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「ミミカ」に可不の後方舌根性を感じた話

こんばんは。お盆の帰省で昨日には記事を書く暇がなかったさかじょんです。正確に言えば時間はあったのですがのんびりするのに忙しかったです。
今まさに新幹線で東京に戻っています。

さて、今回は少し変わったお話です。初音ミクにはちょっとしか関係がないかもしれません。

聴く曲や記事に相互連関性が出てきましたね

やや本筋からズレるのですが、最近記事のネタを思いついたら、「前に書いたあの記事と絡まる内容だな〜」とか思ったりします。
これも週1ペースの投稿を半年以上続けて来た成果みたいなものなのでしょうか。ちょっとうれしいですね。

とりあえず目下の目標は年末に今年の記事を振り返る記事を書くことなので、今後もぼちぼち続けられればいいな~って思っています

さて、今回は可不の舌根(喉)に関することなので、以下の記事にちょっと関係があるかもしれません。

内容に関係はないのですが、記事のタイトルだけは「「沈みゆく町」に可不の新世界を見た話」に似ていますね……。

後方舌根性(retracted tongue root)とは

さて、タイトルになっている「後方舌根性(以下RTR)」ですが、ほとんどの人にとって聞きなれない言葉かと思います。
それもそのはず、言語学の専門用語です。

実は私、今となっては一介の賃金労働ボカロオタクですが、昨年度まで大学院生をしており、実は文学(言語学)修士号取得ボカロオタクでもあります。文系院生とかいうややめずらしい身分をやってました。

RTRはざっくり言うと、「舌根が後ろに出ている状態(から出される言語音の特徴を記述するための言葉)」です。以下、逆となる「前方舌根性(ATR)」のWikipediaです。

もう少し噛み砕いて説明すると、
「舌根」とは文字通り「舌の根っこ」で、舌を口の奥の方に辿っていって、喉あたりの位置にある部分です。
この舌根が、後ろに出ているというか後頭部に向かって後ろに膨らんでいるというか、とにかく口〜喉の空間をきゅっと狭める形で存在感を示している状態、およびその状態から発される言語音の特徴を説明する際に使われる言葉「RTR」という感じです。

(ここまで言っといてなんですが、私の取り組んでいた分野は形態論でして音声学ではないので、説明に誤りがあればご指摘ください)

「ミミカ」に「可不の舌根」を感じた

さて、ここからがやや変態じみてくるのですが、以前IPPUN GP感想記事でもバチバチに言及させていただいたszriさんの「ミミカ」で可不の歌声を聴いていたある日、「ああ~可不の舌根が後ろに出ているんじゃあ~」という気持ちになったので、この記事を書いています。

分かりやすいのはラスサビ終わりの「アイゾトープ」の「とー」や「ぷぅー」の「ぅー」でしょうか。「ぅー」は「う」の音というよりは「う」と「え」の間(いわゆる「前寄りの『う』」)って感じですね。

皆さんもこの箇所の歌声を真似ようとした状態で、舌の根っこに意識を向けていただければ、自身の舌根が後ろに出ているのを感じられますよね!!?え、わからない!?

可不の舌根を感じられるのも、その表現性の成せるものか

これ以前も、私の専門が言語学だったので、言語学を絡めてボカロ曲を考えられないかな~と思っていたのですが、なかなかピンとくることがありませんでした。

というのも、特に音声学は「人間の調音器官(肺~鼻腔・口腔)」を前提とするものですので、思いを馳せることしかできないボカロの喉に関しては物を言えなくて当然なわけです。

しかし、以前の可不記事で言及したように、可不(をはじめとするいわゆるAIシンガー)はVOCALOIDと異なる表現性を志向し、「打ち込んだ通りに人間の声(に極めて近いもの)を出力する」ことを実現するものと捉えられます(以下当該記事より引用)。

ここで明確にしておきたいのは、AIシンガーとVOCALOID(をはじめとする従来型合成音声歌唱ソフトウェア、以下「VOCALOID」)の表現性、指向性の違いです。

同じ「合成音声ソフトウェア」ではありますが、私はAIシンガーとVOCALOIDを次のように捉え分けることができると思います。
AIシンガーは「誰もが人間の『声』(可不で言えばオリジナルである花譜さんの声、に極めて近いもの)を、自分の打った通りに歌わせること」を実現するものであり、
一方VOCALOIDは「VOCALIDの歌唱=歌詞を乗せられる『音』を、パラメータをいじりつつ出す」ことができるものと捉えます(その意味ではより楽器に近いと言えるかもしれません)。

両者はともに表現の一手法でありますが、「人間の声」と「ソフトウェアの音」というように、その指向性や価値が違うと捉えられると思います。

https://note.com/sakajohn7/n/n6b89257a4791

よって、今回可不の舌根を感じることができたのも、「人間の声」を志向する可不の表現性の表れであると思えました。

「ミミカ」以外にも可不の歌声ではRTRを感じることができるかもしれません。強いRTRを感じる曲があればぜひ教えてください!

一方、VOCALOID(つまり非AIシンガー)でもRTRを感じることはできるのでしょうか? 上述の観点を踏まえると、VOCALOIDの表現性は「音」寄りですので、「喉」の想定はより不明瞭になります。
そりゃそうなんですが、私も今までVOCALOIDの「喉」を想定せずにボカロを聴いてきましたし、冒頭で挙げた「1本の喉で」記事はハモりに関するものですので、今回ほど「喉」に具体的にフォーカスしたものではありません。つまり、今回初めて合成音声の喉についてちゃんと考えた感じですね。

……ええ、「合成音声の喉」なんて意味わからんことを言っているなんてわかっているんです。でもいいじゃない。VOCALOIDを考えることは、VOCALOIDに向かい合う人間を考えることでもあるんですから(?)。

また初音ミクの喉を感じることがあれば追記したいと思います。テトさんとかありそうかな~。

おわりです

さて、今回は可不の舌根に関して書きました。書きながら思っていましたが、我ながら思ったよりキモい深みにハマった記事になってしまいましたね……。

かねてより言語学に関する記事を書きたかったので満足しました。
まあ音声学ではなく形態論や統語論なら、もう少し扱いやすかったのかな~とも思うのですが、ボカロ曲の歌詞等を分析しても(それはあくまで作詞者の理解であって)ボカロを理解することになる気があんまりしないというのもあり、結局こんな感じになりました。

最近気づけば結構がんばってしっかりめの記事書いてしまっており、あまりお気楽な曲紹介などができていませんね!
ただ今から先日購入した「ぱて本」を読むので、来週はそれの感想記事になりそうな予感です。またしっかりしそうですね。

また頃合いを見て曲紹介記事も書くと思いますので、適当にお付き合いくださいませ。

ではでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。また来週お会いいたしましょう。

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