晴海フラッグの類推できる販売側ウラ事情と’24年3月引渡時のリアルな風景

いやはや、晴海フラッグにはビックリしますね。
抽選が行われたのは2021年の11月22日(月)です。
どうやら、売り出した631戸すべてに登録が入ったようです。
しかし、その後「登録申込即日完売」という発表がありませんでした。
新築マンションの販売においては、この「即日完売」という
フレーズは何物にも代えがたい強力な広告のキラーワードです。
「即日完売」と謳いたいばかりに販売戸数を調整するのが当たり前。
なぜなら、日本人は「赤信号みんなで渡れば怖くない」
という習性をもっているからです。

「他の人も大勢買いに来たから、このマンションはきっといい物件」
日本人はそういうことを無邪気に信じてしまう人たちなのです。
販売側もそれがよく分かっているので、
少し無理をしてでも「即日完売」と謳えるように
販売戸数や販売時期を調整するのです。

晴海フラッグの「第1期」の登録が行われたのは、今から2年以上前。
コロナ前の2019年の盛夏。あれは暑い夏でしたね。
そもそもその約1年前の2018年の秋に広告を始めたときには
概要に「2019年5月販売開始予定」と表示されていました。
それが、どういうわけかズレにズレます。

新築マンションの販売というのは、最も旬が1月から3月。
それを外せばゴールデンウィークと9月、10月。
避けるべきは8月と12月と決まっています。
なぜなら、日本は新年度が4月から始まります。
だから1月から3月は新しい暮らしを準備する時期。
「マンションを買って4月から新生活」、
あるいは「年度末の値引きセール」の時期が
2月と3月なのです。それを逃せばGWとなります。
秋にも暑さが和らいだので「モデルルームでも見に行こう」
なんて気分になる人が多いのです。

ところが7月の後半から8月は夏休みでしょ。
子どものいる人は、この時期に家族旅行を計画します。
お盆はお盆でいろいろ行事もあって忙しいものです。
12月は忘年会にクリスマスに年の瀬のあわただしさ。
そんな時期にマンションを買おうという人は少数派。
ましてや何千万円ものマンションの売買契約書に
ハンコは突きたくない、というのが普通の感覚。

ところが、晴海フラッグの「第1期」販売は
2019年の盛夏に登録が行われ、抽選はお盆前でした。
そして、契約はお盆の真っ最中だったと記憶しています。
もう業界のセオリーを外しまくり。しかも、日本の
マンション開発を代表するようなプロジェクトでの常識破り。
なぜ、そんな無理筋の日程になったのか?

それはスタートダッシュで大量住戸の「即日完売」を
謳いたかったからだと、私は推測しています。
晴海フラッグは分譲住戸が4145戸という超大規模。
私の記憶にある限り、1物件で4千戸超はこれが初めて。
こんなに大きな「1物件」は初めてですね。

私は1987年にほぼマンション広告を専門とする
広告代理店にコピーライターとして入社しました。
それ以来、新築マンション業界を眺めてほぼ35年になります。
その経験値からしても4000戸超は、これが初めてです。

現在、ゴールドクレストというマンションデベが
川崎市の矢向というところで約3千戸の開発を
行っていますが、あれがまあ晴海フラッグ以外では最大。
この業界では千戸以上になると「超」が付く大規模です。
もう一度書きますが、晴海フラッグの分譲住戸は4145戸です。

これだけ大きな物件になると、販売はスタートダッシュが大切。
「第1期」で大量の住戸を「即日完売」させて
人気物件であることを市場に対して強烈にアピールすることで
販売を勢いづけるのは、絶対的な販売のセオリーなのです。

そこで、2018年秋に広告デビューした晴海フラッグでは
翌19年5月に予定されていた「第1期」で千戸以上を
「即日完売」させることが何よりも求められたはずです。
ところが、その5月が近づいても千戸を即日完売させるほどの
集客ができなかった、のではないでしょうか。

それでズルズルと販売時期を延期させているうちに
「もうこれ以上は延ばせない」7月に入ってしまった。
そこで「多分大丈夫だろう」と思われる「600戸」を
あの暑いさなかに販売開始。申込の登録を始めたのです。

