来るたび前よりおいしく感じるんだね…。
デパ地下散策で新宿に出る。街を歩くとほんのちょっとだけ人出が減ったような気がする。
けれど百貨店の地下に入るといつもの平日くらいの人出は十分あって、みんなニコニコ、空気が明るい。
買い物すませて家に帰る前に早めの夕食をとっておこうと「王ろじ」に寄る。
大正時代からずっと路地の王様で居続けようと、この一軒を守ってる店。
「昔ながらのあたらしい味」というここのお店のキャッチフレーズはおそらく飲食店における究極のテーマなんだろうと来るたび思う。とんかつの専門店で、そのとんかつが今の時代にもあたらしくって食べ方の提案もここ独特。昔ながらのあたらしい味をたのしみにくる。
ガラスの壁で仕切られてはいるけれど中の様子を間近に感じることができるカウンター席に座る。ご主人、奥さんとも昔から変わらぬ姿で元気に仕事をしている様子ににっこりします。
とん丼、とん汁に王ろじ漬けを追加して今日の夕食のひと揃え。薄切りの大根とピーマン、ニンジンを麹で漬け込んだ西洋野菜の香りがどこかエキゾチックなオキニイリ。パリパリシャクシャク食べながらメインを待ちます。
そう言えばここではほとんどこの組み合わせ。長い間、カツサンドを食べてないなぁ…、ここのカツサンドも変わったスタイル。パンで千切りキャベツとカツを挟んで蒸し上げる、まるで肉まんみたいな食べ心地の唯一無二で、二人できたら一つ頼んで分けたりしてた。なんだかスゴくなつかしい。
とん丼到着。
下皿と丼本体がくっついた独特の器を使っているのが特徴。
だから最初に本体持ち上げお皿も一緒についてくるのを確かめ、これも昔ながらのあたらしさってニッコリします。
メニューにとん丼(カツカレー)とあるけれど、いわゆるカツカレーじゃなくてカレーソースがかかったカツライス。
酸味が鮮やかでスパイシーだけそんなに辛くはないソース。
それをご飯の上にかけカツをのっけてとんかつソースをかけて味わう。
芥子をたっぷりのっけて辛味を追加して、スプーンでざっくりカツを切り分けご飯と一緒に味わう趣向。
筋をしっかり切った豚肉を筒状にして揚げている。細かなパン粉をぎっしりまとわせ衣はザクザク。噛むと壊れて口に散らかる。肉はホロホロやわらかく、なのに肉汁をたっぷり蓄え口の中をみずみずしくする面白さ。
とんかつと言えばひたすら肉のやわらかさやみずみずしさ、肉汁溢れる状態を追求する店がほとんどの中、壊れ具合や散らかり感、ソースと混じっておいしくなっていく状態にこだわりを持つお店はおそらくここだけじゃないかなぁ…、って思う。そこが好き。
とん汁は注文ごとに手鍋でベーコン、玉ねぎ、しいたけを炒めてそこにスープをはって豆腐に味噌で仕上げるこれもまた独特。和風でもなく洋風でもない不思議なおいしさ。とん丼のお供にピッタリするのもステキ。
不思議なことにここ数年、やってきて来るたび前よりおいしく感じる。ボクの年齢にあってきたのかもしれないって思ったりもした。オモシロイ。