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【京都】湯の花温泉・保津川亭 悪の宇宙船襲来!?

 女子二人旅。
 わたしの宣言どおり、京都歴史の旅にしちゃって、そういうのに興味がない友達、あんじーには申し訳ない気がしてたけど、
「いや、のどかの解説が面白くてわかりやすいから、楽しいよ」
 嗚呼……互いに口の悪い応酬をひごろから繰り広げている仲のあんじーが、めずらしく誉めてくれてる!

 ということで向かったのが〔霊山歴史館〕
 霊山とかいて「りょうぜん」と読む。
 幕末の歴史を知りたい人にとっては、ここはまさしく宝庫。
 付き合ってくれたあんじーを退屈させないために、展示物を前にしては、懸命に解説する。

 なお、わたしは佐幕派なので、どうしたって長州側へは辛辣な意見になるけど、それはご容赦。
 なので特に目を引いたのが、池田屋事件を再現したミニチュアだったりする。
 その各所で展開している死闘を前に、
「これはたぶん永倉新八で、この時の新八は知らないうちに指を失くしてて、それに気づかないほど無我夢中な斬り合いだったんだよね」
 ミニチュアの解説なのか、あるいはわたしの歴史語りにミニチュアを利用しているのか、どっちかわからない。
 ただあんじーが、へえ、なるほど、ふうん、と素直な反応をしてくれるのが、とてもありがたい。

 なお、永倉新八びいきなので、いきおい、新八っつぁん語りが多めになるのは、ご愛嬌。

池田屋事件のミニチュア

 京都に温泉のイメージはあまりない。
 けれど調べてみたら、京都の西隣にある亀岡市に温泉旅館があったので、二日目の宿泊はそこに決めていた。
 古都の温泉ということで、きっと風雅な旅館であろうと期待してレンタカーを走らせたわたし達だったけれど……。
「ねえ、のどか。あそこに宇宙船が着陸してるんだけど」
「……だねえ。しかも、悪役の宇宙船だよね」
「いまにも侵略とか略奪とかしそう」
 いかにもそんな感じの建物が、姿をあらわしたのだ。
 好き勝手わいわい言っていたけれど、どうも、その、カーナビが示すわたし達の目的地らしき建物が、他に見当たらない。
「えーと、あれ、うちらって京都の旅館に泊まるんだよね?」
「もちろん。WEBで写真を見たけど、綺麗な内装ながら風情とかありそうだったよ」
 その風情とやらをすべて暴力的に吹き飛ばす建物が、いよいよ近づき、わたしたちのレンタカーはそのエントランスへ。
 そこが〔京都・湯の花温泉 松園荘 保津川亭〕だった。

悪のエイリアンの宇宙船……? いや、京都の温泉旅館・保津川亭

 いざ中へ入ってみると、外見からはちょっと想像がつかない豪奢さだった。
 その雅さ、まるで遊郭にでも迷い込んだかのようで、立体的な内部構造に、丸提灯がきらめいている。
 ロビーへ降りる階段にそって、せせらぎがあり、その水の流れには陶器の亀が首をもたげていたりもする。
 かと思えば、ずっと奥には、淡い照明の中にパイプオルガンがどっしり鎮座していたりもする。
 ちょっとした、ワンダーランドだった。

保津川亭ロビー階段
保津川亭、きらびやかな内装
この立体的な内部構造にわくわくする

 お風呂もちょいと凝っていて、さまざまな種類があるし、なんなら迷宮めいてすらいて、わくわくが止まらない。
 まるで能の舞台のような露天風呂もある。
 そういえば大浴場へ至る道すがら、あちこちに能面が飾ってあったっけ。
 それこそ、面白いもの、綺麗なものから、不気味なもの、怖いものにいたるまで。

          ◯

 夕食は、丹波牛。
 鉄板焼きで、和牛ならではの脂が、じゅじゅっと溶けて甘い香りが立ち上る。
 各種料理も品よく盛り付けられていて、焼き鯛などは温められた石を抱いていて、冷めないよう工夫をこらされていた。

丹波牛
保津川亭の夕食
京都らしい繊細さと品の良さ

 夜。
 二度目のお風呂を堪能し、あとは部屋の中であんじーと旅の最後の夜をかざるべく、思い出話に花を咲かせる。
 ふと、その時わたしが読んでいた〔湯けむりスナイパー〕という漫画の話題を出したら、ちょっと興味を惹かれたのか、
「それ、めっちゃ面白そう」
 後日、あんじーは全巻をそろえて読破した、と言ってきた。

 なお、この湯けむりスナイパーはドラマにもなっていて、クレイジーケンバンドが歌う渋みのある曲を背景に観ていると、なんともいえない気分にひたれる。
 後追いで、つい全話見てしまった。
 おすすめ。

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