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生ならなんでもおいしい…、ってことじゃなく。

今、日本人は「生」って言葉に本当に夢中。
生チョコ。生ハム。生ビール。
生クリームたっぷりのケーキだとか、この前「生ドライフルーツ」なんてのに出会って、「ドライなのに生って一体?」ってびっくりしちゃった。

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生ならなんでもおいしいのか…、というと決してそんなことはないのだろうけど、今まで生でないのが当然だった食品が、「実は生もあるんです」とやってきてしまったときの驚きといえば確かに強烈。
例えば日本ではずっと乾麺が当たり前だったパッタイの生を扱う店がある。東京駅のマンゴツリーパッタイという店で、生の麺にスープや油を吸い込ませながら仕上げていく。

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麺は飴色。食べるとムチムチ、食感独特。見た目はそんなに分厚く見えない。なのにその独特のムチムチ感で、口の中では分厚く感じる。存在感があるのですネ。
米の麺でしかも生。けれどうるち米じゃないのでしょうネ…、餅のように粘ることなく歯切れ良いのが面白い。
食品は生の方がおいしいか…、というと乾かしたり熟成させたりすることで風合いや風味が変わるから、麺も生麺と乾麺は比較できないまるで別物。
「生だからおいしい」じゃなくて「生の特徴をいかした」料理を作ることができれば生にこだわる意味もある。

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例えば新宿紀伊国屋の地下。長い通路の両側に飲食店がズラリと並ぶおいしいフロアにあるINJINという店。
曲がりくねったモダンな造りのカウンターにオープンキッチンという今の形になったのは20年近く前だったかなぁ…、メニューはほとんど変わらずフライパンで焼いて仕上げる和風スパゲティーが中心で、ただ最近はナポリタン推しに変わった。

流行りに敏感になったのは日清製粉の系列会社の運営になったから。麺も生パスタになりました。ゆでたてが売り。
それまでは茹で置きにした乾麺を炒めて仕上げていたので、おいしさアップというのが売りでもあるのだけれど、生麺独特のムチムチねとねとした食感がボクはあんまり好きじゃない。

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生パスタを使っておいしい店もたくさんある。
そもそも生のパスタはパスタそのもののおいしさを味わうために使うもの。だからトマトソースとかチーズやクリームとほぼソースだけでシンプルに仕上げていくとそのおいしさが際立ってくる。
日本人好みの具材たっぷりのパスタにはあまり向かないように感じる。

JINJINで一番好きなレシピはアサリしめじという和風スパゲティー。
アサリとしめじ、玉ねぎを麺と一緒に柚子風味の醤油ダレでいためて仕上げた料理。シャキシャキ状態の玉ねぎの歯ざわりがよくて、でもその歯ざわりをたのしむのなら、やっぱり麺は乾麺だよなぁ…、ってしみじみ思う。もったいない。


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