ステーキでなくローストビーフでもなく、ル・モンドのステーキ
新宿で美味しいステーキのお店といえば、まず挙がるのが「ルモンド」という店。
新宿西口の電気街の中にあり、とても小さい。
カウンターだけで座ると厨房が目の前にある臨場感に溢れるムードがまたよくて、いつも混んでる。今日もお店の中はギッシリ満席。ちょっと待ちます。
近隣で働く背広族のおじさんたちがメインだけれど、女性がひとりでガンガン肉を頬張っている姿がなんとも凛々しくて、お腹がどんどん空いてくる。
メニューはシンプル。基本、肉の種類は3種類。リブロースにサーロイン、それからヒレ。それぞれ150g、150g、110gというほどよい分量。それらを好みの組み合わせで2枚選んで「Wステーキ」なんて注文もできて、案外人気。4人に一人くらいの割合で注文が入ってるみたい。
待ってる間に注文をとる。だからボクの順番が来て席についたらできたてのグリーンサラダがもう待っていた。
座るとすかさずコーンポタージュ。熱々のうちにまずそれを飲む。甘くて、けれど甘すぎずポッテリとしたクラシックな味。お腹がじんわりあったまり、食欲わかせるオキニイリ。
そしてサラダをパリパリ食べる。レタスだけ。レモンの絞り汁と植物油を軽くドレスしたシンプルな仕上がりでレタスの甘みや香りがストレートに口の中にやってくる。ステーキをお出迎えする口の準備がしっかり整う。
ヒレとリブロースでダブルステーキにした。
2種類のステーキがひとつお皿にのせられて、ガルニが一人前分節約されてその分、150円を値引きしてくれる。
合理的なる価格体系。
ご飯はなしで健康的な昼とする。
分厚いヒレにはベーコンをぐるりと巻きつけ、はずれぬように串をさす。
上等な洋食屋さんのヒレステーキはみんなこういうスタイル。見るたび松山のイタリヤ軒ってお店のことを思い出す。もうあの店もないんだなぁ…、と思うと一層、このステーキが愛おしい。
リブロースは若干薄めの大判で、どちらのこんがり。キレイに焼け目が入って仕上がる。メンドテールバターがたっぷり。ハーブの香りとアンチョビかなぁ…、ピリッと塩が効いていて深い旨味が肉の持ち味を引き立てる。
サラサラとしたタレがかかって仕上がっている。ここのタレと言えばいいのか、ソースというべきなのか醤油とグレイビーソースの間みたいな風味のサラサラとした調味料。どうやったらこの味になるんだろう…、と何度来ても不思議に思う不思議なおいしさ。
切るとレアです。きれいなロゼ色。けれど生かというとしっかり熱が入っている。強火で焼いて温かいところで休ませ芯まで熱を入れて仕上げたのでしょう。ネットリ、歯茎に絡みつくような肉感的なる食感で、肉の旨味が凝縮されたようなおいしさ。
顎にガツンとくるようなステーキじゃない。ローストビーフのようであってローストビーフでもなく、これはあくまで「ルモンド流のステーキ」なんだろうと思う。サイドのフレンチフライも茹でた豆、パセリまでもがこのステーキのためにあるような味わいで、ニッコリしました。満たされる。