、
それだけで判断して決めつけちゃうのではなく
やはり自身の五感で直接体感していただけたらなと思います。


どこの国でも、直接現地へ行くことで知るリアルは
他のどんな情報よりも大きな力を持っています。
現地で人々の素顔を垣間見たとき、

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思いがけず屈託のない笑顔に出会ったとき、

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きっと何か感じ取るものがあるでしょう。
判断をするのはそのあとでもいいような気がします。


これまで記してきた、私の見たもの聞いたことは
北朝鮮のごくごく限られた一部にしか過ぎません。
でも、まぎれもない北朝鮮の1ピースには違いないでしょう。
このくだらない情報が、くだらないからこそ新たな関心を呼び
良きにつけ悪しきにつけまた別の角度から
北朝鮮を、ひいては他の多くの国々を見ていただく
新たな視点のきっかけになれば幸いです。

「ぶらり北朝鮮」、
ひとまずこれにて終了です。ありがとうございました。

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※今回は文章ばかりがやたら長くなってしまったので
フリー素材の写真やイラストも多用しちゃいました…
特記なきもの以外は
写真素材:ぱくたそ
イラスト素材:いらすとや
からお借りしています。

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