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社会福祉士国家試験対策 民法 権利擁護と成年後見制度


7割を目指す講義NO.4 福祉と契約との関係


1.社会福祉基礎構造改革と契約について


福祉サービスの構造について確認します。
戦後の福祉サービスの構造を見ると、措置という構造をとっていました。つまり、行政処分という形で、利用者の行き先、サービスの配分が決まっていました。
この時期には、契約という概念はあまり馴染みがありませんでした。しかし、2000年の社会福祉基礎構造改革以降、福祉サービスの構造として、措置から契約へという流れになります。
例えば、保育所、高齢者の介護、障害者の支援という様々な場面で、その多くは、契約という形でサービスを利用するようになってます。そこで、福祉を専門職とするソーシャルワーカーは、契約という概念をしっかりと理解する必要があるわけです。

ただ、2000年の社会福祉基礎構造改革によって、措置がなくなったわけではありません。なので、今でも残っている措置の制度についてもしっかりと理解しておく必要があります。
例えば、社会的養護の分野では、措置が残っています。具体的には、児童養護施設の入所とか。あるいは、特別養護老人ホームの入所についても、そうです。契約という方法もありますが、一方で、虐待を受けたケースなどでは、緊急時の対応として、行政が措置として入所させるという場合もあります(高齢者虐待防止法第10条、老人福祉法第10条の4、第11条)。
このように、社会福祉基礎構造改革では、おおかたのものが契約方式になっただけであり、措置制度がなくなったわけではありません。なので、措置制度も理解しておく必要があります。
ただ、今回は、契約制度について学習していきたいと思います。


2.民法が規定する契約の種類について


民法では、贈与から和解に至るまで13種類の契約について規定しています。これを典型契約と呼んでいます。

典型契約としては、贈与・売買・交換・消費貸借・使用貸借・賃貸借・雇用・請負・委任(準委任を含む)・寄託・組合・終身定期金・和解の13種です。

ちなみに介護保険にかかる施設とのサービス依頼契約は、この典型契約の中で、何に該当すると考えますか。

民法第656条に規定される準委任契約(請負契約のように仕事の完成を約束するのではなく、法律行為以外の一定の事務処理行為を行うことを約する契約。他の準委任の例としては、医師による患者の診察など。)に該当します。
「準」がない単なる委任契約は、法律行為(意思表示によって、権利の発生や権利の消滅などの法的効果が生じる行為)に関する事務を相手に依頼する契約になります(民法第643条)。
一定の法律行為をすることを委託するという部分がポイントになります。
委任契約の例としては、弁護士に訴訟代理を依頼する場合とか、日常生活自立支援事業における日常的金銭管理(法律行為として、預貯金の入出金、福祉サービスや医療費の支払、公共料金や保険料等の支払、年金に関する諸手続きなど)を依頼する場合などが挙げられます。
なお準委任契約については、13種類の典型契約の中の委任に含めて、13種類という勘定をしています。

第29回第79問
次のうち、日常生活自立支援事業における日常的金銭管理の根拠を民法上の典型契約に求める場合、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.寄託契約
2.委任契約
3.請負契約

フックン 日常的金銭管理は法律行為を委託するものだよね

そうですね。日常的金銭管理は社協に法律行為を委託するものになります。この点、委任契約は、法律行為に関する事務を相手に依頼する契約になります。なので、日常的金銭管理の根拠は、委任契約になります。よって、選択肢2が正解になります。
ちなみに、寄託契約は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる契約になります(民法第657条)。
請負契約は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる契約になります(民法第632条)。


3.契約の類型について


契約の類型としては、有償契約、無償契約、双務契約、片務契約、諾成契約、要物契約、要式契約に分かれています。

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