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NHKは結局、公共メディアに進化なんてできないんだなあ〜テキストニュース縮小問題から見えること

さてみなさん、久しぶりの新メディア酔談の配信が来週に近づいてきました。今回はゲストに佐々木俊尚さんをお招きしたし、ぜひみなさんリアルタイムで見てください。

ただ前半は30分で終了、後半は有料でもっとディープな話をします。前半の途中からでも申し込めますが、あらかじめ申し込んで最初からこっちで見てもらってもいいのですよ↓あと、スタジオ参加も可能!

NHKが「NEWS WEB」など今提供しているネットでのテキストニュースを縮小してしまう。なんでそうなっちゃったのか、これまでの流れはこっちの記事に整理してあるので読んでみてください。

NHKプラスからも受信料を取るために、新聞協会から批判されているテキストニュースを縮小して、許してもらおうという姿勢が見えてきます。

この一年の経緯としてはこうなのですが、今あらためて思うのは、NHKの体質として、DNAとして、「公共放送」の枠から出ることはそもそも無理なのだろうなあということです。

NHKは2015〜2017年度の経営計画の中で「公共放送から公共メディアへ」をはっきり打ち出しました。

NHK経営計画2015-2017年度 P7

「放送と通信の融合時代にふさわしい”公共メディア”への進化」とありますね。つまり「公共メディア」とはネットも活用しメディアの枠にとらわれずに伝えていくということでしょう。
さらに同じ書類の別のページにはこんなことも書いてあります。

NHK経営計画2015-2017年度 P18

後半部分では「インターネットを活用したサービスを強化」とあります。これに従って、NHKではネットでのテキストニュースを様々に展開してきたのでしょう。
さらにその次の2018-2020年度の経営計画では「公共メディア」を全面に打ち出しています。この記事のトップ画像はその表紙です。

NHK経営計画2018-2020年度 P1

そして1ページ目でこんなビジョンを掲げています。最近で言う「パーパス」ですね。NHKとしての理想を掲げ、「公共的価値」を実現するためには放送を軸としつつもネットも活用した「公共メディア」になるのだと宣言しています。美しい理想ですね。それに国民に対する責任としても正しい方向性です。

NHK経営計画2018-2020年度 P17

P17ではその実現のためにテレビ放送だけでなく様々なデバイスへネットで多彩なコンテンツを展開すると示しています。
ちなみにこの計画をまとめた時の会長は、上田良一氏です。目立っていた籾井さん、前田さんの間で静かに活動し去られましたが、この計画を残されたのは素晴らしい業績だと思います。
では次の経営計画はどうでしょうか。

NHK経営計画2021-2023年度 P2

なんかね、ガラッと変わっちゃうんです。会長が銀行から来た前田晃伸氏に代わったわけですが、お金をしぼる話ばかりになってる感があります。予算縮小を課題に就任した様子ですから当然なのでしょうけれども、「公共メディア」はなくなってはいないけれども、随所に出てくるもののあまりメインに打ち出されていません。
そして次に出てきた来年度以降のための経営計画は、今一旦まとまってこれから国会にかかるのだと思いますがこんな感じです。

NHK経営計画2024-2026年度 P1

一番最初の見出しを見てください。「今、公共放送(メディア)NHKに何が求められているのか」とあります。あれー?公共放送(メディア)って何でしょう。しかも(メディア)の文字が小さい。2015-2017年度、2018-2020年度であれだけどーんと打ち出した「公共メディア」の「メディア」がカッコ付きになっちゃって、「公共放送」に戻っちゃいました。
NHKはこの10年くらいかけて、公共メディアに進化するはずが、公共放送に戻っちゃったわけです。なーんだ。
がっかりしますけど、これがNHKという組織の本質なんだろうなあと思います。「公共メディア」なんて掲げるのは本当は嫌だったんだけど、そうしないと同時配信できないし、掲げたから「NHKプラス」を実現できた。次にやりたいのはそこで受信料を取ること、そのためにはNEWS WEBなんてどうでもいいんじゃよ。映画の最後に老かいなボスキャラが主人公にどんでん返しの真相を告げるように、NHKという大きな人格がそう言っているように思えます。
もちろん「公共メディア」を掲げた時、上層部やその周辺の人々は本気でそう考えたのだと思います。上田良一氏も、決してなんとなくあの計画を承認したわけではなく、そうすべきと計画づくりを推進したのではないかと推察しています。
でも、そうした清い心で動く人々の裏にはそこここにNHKの本質を握る人々がいて、しめしめシナリオ通りじゃわい、と見守っていたのではないでしょうか。そんな妄想さえしてしまいます。
「公共メディア」の理想に感銘して頑張ってきた局員の皆さんがかわいそうだし、失礼なことだと思います。でも、そういうことなんじゃない?
「NHKテキストニュース問題を語る」のは「これなんとかならないか」という意図もありますが、さらにその先に考えを進めて「そんな風にNHKは公共メディアに代わるつもりはなく、公共放送にしがみつきたいのだ」"だってさっきの公共放送(メディア)にそれが現れていますよね"とした時に、私たちは何をどう考えるべきか。私たちとしてやるべきことはあるのか。そんな話もしたいと思います。
というわけで、後半もぜひ見てください!できれば、いまのうちから申し込んでもらえるとありがたいです!


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