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ロールandロール

「こんな所に居られるか!」
 そう叫んで『捻くれ』は一人で自室に戻って行った。
 素早いテンプレフラグだ、気持ちは分かるが急ぎ過ぎだな。

「ねぇ、おじさま。今晩は私と…どう?」
 私の太ももに『ボイン』が座って囁く。私は即座に鞄に手を突っ込み、札束を掴み出すと『ボイン』の頬や乳を叩いた。
「ぶっひゃひゃひゃ、お前が欲しいのはこれだろう。この尻軽女めが」
 我ながら見事な汚い金持ちムーブ。これは高ポイントだろう。
 一人きりで積めるフラグは多くない。なるべく二人以上でいるのが最善だ。
「どうれ、部屋で可愛がってやるわ」
 後はSEXでもすれば完璧。序盤から高ポイント確定だ。

 最初に言っておくと、俺は高級スーツを着た下品な金持ちオヤジでは無いし、目の前の金髪爆乳なビッチも尻軽では無い。
 俺達はデスゲームの参加者だ。

 絶海の孤島で殺人鬼に追い回される。そんな設定で生き残れば日本円で五億。
 しかし、このゲームの参加者全員が、目的の為にその程度の金では不足だし、命も惜しくは無い。
 そこで、もう一つルールがある。
 この設定で愚かな言動を取る人物、つまり死亡フラグを積むと獲得出来る金額が桁違いに増えていく。
 だが、金が支払われるのは殺人鬼に殺された時のみだ。
 当然、金額が増えると殺され方も残酷で苦しい物になる。
 要するに、これを見ている金持ち連中は、俺達が苦痛の未来に震えながら、わざと愚かな行動を取り続けるのを嗤って見ていると言う趣向だろう。

 事前に準備した俺の役割『汚金持ち』は上々だ。なんせ存在が死亡フラグ、生きてるだけで金額が加算されていく。
『ボイン』にも驚いた。乳を揉まれてるだけで震えている。顔合わせの時は黒髪の根暗な女だったのに、妹さんのために髪まで染めて。勇気があるし健気だ。

 部屋に入ると開始時に支給されたスマホが震えた。
《殺人鬼役が死亡しました。あなたが次の殺人鬼役です》
「は?」
 窓から斧と仮面が投げ入れられた。

【ロール『殺人鬼』に続く】

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