見出し画像

よく焼けたトーストではじまる銀座の朝

トーストはよく焼きじゃないとおいしくない派。
家で焼くときはバルミューダのトースターで5分以上焼かないと、よく焼けたなぁ…、って感じない。
小麦の生地は焼かれることで風味がよくなる。
よく焼かれることで生地が含んだ水分がほどよく抜けて、食感かろやかになっていく。
最近流行りのもっちりとした食感や軽い口溶けはトーストブレッドには無用の長物と信じるたちで、だからトーストはよく焼き派。

だからお店でも「よく焼いてくださいね」という。
けれどそれがボクが考えるよく焼けている状態である確率は50%以下。だから最近では「焦げてもいいですからよく焼いてください」ということにしてる。
そして今朝。
すばらしくよく焼けたトーストで朝をむかえた。
場所は銀座のトリコロール。

銀座らしい瀟洒なムードの喫茶店。
働いているのは女性だけ。しかも糊のきいたワイシャツにネクタイ、黒いベストをパリッと着こなす凛々しい姿がなんともステキ。
高い天井、座り心地のよい椅子といい店なんだけど、ときおり常連気取りの人たちで店のムードがギスギスしちゃうことがある。
特に近所の百貨店のお得意様系イベントがあるときなんておじさん1人じゃ肩身が狭い。
「LOVE」がへんてこりんな形で暴走すると厄介なことになっちゃうんだよなぁ…、ってしみじみ思ったりする。今日は静かでホッとする。

コーヒーをもらって朝食用のセットをたのむ。
トーストに野菜サラダ、バターにジャムという最小限の組み合わせ。
トーストはよく焼いてください…、ってお願いをしてしばしゆったり料理を待った。厨房の方からパンが焼ける匂いがしてきて、すると厨房からそろそろトーストがあがります…、と。
それを合図にコーヒーが出来ていくのにまたニッコリ。

厨房から焼けたばかりのトーストを小さなお皿にのせてスタッフが飛び出してくる。
「このくらいの焼き加減でよろしいですか?」と。
こんがりと焼けたその焼き色がうつくしく、香りも強い。
完璧です!と答えた言葉に、小さく会釈。
厨房にとって返してそれをきれいに盛り付けて、お待たせしましたとテーブルにトンっと置いて帰ってく。
入れ替わりにおとしたばかりのコーヒーを入れた真鍮製のポットを持ったスタッフがきて、カップに注いでひと揃え。
見事なチームワークとすべての仕事のうやうやしいことにウットリしながら、さぁ、朝ご飯。

バジルの香りがさわやかなドレッシングをまとったサラダ。スイスチャードやマスタードグリーンの個性的なる香りが朝の目をさます。
焼けておいしくなる山高パン。二片に切られた一方はそのままパンの風味を味わう。コーヒーにちょっと浸すとコーヒーの苦みや香りが移ってパンの風味が際立つ。

もう一方はバターナイフで切り目を入れてトーストの中にバターを押し込む。パンの温度でバターがたちまちとけて染み出しどこを食べてもバターの風味が濃厚、強烈。イチゴジャムをのっけて食べるとまるでお菓子を食べてるようで、朝の気持ちが盛り上がる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?