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【浅草】天藤 穴場的てんぷら屋さん

 浅草が大好きで、来るといつも落ち着いた気分になれる。
 生まれ育った場所ではないけれど、日本の中で一番リラックスできる場所だ。
 駒形橋の欄干に身体をあずけ、ぼーっと川の流れを見つめていたり。
 吾妻橋の東側へ渡り、川沿いのちょっとした広場へ腰をおろし、まぶしいながらもどこか柔らかい夕日を見つめてみたり。
 雑踏の中を、ふらふら足にまかせて散歩してみたり。
 賑やかな場所が好き。
 将来住む場所を選ぶなら、繁華街の真っ只中にしたい。
 閑静な住宅街とか、わたしには無理。落ち着かないし、つまんないから。

 わたしには、やっぱ浅草しか勝たん

 その浅草にある〔天藤(てんとう)〕は、いつでもすんなり入れる天ぷら屋さん。
 ただ去年のゴールデンウィークのみは、どういう訳だか超絶長蛇の列になっていて、
「はて、まぼろしでも見ているんかな、どうも入り口の脇に列ができているような錯覚が……」
 いぶかしながらも、そのままドアを開けて入ろうかとも思ったけど、念の為、
「あのー、この列って、このお店で並んでるんですか?」
「ええ、そうですよ」
 まじか……いや、ひいきのお店が人気なのは嬉しい。
 けれど、行列ができるのは初めての経験で、途惑いつつも列の最後尾についた。
 結局、店内へ入るまで、一時間半もかかってしまった。
 待ち時間、休日ディズニーと同レベル。

 天藤の天ぷらは、色が実に濃い
 それでいて、不思議とくどくなく、さくさくと口の中へ吸い込まれてくれる。
 天ぷらが美味しいお店の証は、エビの尻尾に宿るんじゃないかなあ……なんて思ってる。
 ここに臭みがなくて、味わいがあったら、そのお店の天ぷらは信用できる。
 なので、わたしなどは尻尾ごとバリバリ噛み砕く! 美味!

天藤の天丼

 いつもは〔天ぷら定食〕率が高いわたしだけど、今回はがっつり感が欲しくて、〔天丼セット〕にした。
 なめこのお味噌汁と、おしんこがつく。
 この、とろっとしたお味噌汁には、七味がとてもよく似合う。
 七味の缶を手に取ると、そこには燦然と〔やげん堀〕の文字が。
 浅草の七味は、やっぱりやげん堀であってほしい。
 この風味ゆたかな七味を、帰りに買って帰ろうかと思い立った。もちろん〔大辛〕で。

天藤の天丼

 天ぷらの構成は、エビ2尾、貝柱のかき揚げ、野菜(今回は茄子)、キス。
 それぞれをあらかじめ天つゆへくぐらせた上で丼に乗せるから、天ぷら定食に比べると、さくっと感が減退し、ふにゃっと感が出るけれど、天丼には天丼の魅力があるよね。
 いつも天ぷら定食率が高いのは、さくっと感が得られる上に、天つゆと塩の味変を愉しめるから。なんなら、テーブルにあるカレー粉で味わうのも、アリだし。
 丸い、銅の器にもられている様子もまた、正体不明の食欲をかきたててくれる。

天藤・銅のうつわ

 天藤には、一日に二度も訪れたことがある。
『え、そこまで好きなん!?』
 と思われそうだけど、いやこれには事情があったのだ。(や、好きは好きだけど、普通ないっしょ、同じ日に二度も行くなんて)
 友達と、
『今度さ、浅草散歩しようよ』
 ということになった時、友人Aは午前中しか空いていなくて、友人Bは午後しか空いてなかった。
 なので、ローテーション的に別個に会うことになった訳だけど……。

『どこでご飯たべる?』
 と、わたしが推せる浅草のお店を列挙プレゼンすると、Aは天藤を所望した。
 だから、行った

『どこでご飯たべる?』
 午後、Bへ各種お店のプレゼンをすると、天藤を選択した。
 だから、行った。
 もちろん『えー、そこ、午前中に行ったしなあ……』
 などとは決して言わなかった。

 天藤へ入るなり、お店の人が目をまんまるにして、
『あれ、午前中に来ませんでした?』
 はい、来ましたとも。いいんです。ここの天ぷら大好きなんで、例え連続になろうとも。
 午前が天ぷら定食だったら、午後は天丼を食べればいいのです。

天藤

 そんな想い出に、にやにやしつつも、浅草からさっさと離脱。
 ゴールデンウィークは、本当に容赦ない混みっぷり。
 いつもは穴場的に空いているカフェ〔ムルソー〕ですら、列が出来ていたし……。

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