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体のすみずみに染み入る滋養…、ソルロンタン

体中にしみわたるような滋養が欲しいと起きぬけに思って赤坂。
赤坂の町は南北に細長い。町の北の端にある赤坂見附の駅からテクリテクリと歩いて、赤坂の町がそろそろ終わりをむかえるあたりに「一龍別館」がある。

24時間営業の古き良き赤坂的なるソルロンタンの専門店です。

朝は静かな知る人ぞ知る店だったんだけど、ひさしぶりに来たら朝からにぎやか。
年の頃、30半ばといった食べ歩き女子のグループが3組。
北京語をしゃべる観光客が1組と、テーブルたった5つしかないお店はテーブル1つ残していっぱい。
厨房の中に2人、ホールに2人。てんやわんやの大忙し。「ソルロンタンね」っていうとテキパキ食卓が整えられてく。おいしい匂いがお店の中を満たしてる。

まずご飯とスッカラ、冷たいコーン茶。キムチ、カクテキ、韓国海苔がやってくる。
続いて一回り小さなお皿に入ったおかずが並んでいきます。

チリメンジャコと赤唐辛子の甘辛炒め。
豆もやしのピリ辛ナムル。スープをたっぷり含ませ蒸した卵にニンニクの芽とおでんの煮物。
甘い白菜の煮物にゼンマイのナムル。
干し大根のキムチ、黒豆と8種類。
キムチ、カクテキは辛くて酸っぱく、モヤシのナムルはヒリヒリ辛い。
けれどそれ以外の料理はどれもやさしい味付けで素材の持ち味をしっかり感じることができるおごちそう。

さてソルロンタン。
雪濃湯って書いてソルロンタン。
雪のように白い濃厚スープ…、つまり snow white thick soup でございます。
運ばれてきたスープは名前の通り白くてしかも器の底が見えないほどの濃厚さ。

ネギがプカプカ。
スッカラ入れてすくい上げると肉と春雨がスープと一緒に持ち上がる。
よく煮込まれた牛頬肉。
一日ずっと動かし続けた口の周りの肉ですからして筋肉質で筋もたっぷり。だから硬くてけれどおいしい。
それをコトコトじっくり煮込み、筋までとろけるやわらかさ。
肉のうま味やゼラチン質がスープにとけこみ、それがスープを乳白色に仕上げてる。
粘り気があるわけじゃないのに喉がすべすべ潤ってくる。
牛肉の脂とコラーゲン分がスープの中に溶け出して半ば乳化したような状態になっているのでしょう…、喉越しなめらか。
牛頬肉はザクッと歯切れる。かなりじっくり煮込まれているに違いなく、なのに歯ごたえがあってとろけたりほぐれたりしていないのは牛頬肉が頑丈だから。筋の部分がムチュンと粘る。口の中で滋養が溢れるって感じにニッコリ。

トゥルンとなめらかな春雨にもスープの味がしっかりのって口を潤す。
塩を少々。途端に味がひきしまりうま味にくっきり輪郭がつく。震えるほどのオゴチソウ。
それにしてもいつも感心するのがここのカクテキ、それからキムチ。

どちらも甘さに甘えてないの。ビリッと辛くうま味しっかり、酸味がほどよくととのっている。

カクテキはゴリッと硬く、キムチはバリバリ葉っぱの繊維が壊れてく。朝の口がよろこぶ感じ。

ソルロンタンに胡椒をパラッ。スープに溶けた脂の甘みが引き立って香りも痛快。
ご飯を含んだ口にスープを流し込めば、ご飯の粒がすべすべしてくる。

スープをゴクゴク飲んでくと体が内側から修復されていくような感じさえする。たっぷりの量のスープもあっという間にお腹におさまる。ご満悦。


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