ビフカツカレーのカレーはソース。カツレツの味を邪魔しない。
タナカくんが逝ってから14回目の23日。今日は伊勢丹の中を散歩する。
館の中に入ると年中気温は春か秋。外は雨でも中は晴れ。上下移動はエスカレーターかエレベーターでススイと行けて、なによりそれほど大きくはない。
隅から隅まで歩いても疲れない程度の空間にぎっしりゴキゲンが詰め込まれている。住む場所をどこか一ヶ所自由に選べるとすれば文句なくこの伊勢丹の新宿店…、って二人でいつも話していたほどオキニイリ。
のんびり歩いておしゃべりをしてお腹がすいたら食堂街。今日は洋食の西櫻亭にやってくる。
洋食弁当でも食べようかなぁ…、と思ってメニューをみたら「ビフカツカレー」って季節限定の料理があった。今日のスープに食後の飲み物までつくと言うのでそれを注文。
今日のスープはコーンポタージュ。とうもろこしの甘みとクリームのうま味とコクで味は整い、ぽってりとした喉越しにのどからお腹があったまる。
せっかくだからサラダもたのもう。ここのガーデンサラダはいろんな野菜を食べ比べしているようなたのしい料理。サイドにぴったりなハーフサイズをたのむ。
ハーフサイズでも量はたっぷり。量以上にロメインレタスにケールに水菜。皮をキレイに剥いて大きなきゅうりの擬態を装う生のナスにスクワッシュ。香り様々なハーブ野菜に土の香りがたくましいニンジン、ビーツ。軽く熱をくわえたカブやトマト。白インゲンにエディブルフラワーと一人暮らしで自炊してては絶対一度に食べることがない種類の野菜をもりもり食べる。
ゆるく作ったサウザンアイランドドレッシングがソースのようなふるまいで、もともとみずみずしい野菜を一層みずみずしくするのにウットリ。
そしてメインのビフカツカレー。
和牛のもも肉を使って揚げたビフカツ一枚。
ほどよく分厚く、その断面の色はロゼ色。芯の部分はレアにきれいに揚げられている。
パン粉は薄い。
なのに口の中にいれた途端にカサッと乾いた食感がかなりの存在感をもって崩れる。
脂控えめの肉でうま味、コクは若干足りぬように感じるけれどパン粉の力で十分おいしい。滲んででてくる肉汁も十分にして軽い酸味が後口見事にひきしめる。
焦げ目をつけて焼き上げられたサイドの野菜も多彩でおいしい。ブイヨンで炊いたカブにキャロットグラッセ。モロッコいんげん、白瓜、かぼちゃにさつまいも。万願寺とうがらしと色合いもよくて目にもおいしいオゴチソウ。
カレーはなめらか。ルーをつかわず仕上げたのでしょう…、とろみはほのかな最小限でトマトの酸味にココナツミルクの風味がちょっと南国風。カレーの香りはささやかながら、しっかりとした辛味でお腹が汗をかく。
ご飯にかければお米の粒のひとつひとつがカレーの力でパラパラになり舌の上を転がるような感じがたのしく、野菜にかければ野菜それぞれの持ち味をおいしくさせる。焼いた小さなトマトをカレーの上で潰すとプチュっと種が飛び出してトマトの香りでソースの風味が明るくなってく。オモシロイ。カツレツを邪魔せぬところも見事なり。
すべてをお腹に収めて〆にプリンをもらった。
かたすぎず、やわらかすぎずほどよく甘くほどよく苦い。ホイップクリームにミントの葉っぱと飾りもささやか、普通のプリン。でもこの普通なところがいいんだよね…、だってプリンてそういう存在なんだもんってタナカくんがニッコリするような今日の昼。
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