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うどんのさまざま、やわいうどん

新宿御苑近くの新宿一丁目が、うどんのメッカになりつつある…、ような気がするほどに最近、うどん屋さんが次々できる。
うどんも扱う蕎麦屋ではなく、うどんしかない専門店。
しかもどこもが個性的というのがたのしい。
蕎麦もうどんも伝統的料理ではある。
けれど同時に作り手の創意工夫でいろんな特徴を出せる自由な料理でもある。
ただその自由度が蕎麦に比べてうどんの方がよりあるんじゃないかと思うのです。
例えば麺の太さや硬さ、形状、喉越し、なめらかさ。地域によっての違いも多彩で、汁や出汁も工夫をしやすい。それにそばに比べて腹持ちがよく、いろんな具材と相性もよい。一時期、「飲めるそば屋」が増えたけどコロナで飲み屋は苦労が増えた。そこで個性を武器にうどんのお店が増えていく。

例えば「餅うどん功刀屋(くぬぎや)」って店。

餅のような麺が特徴というお店。
餅のようなと言っても米粉をつかっているわけでなく、小麦粉を使って作った麺の食感が餅のようだ…、ということらしい。

たしかにすべすべ。切って仕上げたのではないのでしょう…、角がなくって表面なめらか。

餅のように伸びるわけでなくむっちりとした噛みごたえがあり噛んでも決して粘らない。むちむちしていて歯応えがよくコシはないのにハリがある。今まで食べたことがない食感の、でも形はうどんでだから「餅」って表現したのでありましょう。面白いったらありゃしない。

麺をこころおきなく味わってみようと思って一番シンプルなかけをたのんでみたのだけれど、具材はネギだけ。本当にかけ(笑)。

ところが汁のおいしいこと。いりこの香りが力強くて苦味、渋みが強いうま味を引きしめる。節系の酸味もとても鮮やかでゴクゴク、ひたすら味わい飲んでいたくなる。

餅うどんがこの汁をしっかり吸い込む。吸い込みながら口へとどんどんたぐり寄せ、口の中が出汁で潤う感じがステキ。一味をたっぷり加えてみても汁のうま味や風味が破綻してしまうこともなく、しばらくしたら思い出してまた食べたくなるに違いない…、って思ったりした。オキニイリ。

それからもう一軒、餅うどんの近くにできた「うどん萬田次郎」というお店。

福岡県のやわいうどんがテーマのうどんのお店というのが特徴で、メニューもごぼう天に肉と福岡うどんの定番メイン。

肉ごぼう天のあったかいのを注文しました。
注文を受けて麺体を練って整えローラーマシンに入れて伸ばしてシート状にする。

麺切り器がタンタンタタンと切る音がして麺となり、茹でてザブッと洗ってしめる。厨房の奥の方からごぼうの香りが漂ってきて、注文してから10分足らずでお待たせしましたと丼到着。

作品っぽい深い器に甘辛く煮つけた牛肉がたっぷりと。棒状に揚げたごぼう天が2本並んでやってくる。箸でうどんを持ち上げてみれば、角のたった細めのうどん。黄色みがかった透明感のある麺で、なるほどここは裏打ち系。

裏打ち系っていうのは「やわらかいのに歯応えもある」新しい福岡県のうどんのスタイルで、おしどり一味に黄金、激辛三昧と3種類の一味が並んでいるのは豊前うどんの「武膳」と同じ。個性的な形の器を好んで使うところも裏打ち系に共通で、博多うどんの本流とは違ったおいしさがあってたのしい。

しっかりやわい。喉ごしなめらかでむっちりしていてけれど軽いハリもある。汁を吸ってふくれることもないけれどこれはこれでおいしくてよい。なにより出汁がしっかりしてる。甘めで節の香りや酸味がくっきり。これまたゴクゴク飲めるおいしさ。汁に浸したごぼう天が崩れて混じってとろけていくのがまたおいしくて、ここもかなりのオキニイリ。
ひとつのエリアに同じ料理のお店が集まる。集まることで競合が起こるのでなく、こころおきなく個性を磨き発揮して「いい競争」が生まれることってステキだなぁ…、ってしみじみ思う。オモシロイ。


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