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誕生日を寿ぐ寿司清の寿司

誕生日の友人と旨いものでも食べようと、新宿の伊勢丹会館にある「寿司清」にくる。
ほどよく上等で気軽なムードが好きな店。
カウンターの奥の一番端が定席。職人さんの仕事の様子を一望できて、しかも落ち着く。
反対側の端はもっと手元が間近にみえる。けれど奥の厨房の出入り口の横でもあって店のスタッフの出入りが頻繁。いつもは使わず空席にしているところに今日は若者がひとり座って寿司をじっくり味わっている。
どうもここの職人さんらしく、休みの日に先輩の仕事を見ながら食事をと来ているみたい。店が忙しくなってくるとソワソワしてくるのが見ていてわかる。彼の前で寿司を握るのに七面六臂の先輩が「ソワソワするのも勉強のうち」って、寿司を握ってさっと差し出す。

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お客様として自分の店の料理を食べるというのは、調理人として重要な経験。でも大抵の店では暇な時間にするのが普通。でも忙しいときの状態こそが店や働く人の実力が如実に現れるものだから、こういうコトっていいなと思った。

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いろいろ握ってもらったどれもおいしく、けれど一番印象的だったのが光り物。イワシとコハダでどちらも脂が乗っていてとろけるおいしさ。特にコハダは独特の香りと一緒にほどよき酢じめの酸味と旨味。シャリと混じっておかわりしたくなるおゴチソウ。

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貝を一通りとお願いしました。北寄はザクッと歯切れて軽い渋みが味わい深い。ブルルンヌルンと力強い弾力と軽い粘りとミネラル分が独特の分厚い赤貝。ウットリします。

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サクッと繊維が歯切れる感じが独特の本ミル貝にタイラガイ。去年はタイラガイが不良で縁がなかった。今年はいつも通りの漁だという。春に向かってウキウキしてくる。

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ゴリゴリ砕けて渋みと一緒に強い旨味を残してとろけるつぶ貝に、赤貝の紐。ザクザク歯切れてねっとりとろける感じは貝そのものより一層強くて、ミネラル分の香りも強い。

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もったりとした分譲以上に重たく感じるホタテの食感。繊細で上等な旨味はさすが、柱の王様。
エゾアワビは一口目にはゴリっと砕ける。ところが一旦歯切れてしまうとやわらかで、強い旨味を吐き出してくる。昆布のような強い磯の旨味と香り。
あまりにおいしく口が喉に手渡したくない…、って思ってずっと噛んで味わう。いつもこれだけ噛んで食べればお医者様にも褒められましょう(笑)。

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それから煮貝を2種類。ひとつは先程のエゾアワビ。ふかふかするほどやわらかで、甘いつめの味がしっかり入って味わいなんとも濃厚。
もう一種類ははまぐりで、大ぶりの身がクニュンプルンと口の中で遊んで戯れ壊れてく。

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それにしても昼の寿司はシャリが大ぶり。お腹いっぱいになって帰ってくださいな…、ってありがたさ。とは言えネタが貧弱かというとしっかり存在感を感じる味わい。なによりシャリがおいしくてたのしくお腹が満ちていく。
赤身とカンパチを握ってもらった。ひんやりとしたマグロの赤身が舌にピトッと張り付き、軽い酸味を残して消える。ざっくり歯切れる歯ざわりのよいカンパチと、お腹がほどよく満ちてくる。

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煮穴子を焼いてもらって塩とタレ。シャリと一緒にとろける食感。奥歯がキシキシ、きしむようになるほぐれた繊維がおゴチソウ。
トロの鉄火とかっぱを食べて今日の〆。テキパキとしてリズムにのった握り手さんの仕事を堪能。ことほいだ。

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