見出し画像

黄色いカレーを食べに行こうよ!

10年ほど前。何もすることがない状態がしばらく続いた。
経営破綻した会社の再建に旧経営陣の関与はご法度と、裁判所からの命令で仕事もできず、関係のあった人との連絡も制限されて毎日ぼんやりする他なかった。
そんな難儀な状況をタナカくんが気にかけてくれて、例えばある日「黄色いカレーを食べに行こうよ」って誘ってくれた。
当時住んでた市ヶ谷から中央線の各駅で秋葉原。日比谷線に乗り換え入谷で降りて北に向かって5分ほど、歌を歌いながら歩いたところに「東嶋屋」というお店があった。

画像1

着いたときには営業前で、お店の前の歩道橋の階段に並んで座って待ちました。今日も来たら開店前。暖簾がかからぬお店の写真を歩道橋に座ってパシャリ。

画像2

黄色いカレーはすっかり名物になったようで、注文してから作るから時間がかかることもある。しかも数量限定と張り紙出てた。蕎麦の看板よりも大きく天ぷらと書かれた看板。

画像3

店に入るとまずカウンターがあるのだけれど中には大きな天ぷら鍋が置かれてて、そこだけ見れば天ぷら屋さんみたいな風情。なつかしい。

画像4

さて黄色いカレー。
深いお皿の真ん中にこんもり盛り付けられたご飯をすっかり覆うようにたっぷり。
軽くとろみがついてはいるけどサラサラしていてスープのごとし。
小さい頃に食堂で食べたカレーはこんな色をしていた。

画像5

スプーンがお冷のグラスにささってやってくるのも昭和な感じ。
脂で炒めたカレー粉を出汁で伸ばしたものが基本になっているのでしょう…、最初の印象は塩が強めの出汁の味。カレーの香りはあるけれど辛さはほどほどで、工夫に満ちておいしすぎるカレーに慣れた舌にはひと味足りなく感じる。
なのにおいしくやさしくて、またひとくち、またひとすくいと次々口に運んで食べなきゃ気がすまなくなる不思議なおいしさ。はじめて食べたあのときも、無言で黙々と食べたものです。なつかしい。

画像6

食べ続けると辛さが舌の奥から湧き出てくるようで、体全体で汗をかく。
ウスターソースが添えられていて、かけると酸味や甘味、風味が整いひと味足りぬカレーの味が整いはじめる。和風カレーにはウスターソースが合うもんなぁ…、と思いながら食べるもそのうち、そのおいしさが邪魔になり結局なにも使わずオリジナルの味をひたすら食べ続けることになるのも不思議。
カレーの温度が徐々に下がってカレーの上にちりめん模様が浮き上がる。

画像7

たっぷり脂を含んで仕上がった証拠で、なのにさっぱりした味わいに感心しながらハフリハフハフ。
具材は厚めに切った豚バラ肉とタマネギ程度で主役はあくまでカレーそのもの。食べてるうちにご飯や具材が姿を消してカレーのおじやを食べてるような感じになってく。

画像8

これこそ「カレーは飲み物」だよな…、ってしみじみ思う。オゴチソウ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?