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せりとじそば

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変わる渋谷もあれば変わらぬ渋谷もある。
それらは商業ビルに入らぬ渋谷。商業ビルにおさまりきらない魅力がある店、そして人。
冷たい雨の降る一日でもあり、昼を蕎麦にすることにした。
「そば処福田屋」。
裏路地にある自前のビルの2階のお店。家賃を払わずにすむ環境だからできる正直な商売というのがあるんだなぁ…、とここに来るたびしみじみ思う。

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お店の人がお茶をそっとテーブルに置く。「せりとじそば」をたのみました。すると大きな氷をギッシリ詰めたグラスに水を注いだのを運んで、コトンとおいてくれる。ほどよい温度でしっかり煎じたお茶もおいしい。なによりこういう気づかいがおいしく、うれしく、ありがたい。
大きく、深く、だから蕎麦も汁もたっぷり入ってずっしり思い器が到着。食べやすいよう短く切ったせりの玉子とじで蓋したような器から、湯気が湧き立ちレンズが煙る。

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玉子とじの玉子の状態はお店によってそれぞれ違う。ここのはかなり硬めの仕上がり。玉子もざっくり溶いたもの。だから黄色いところがあれば白いところもあって食感まばら。しっとりでもあり、ふっくらでもあり、プルプルでもありそのどれもが出汁を吸い込んで口を潤す。

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蕎麦は硬めの仕上がりで、最初はホジっと芯がある。
熱々の汁の中でそこにゆっくり熱が入って、じんわりやわらかになっていく。出汁をたっぷり含んだそば。たぐると一緒に汁が口にとびこんでくる。旨味と風味、軽い酸味が後味最後にひきしめる。

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せりは渋くてシャキッと歯ざわり心地よい。刻んだきつねが混じってて、それがしっとり、出汁をたっぷり吸い込み口を潤していく。食べはじめると止まらぬおいしさ。あっという間に器の中は空っぽになる。体が芯からあったまる。


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