しかし、結果はあえなく惨敗。「即日完売」は謳えませんでした。
売主側から発表はありませんでしたが、50から60戸は売れ残った模様。
その割には最高で「70倍」という抽選になった住戸もありました。
なぜ、そんなちぐはぐなことになったのか。

その理由のひとつは、売主側が「パンダ住戸」を10戸ほど設定したからです。
「パンダ住戸」のパンダとは「人寄せパンダ」の意味。
広告用語です。多くの人が集まる何かを設けて注目を集め、
あたかも人気があるように装う広告アイテムのことです。

マンションの場合では「条件の割には価格が安い住戸」がコレ。
「この住戸はお買い得」というのは、ちょっとマンションに
詳しいエンド(一般消費者)なら分かることです。
そういうセミプロみたいなエンドがパンダ住戸に申し込みを
入れるので、倍率は驚くほど高くなるのです。

そういうセミプロみたいなエンドと、明らかな転売狙いの
業者みたいな連中が、数にしたら軽く100組以上はいるようです。
彼らが2019年夏に行われた「第1期」の時に、
売主側の狙い通りにパンダ住戸への申込に殺到。
「最高倍率70倍」という住戸が出てきて、見かけは大盛況。
しかし、まともな価格をつけた不人気住戸は申し込みが入らず
全住戸の「即日完売」は達成できませんでした。

その後、同年の12月に「第1期2次」で約340戸が売り出されて、
これも即日完売に至らず。そして2020年となりました。
ここで誰もが予想していなかった新型コロナの世界的大流行が発生。
あれよあれよという間に、2020年7月開幕予定の東京五輪が
「とりあえず2021年7月に延期」となってしまいました。

ご存じのとおり、晴海フラッグは東京五輪の選手村跡地を
活用したマンション開発です。建物のほとんどはそのまま再利用。
当初の引き渡し予定は「2023年3月」でしたが、
五輪の1年延期を受けて「引渡時期/未定」に変更。
晴海フラッグの販売スケジュールも「未定」となりました。

その時点で、すでに購入契約を締結していた人は推定900人弱。
予定通りの23年春以降の引き渡しを想定して人生の計画を
進めていた人々にとっては、ガラガラと予定が崩れました。
彼らの中の20数人は売主側に補償を求めて民事調停を申立て。
ただし、コロナによる引渡時期の変更は売主の責任ではないので
それが裁判所側に認められたのか、調停は不成立に終わりました。

そして2021年夏、東京五輪は開催され、無事に終わりました。
それで、引き渡し日は「2024年3月以降」に決まりました。
ちょうど当初から1年延びた感じですね。
そして2021年11月、五輪閉幕後第一弾の販売が始まったのです。
登録が11月21日に締め切られて22日が抽選。

抽選会場まで出かけた方に取材したのですが、大変な熱気だったみたい。
200倍近い倍率が表示されていた住戸が1棟でいくつもあったとか。
また、ほとんどの住戸に申し込みが入っている様子が窺えたそうです。
「ということは明日あたり、にぎにぎしく『即日登録完売』という
発表が幹事社である三井不動産あたりから出てくるのか」
そんな風に予想していたのですが、待てど暮らせど発表はなし。

「まさか完売していないなんてことはないはずだけれど」
そうしたら12月の2日になって、やっと
「全ての部屋に申し込みがあった」というニュースリリース。
登録申込数は5,546組で平均倍率は8.8倍、最高倍率は111倍だったと。

ふーん、そうならなぜそれを言うのに10日もかかったのか?
200倍近い住戸もあったのに「最高倍率は111倍」とはなぜ?
それに、にぎにぎしく「登録申込即日完売」と謳わないのはなぜ?

そんな疑問が湧いてきます。
晴海フラッグは、そのスケールが現状で「日本一」のマンション。
今まで販売した住戸がすべて売約済みでも、あと約2500戸あります。
建物が完成して購入者に引き渡すまでの期間は残り2年と3か月。
1年で1000戸のペースで売らないと完売にはなりません。
であれば、なおさら五輪閉幕後のスタートダッシュで
勢いをつけなければならないはずではないですか。
であるのに、それをやらないのはなぜ?

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