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瞬間移動装置的なるお店の機能…。

熊本を出て南に走る。
熊本、鹿児島、宮崎の県境が集まるエリアを行ったり来たり。
えびのの町で昼食をとる。「十兵衛」という店。

山間の盆地の店です。にもかかわらず中に入ると大きないけすがどーんっとあって、魚が泳いで待っている。
ずっと山の中を走ってきたのに、扉一つで海辺の店に飛んできた…、って感じがたのしい。
飲食店のドアは日常と非日常をつなぐどこでもドアのような機能を持ってる。
田舎と都会を、今と昔を、時に国境を軽々と超えお店が用意した特別な空間にいざなう瞬間転送装置のような役割を発揮できるお店はステキ。そんなステキににっこりします。

伊勢海老のおいしくなっていくシーズンです。
いけすの中から活きた元気な伊勢海老を取り出しそれをメインに仕立てた昼の膳。
伊勢海老の殻の中に刺身が並び、長い触覚をゆっくり動かす姿に少々、哀れを感じる。ごめんなさいね…、と思いつつ、おいしく食べてあげるからねと成仏願って一切れ、パクリ。

ブリンと歯ごたえたくましく、ネットリとろけて強い甘味でうっとりさせる。魚の刺身もブリブリ歯ごたえ力強くて、活け〆魚独特の食感楽しくニッコリします。

魚のあら炊き、天ぷら、もずく酢、茶碗蒸し。

料理さまざまなでご飯が足りなくなるようなにぎわい。中でもあら炊きがおいしく骨までチュブチュブしゃぶる。いけすの魚をさばいた後の、ついさっきまで生きてた魚のあらを味わうって、なんて贅沢なんだろう…、としみじみ思ってまたにっこり。

ついさっきまで動いてた頭は一旦、厨房に戻って汁になってめでたくもどってきます。頭の中に箸を突っ込み引っかき回して味噌までしゃぶる。なんて残酷なんだろうと思うもおいしいんだからしょうがない。


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