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【富山県】 尋常ではない量の濃厚手打ちうどん アラキ

 前回まで、雛見沢(白川郷)のことを書いていたけど、その間、帰り道に立ち寄ってお昼を食べた〔手打ちうどん・アラキ〕のことを憶いだして、実はそわそわしていた。
 濃厚な味噌のつゆをからめた、大量の手打ちうどん。
 中毒性のある、強烈な出汁っぷり。

 折しも、ゴールデンウィークに差し掛かる頃合い。
「めっさ遠いけど……行けないこと、なくね?」
 通常の週末土日なら、まあ遠すぎて無理だけど……ひらめいたその瞬間、わたしは予定をがっちり決めていた。

          ◯

 うどんのために、関東からわざわざ日本海側へ。
 我ながら酔狂だけど、さすがにそのためだけに日帰りというのもつらいので、海の幸が楽しめそうな温泉宿も手配しておいた。
 唐突の思いつきとはいえ、実に旅行らしい体裁がととのってくれた!

 前回は、うどんもラーメンも食べたかったという理由で2つ頼んで、その量の異常さに内心悲鳴をあげていたものだったが、
「今回も、それで行く気まんまん」
 鼻息も荒く、食券を店員さんへ渡す。
 人数と食券の数が合わないことに、怪訝な顔をされたが、
一人で二杯食べます。実績あるので大丈夫です」

 ネットでの評判では、こう書いてあった。
『普通盛りで、他店の特盛レベル
 たぶん、麺の量は通常の2倍といったところかな?
 それを、うどんとラーメンそれぞれで、合計通常の4杯ぶん。
 でも大丈夫。

 他の席のカップルが、そろそろ食べ終わる頃合いなのに、ふとその箸のペースを緩め、ちらちらとこちらを観察している。 

アラキの、みそホルモンうどんとラーメン

 わたしはうきうきと箸を持ち、まずは、放っておくと伸びてしまいそうなラーメンの方を先にやっつける。
 にんにくをたっぷり投入。
 富山県はブラックラーメンが有名だけど、アラキのラーメンはどうもそれとは違う感じだ。
 さりとて、他の店でだすような醤油ラーメンともちょっと違う。
 昆布だしがよく効いているような感じ、かもしれない。
 一風かわった、強いて言うなら、
「うどん屋さんのラーメン……?」
 人によっては『思ってたんと違う』となりそうな気はするけれど、でもわたし、これ好きかもしれない。
 だから、前回に引き続きふたたび食べたいと思ったんだしね。

アラキのラーメン

 さて、本丸を攻め落とすべく、うどんへ箸をつける。
 これもまた、にんにくをたっぷり投入。
〔みそホルモンうどん〕と銘打った、どうやらアラキでは看板メニューらしい。
 魚介の出汁がたっぷり効いた、超絶濃厚な味噌のつゆだ。
 ホルモンと名乗っていながら、皆の知るホルモンではない。
 豚バラを煮込んだ感じの肉だ。
 そういや、お店のどこかに、張り紙がしてあった。
『当店のホルモンは、世間一般でいうホルモンではなく……』
 みたいな。
 柔らかく煮込まれてあるその肉は、濃厚つゆをいい具合に吸い込んでいてくれて、かつ、脂身もまたいい具合につゆとの味に融合してくれる。

アラキのモツ煮

 具は他に、わかめとたっぷりのネギ。
 前回は、麺の具合が手打ちらしく、細い部分と太い部分が混在し、それがつゆをしっかり絡め取ってくれたりしてた。
 今回、ちょっと違う感じで、太さが均一に近い。
 製麺方法、変えたのだろうか。
 いずれにしても、
「この強い麺は、それに見合う強い味噌のつゆと釣り合っていると思うよね」

 この味をもし自宅で再現するとしたら、どうしたらよいだろうか……。
 うどんは、コシのある冷凍うどんで代用するしかない。
 つゆは、とにかくカツオと昆布の出汁の素を通常の3倍くらい投入した方がよさそうだ。
 場合によっては、味覇(うぇいばぁ)を加えてもよさそうな気がする。
 味噌も、色の濃いめの合わせ味噌を使った方がよいだろうね。
 もしかして、生姜の味も効かせると、近い風味になるかもしれない。
 ホルモンと称する、豚バラを煮た際の煮汁も混ぜるのがよさそうだ。

 ということで、後日、自宅で可能な限り再現につとめてみたが……、
「美味しいには美味しいけど、やっぱかなり違うなあ」
 ま、そりゃそうだ。
 しかしながら、この一品、我が家では「みホうもどき」と命名して、定番メニューにしようと決めた。
「みホう」とはつまり、みそホルモンうどん。
 食券に、そう記載してあったので。

 ラーメンとうどん、それぞれ麺を平らげた時点で、そっとこちらを観察していたカップルは席を立った。
 どうやら、結果を見届けて満足していったようだ。

 たらふく胃袋を膨らましているにも関わらず、名残惜しさに後ろ髪をひかれつつ、今晩お世話になる温泉宿へ進路をさだめた。
 めざすは、金太郎温泉
 進路は国道8号線を東へ、なんだか雄大にそそりたつ山脈を遠望しながら。
 つづく

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