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月命日に、中野富士見町行きの地下鉄に乗って…

四谷三丁目駅のホームに立って、なんだかちょっとさみしいなぁ…、と思っていたら中野富士見町行きの電車がホームに滑り込む。
タナカくんが一番長く住んだ町。
会いにおいでと言われた気がして電車に飛び乗る。月命日の朝のコト。
ひとつ手前の中野新橋の駅で降り、「トリクロマティックコーヒー」でまず朝ごはん。

たまごトーストにアイスコーヒーをお願いしました。
お店の外を眺めるカウンターにつき、しばらく待ってまずアイスコーヒー。
プカプカ浮かぶ大きなぶっかき氷がなめらかで、軽い酸味の軽い味わい。

氷を舐めるようにアイスコーヒーで喉を潤しのんびり待ってメインが完成。朝の光に包み込まれたように輝くうつくしさ。

粗く潰したゆで卵をほんの少しのマヨネーズであえ、パンにたっぷりのせてこんがり焼き上げたもの。
粉末のディル、オレガノがパラリとちらかり香りもおいしい。

たまごペーストじゃなくて、あくまでゆで卵のマヨネーズあえなんですネ。ぽってりとした黄身のなめらかやプルプルとした白身の食感がそのまま残って混じり合う。

パンの耳はほどよく硬く、生地はふっかり。6枚切りくらいの厚さかなぁ…、ただたまごのマヨネーズあえが分厚くて圧倒的な存在感。主役はあくまで卵です。
口の中でパンも一緒にとろける感じをたのしみながら、じっくり見るとマヨネーズあえのところどころに小さな泡が溜まってる。脂が沸騰した跡でしょう…、焦げたところが香ばしい。

アイスコーヒーのグラスに小さな水滴びっしり。お散歩日和でございます故、ひと駅歩いて思い出の場所に向かいます。


中野新橋から中野富士見町の駅の間が10分ほど。昔と景色はあまり変わらず。中野富士見町の駅からタナカくんが住んでた部屋まで案外距離があるのにいつもびっくりするのネ。
昔は気持ちがはやっていたからあっという間に着いた記憶があってなおさら。住んでた部屋を見上げて手を合わせ、それから歩いて「四国屋」にくる。

中に入ると出汁のおいしい香りがしてくる。コの字のカウンターの中が厨房。周りにぐるりと15席ほど。テーブル数卓というお店。オキニイリは牛肉うどん。今日もそれ。

麺は茹でたて。茹で上がるのに時間がかかる。
サービスで漬物が供されるのだけど、それと一緒にお稲荷さんもたのんで食べる。このお稲荷さんが讃岐的でおいしいの。

お揚げが大きくしっとりしてる。
しっとりというよりびしゃびしゃと言ってもいいほど煮汁をたっぷり吸い込んでいて、詰めたばら寿司は酸味が強い。

ごぼう、ニンジン、しいたけ、れんこんを刻んでたっぷり。
しかもできたて。
ほんわかあったか。
お稲荷さんを半分ほども食べたところで牛肉うどんがやってくる。

口の広い大きな器にたっぷりと。上に牛肉、タケノコ、かまぼこ、ネギと具材もたっぷり、麺をすっかり覆ってる。
汁は色白、透き通っていて牛肉の脂とほんのすこしのアクが浮かんでそれがなんともおいしく見える。
まずは汁をズズっとすする。丁寧にひかれた出汁に肉の脂の甘みやコクが混じって味わい濃厚で、醤油はほとんど使わず塩で味が整ってるから、出汁の風味がひときわ活きる。

麺は飴色。キリッと角がたっていて、太いところがあったり細いところがあったり、そして軽くよじれてる。手打ちで手切りの麺ならではで、歯ごたえたのしく小麦の香りが立ち上がる。
最初はちょっと硬く感じる。奥歯をコツコツ叩く感じが特徴的で、それも徐々にやわらかくなる。

一味をパラリとちらしてズルリ。赤唐辛子の辛味が出汁の甘みやうま味をひきしめる。
お稲荷さんをひと口食べて、汁をゴクッと飲めば酢飯の酸味と汁が混じって甘さがひときわ強くなる。

「お稲荷さんが一個じゃ足りなくなっちゃうね」って言うのが口癖だったんだよなぁ…、いろいろしみじみなつかしい。
今日も汁まで全部飲み干す…、オキニイリ。


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