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大阪、大黒、かやくご飯で満たされる…。

かやくごはん。
炊き込みご飯の一種と言われる。
けれどいわゆる炊き込みご飯とはまるで違った特徴があり、炊き込みご飯の一種と言われるとボクはかなりの違和感を感じる。
炊き込みご飯は具があってこそ。
けれどかやくごはんはお米と出汁があってこそ。大好きなんだけどくやしいことに東京においしいかやくご飯のお店がなくて、食べたくなったら新幹線に乗らなきゃいけない。

新大阪の駅で降り、地下鉄御堂筋線にのってなんばでおりる。
「大黒」というお店のかやくごはんがおそらく日本で一番おいしいかやくご飯。ドアツードアで4時間弱。それも惜しくないと思うほどオキニイリ。

今日も雨がちらほら降る中、やってきました。

御堂筋をちょっと入ったところにあって、10歩あるけば朝から晩までにぎわう通りの喧騒が、嘘のようにここだけ静か。お店の中に入ると外のにぎわいなんてまるで無縁ののどかな風情。
先客2人。うちおひとりは大阪松竹座の舞台にたってる役者さん。東京から一ヶ月ほどの逗留で、ここのかやくご飯があるからさみしくござんせん…、と。所作たおやかに帰っていかれた。たしかにしみじみ、お腹のそこから元気がにじんで出てくるようなやさしいゴチソウ。

かやくご飯の小をもらって、玉子を落とした白味噌の汁。
汁に浮かんだ半熟卵を箸でさわるとプルンとはぜて、黄身がとろけて流れ出す。熱々の汁に触れてゆっくり固まっていく一幅の絵のごとき景色をズズッとすする。
力強い出汁と甘い味噌がまじって、お腹をふっくら、温める。
かやくご飯の上には海苔。ご飯の食感をじゃませぬように細かく揉んでパラリ、ちらかる。

ご飯の中には刻んだこんにゃく、にんじん、ごぼう。
どれも食感を感じさせぬほどに細かくて、ご飯があくまで主役のご飯。
具材が出しゃばれば出しゃばるほど贅沢と言われる炊き込みご飯とまるで違ったご飯の料理。ならば具材がなくてもいいか…、というと出汁をたっぷり吸い込み仕上がるご飯は重い。口の中で軽快に踊るためにはパートナーが必要となる。それが「かやく」という存在。

鯖の塩焼きをもらいます。脂の乗った鯖にたっぷり塩をほどこしこんがりと焼く。皮目パリパリ。カサッと口の中で崩れてジュワッと脂を吐き出し消える。脂をのこして焼けた肉もしっとり、香り豊かで旨い。

一口分をかやくご飯に乗せて食べるも、鯖の風味は壊れない。ただ出汁の香りが鯖の旨味をひきたてて、味に奥行き作ってくれる。そのまま食べてもおいしいのに、おかずと一緒に食べてもおいしい。その絶妙な味付けがここのかやくご飯のステキなところ。

茄子の丸煮に青唐辛子とじゃこの煮付け。どちらもしっかりとした味付けで、かやくご飯と同じく出汁がおいしい。やっぱりかやくご飯を大にすればよかったな…、と思うも後悔先に立たずでござります。


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