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ミロンガ・ヌオーバでウィンナ・コーヒーとアルゼンチンタンゴ


ウィンナ・コーヒー。
かつて上等な喫茶店の気取ったメニューの花形だった。
熱々のコーヒーの上に硬くたてたクリームを乗せる。
スプーンで混ぜず、クリームを壊さぬようにそっと飲む。するとクリームの間からコーヒーが口の中へと流れ込み、舌の上で混ざり合ってなめらかで濃厚なミルクコーヒーのようになる。
クリームの上にアラザンをちらしてキラキラさせたりする店もある。
クリームが上等であればコーヒーの風味、香りを邪魔せず、引き立てこの上もなく幸せな気持ちにさせてくれるゴチソウ。

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そういうウィンナ・コーヒーをひさしぶりに味わおう…、と神保町にやってくる。
時が止まったような路地にあるミロンガ・ヌオーバ。
いつもは入口近くの席に座ってカウンターでコーヒーが落とされるさまを見るのが好きで、ところが今日はそこが埋まってカウンターを背に座る。

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目の前にあるのは大きなスピーカー。
レコードが奏でるピアソラに体つつまれるような気分で、ウィンナ・コーヒーをしみじみと飲む。
甘くて苦くて、ときに酸っぱい。アルゼンチンタンゴもコーヒーも人生みたいだとちょっと気持ちがハードボイルド。ゆっくりしたら仕事に向かって移動する。


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