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7割を目指す講義NO.7~8 消費者保護に関する法律 権利擁護と成年後見制度


1.消費者保護の必要性


消費者契約法は、実務で非常によく利用されている法律です。

消費者契約法は、民法の規定(詐欺取消、強迫取消等)を修正して、特に消費者を保護する民法の特別法になります。
ここで消費者を特に保護する理由はというと、消費者は、情報とか交渉力の部分のところで、事業者よりも弱い立場に置かれがちです。皆さんは、消費者と言った場合にどのような人を思い浮かべていますか。自分の姿? でも、我々福祉関係の中では、例えば、サービスの利用者さん。契約を締結する当事者である施設側と利用者側。利用者側は、例えば、知的障害者、精神障害者、認知症高齢者などになります。このような弱さを抱えた消費者は、事業者とは対等な立場にはありません。なので、消費者保護が必要になります。また、当然のことですが、自分の関わる福祉サービスの利用者が消費者被害に遭っている際に、このような人達をサポートするとか、適切な機関(消費生活センター、弁護士事務所)に繋げるとかが必要になってきます。


2.消費者相談等のデータ

そこで、まずは、消費者庁の2021年のデータを見ていきます。現状はどうなっているのか、ということです。
全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談の件数をみると、2021年は、85.2万件となっております。


消費生活相談件数の長期的な推移をみると、2004年度に192.0万件とピークに達しました。このとき、架空請求に関する相談件数が67.6万件と急増し、全体の35.2%を占めていました。その後、架空請求に関する相談は減少し、消費生活相談件数の全体も減少傾向でしたが、2008年以降の10年間は年間90万件前後と、依然として高水準で推移し続けました。2018年には、架空請求に関する相談が約26万件に達し、消費生活相談件数は再び100万件を超えました。


年齢3区分別に消費生活相談割合について過去10年間の推移をみると、65歳以上の高齢者の消費生活相談割合は、全体の3割前後で推移しています。
2021年を見ると、全体の29.7%を占めています。
このことは、我々が今まさに超高齢社会の中にいることを実感させます。

さらには、高齢者の相談の中には、認知症等の高齢者が難しい局面に遭遇して相談をするということも出ています。


認知症等の高齢者からの相談の割合としては、全体のうち、約2割。それ以外の約8割はというと、認知症等の高齢者自身からの相談ではなくて、周りの人が相談しています。
認知症等の高齢者の消費生活相談としては、周りの人が相談する件数が非常に多いという特徴があります。認知症等の高齢者は、本人が十分に判断できない状態にあるため、自分が騙されていることに気が付かない、あるいは、傍(はた)から見ると明らかにおかしいのではないかと思っても、本人はおかしいという感覚を持っていないことがあります。だから、「訪問販売」や「電話勧誘販売」による被害に遭いやすく、事業者に勧められるままに契約したり、買物を重ねたりする場合があります。
なので、周りの人の気づきこそが、認知症等の高齢者の消費生活課題について向き合っていく大きな役割になってくるわけです。例えば、ソーシャルワーカー、ヘルパー、あるいはケアマネが気づくとかが認知症等の高齢者の消費生活課題の解決に重要になっていきます。


3.消費者を保護する法律について


(1)消費者契約法について


消費者契約法は、2000年に成立しました。施行は、2001年です。
消費者契約法は、消費者と事業者が締結した、労働契約以外の全ての契約が対象になります。
例えば、福祉サービスの契約も、消費者と事業者が締結した契約になるので、当然に消費者契約法の対象になります。
そして、成年後見制度等の対象になるような判断能力に揺らぎのある人以外、つまり、一般の健常者もその対象としています。

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