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写真: 九頭龍湖 

『病気は治すもの』

そう考えている医者の多いこと。だからたまに、治療しなくていい、という選択をする患者に驚いて、ぶつくさ文句を言ったりもする。

学生の時から疑問だった。治療したくない人に治療を勧める必要ないだろ、と。癌になって、糖尿病になって、脳梗塞になって、生きたいように生きて、さっさと死にたい人だって、たくさんいるだろう、と。

『患者さんはまず、選択肢が分からないから、ベストな答えに導いてあげるのもプロとしての仕事だよ』

この考えには納得したものだ。

けれど、だいたいの医者のオススメは治療だ。大学では治療について学ぶし、治療について研究する。病院に来る患者はだいたい治療されたがっている。治療が当たり前になっている。

治療したくない人に、治療を勧める必要ないだろ。その疑問に、今日は新しい考え方を手に入れた。

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これを診療の現場で活かすんだ、と。治療したくない患者に対して、治療を押し付けるでもなく、あっさり引き下がるでもなく、『なぜ?』の姿勢を持つこと。5回なぜ?を繰り返すこと。

それすなわち、患者に興味を持つこと。

人に興味を持つことは、私にとってけっこう難しい。早とちりで、勝手に想像して納得するからだ。そして驚くべきことに、その想像はだいたい見当違いなのだ!


今日は在宅医療の研修だった。もしかすると、4月から在宅医として働くかもしれない。(かもしれない、と言ってお茶を濁しているだけで、在宅医として働くのが怖いだけなのだ。)だから、実際の在宅の現場を見ることは私にとって重要な研修となる。鼻息を荒くして現場へ向かった。

その研修先のクリニックの理事長と一緒にお宅を回りながら、在宅医に求められるものを聞き出していく。

そこで教えていただいたのが、

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だった。専門研修をする前に在宅へ飛び込んで大丈夫だろうか、という質問に対する答え。在宅医に求められるのは、患者の話を聞くこと、一緒に解決方法を考えること、5whysを考えられること、なのだ。これは誰にでもできることじゃなんだ。

ただし、低きに流れるな、とも。

高度な医療を求められないからといって、選択肢にないのはお門違い。常に頭は世界のスタンダードにアップデートしておく。その中で求められる医療を提供する。それが在宅医としての矜持である。

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