知る人ぞ汁しじみ汁
家の近所の天ぷら屋さん。ちょっとユニークなメニューのある店。
天春という名前でとてもクラシックなお店ではある。
カウンターの中に揚げ場。磨き上げられた銅製の天ぷら鍋が置かれた後ろに流しがあって、ネタの下ごしらえをしながら天ぷらが揚げられている。
ランチの天丼が手軽な値段でおいしくて、地元の人でいつもにぎわう人気の店です。
お年を考えると大柄で矍鑠としたご主人と、同じ体格、よく似た横顔のおそらく息子さんが一緒に料理を作ってる。
天ぷらを揚げるのはご主人。揚がった天ぷらをバッタにのせて奥の厨房に運んでそれを天丼に仕上げて提供するのが息子さん。仲良き様に思わずニッコリしてしまう。
ランチ天丼が1375円。漬物と吸い物がつく。それに770円追加すると吸い物を「知る人ぞ汁」に変更できる。
知る人ぞ汁!…、しじみ汁のことなんだけどメインの天丼の半分以上の値段の汁。安い店ならそれで十分天丼を食べることができる値段の汁というのにはじめてきたときはびっくりしました。
けれどこれがまさに知る人ぞ知るしじみ汁で、それを食べにわざわざやってくる人もいる。ボクもいつもしじみ汁になおりでたのむ。
まずテキパキと天丼到着。
天ぷらのたねはエビにアナゴにイカのかき揚げ。エビは薬指ほどの大きさの小ぶりのエビを2尾。一枚の天ぷらになるよう衣で並べてつないで仕上がっている。天丼にアナゴが入るか入らぬか…、ってかなり気持ちの違うもの。アナゴが入るとちょっと上等に感じるところがオモシロイ。
野菜のネタは入らない。
サイコロ大のイカを揚げたかき揚げも中身はイカだけ。つまり天丼の中に野菜はいらぬ…、という潔さがボクは好き。
タレは甘み控えめの醤油の風味がきっぱりとした味わいで、ふっかりとした衣にぴったり。硬めのご飯もボク好み。
そしておいかけしじみ汁。
その分量の圧倒的なことにくるたび惚れ惚れします。大ぶりのお椀にたっぷり。横からみると盛り上がり小山のごとし。
殻を入れるためのボウルが一緒にくるのだけれどこれだけしじみがたっぷりあると「身も食べてって」ってメッセージ。殻を持ち上げフルンぷるんと身を食べる。食べて終わった殻をボウルに投げ入れる。ペチンペチンと乾いた音が店のそこここから聞こえてくるのがオモシロイ。
タナカくんと二人でくるとずっとペチンペチンと音をたてつつおしゃべりしてた。一緒に生活していても、同じことを同時にすることってほとんどなくてだからカウンターに並んで座って、ひたすらしじみをしゃぶって食べる。同じリズムでペチンペチンを殻をボウルに入れながら、他愛もないおしゃべりをする時間って、とても特別でたのしかった。
黙々としじみを食べて汁を飲み、天丼食べてみるみるうちにボウルの中に貝塚誕生。これだけしじみを食べたら肝臓が丈夫になるよね…、今夜はビールが旨いはずって笑ってお腹をいっぱいにした。
今日の〆はパイナップル。甘くて酸っぱく香りがおいしい昼のデザート。気持ちも満ちた。オキニイリ。
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