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讃岐の醤油でうどんをたぐる

ひさしぶりに麺通団。

「うどん大使東京麺通団」というのが正式名称。今では東京にも讃岐うどんのお店は多い。
讃岐うどんばかりか博多のうどんや武蔵野うどん。銀座の稲庭うどんのお店は今やインバウンドさんの聖地のようになっちゃってるし、セルフサービスのうどん屋さんは丸亀製麺以降珍しいものではなくなっちゃった。

でもこの店ができたときには讃岐風のセルフうどんっていうのは東京では珍しくってネ。
トタン板を貼り付けた外壁。中に入ると麺の打ち場に茹で場があって、そこから一直線に民家の軒下みたいな造作。軒下には天ぷらが並ぶカウンターっていうのがドラマティックで、うどんのテーマパークのように見えたものです。
今でこそラーメン通りとも呼ばれて若い人たちが集まるこの界隈も、当時は新宿の町外れ。田舎感が際立っていて好きだった。
韓国にこういうお店を作りたいっていう人がいてお手伝いしたことがあるけど、硬いうどんは口に合わないと結局、うまくいかなかった。博多うどんの店をつくればよかったのかしら…、丸亀製麺も全店撤退しちゃったみたい。

天ぷら以外にもおでんや惣菜が並んでる。どれも讃岐風の味付けで、中でも茄子の煮物がおいしい。細かく切り目をいれて甘めの醤油味でしっかり煮込まれていて箸で持ち上げると崩れてしまいそうな仕上がり。

とり天、ゲソ天、ゆで卵天とどれも魅力的なんだけどやはりここでは竹輪の磯辺揚げ。太くて長くて衣厚めで青海苔たっぷり。食べ応えがあるのがうれしい。
レンコンの天ぷらが揚げたてで取ろうとトングを伸ばしたら、フライヤーから直接どうぞとお皿の上にのっけてくれた。なんてうれしい…、オゴチソウ。

かけ出汁が出てくる蛇口があるのがここのうれしいところ。カップに一杯注いでそれでひと揃え。

うどんは醤油うどんにしました。

大根おろしと生醤油だけで食べる食べ方。
父が好きな食べ方だった。
讃岐の実家に帰るといつも製麺所から届いたうどんがせいろにズラッと並んで用意されてて、横に大根。
旅支度もとかず大根をおろしてうどんをお湯に潜らせ丼に入れ、醤油をかけて立ったままでふた玉食べる。
讃岐うどんは旨いのぉ…、って言うのが里帰りの挨拶だった。
なつかしい。

讃岐醤油は出汁醤油。うま味が強くてうどんの持ち味を邪魔しない。ネギと生姜をのっけてまぜて、ズルンとすすってそのなめらかな喉越したのしむ。フライヤーから直接やってきた蓮の天ぷらは熱々、ホクホク、甘くてゴツゴツ奥歯を叩く。

うどんのかけ出汁に磯辺揚げを突っ込んでしばらく休ませ食べるのが好き。分厚い衣が出汁を吸い込みぽってりしてくる。舌にヌルンとなめらかで、ムチュンと歯切れる竹輪と一緒にとろけていくのがたまらない。
イリコの香りがふわっと漂い、酸味、エグ味が強めの出汁に天ぷら油の甘みがのっかり濃厚味になっていくのもオキニイリ。

煮物の茄子を一本食べて、残りひとつを煮汁と一緒にうどんの上にのっけて食べる。醤油の味に甘味が混じり、ぶっかけうどんのタレのように変わっていくのがおもしろく、一味をパラリとほどこしズルン。

満ちました。


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