【ダナン】 ベトナムその4 風流なる水郷・ホイアン旧市街
「夜だったら、めっさ風流だっただろうね……」
ホイアン旧市街は、中国風の灯籠がたくさんぶらさがっている水郷だ。
川だか運河だか、とにかくかつては水運による貿易がさかんだった街で、両岸に中国風の建物がならんでいる。
残念なことに、わたし達は日帰り。
夜まで悠長に過ごしているわけにはいかない。
◯
まずはお昼ご飯。
ベトナム料理は、大まかに調べてある。
「ホイアンなら、カオ・ルーだ!」
少し時分どきをはずした食堂には、他に客らしき姿は見当たらず、まず貸切状態。
カオ・ルーは、チャーシューが乗った汁なし米粉麺、という感じ。
や、正確に言えば、中華スパイスを効かせた汁にからめてある、というか。
パクチーなどのハーブ類が、アクセントを添えてくれる。
店内は黄色を基調としているが、壁はちょっとくすんでいて、年月を感じる。
建物のつくりや色のセンスが、日本とは違っていて、外国へ来ていることを印象づけてくれる。
なんだか、カオ・ルーの味わいと相まって、胸に、じぃんとくる。
◯
水運をはさんで、両岸に並ぶ古風な建物をながめつつ、観光客でごったがえす道を進む。
頭上には、ホイアン旧市街を象徴するランタン──中国風の灯籠が吊り下がっていたりもする。
なんなら、灯籠屋さんもあったりするが、さすがにかさばるおみやげは買えない。
中国風の扇や、真鍮製の風鈴も、かさばる。
ただ、文化的風情は堪能させてもらう。
炎天下の中を歩き回り、マップアプリで探したカフェへ飛び込むと、冷たいベトナムコーヒーにありついた。
ベトナムコーヒーと言っても、現地ではどうもあれこれと種類があるのか、とりあえず、わたしが頼んだのは〔サイゴン・コーヒー〕だった。
サイゴンは、ベトナム南部・ホーチミン一帯のことだ。
店内を見渡すと、一席だけ、ふかふかのソファ席があったし、運よくそこが空いていたので、そそくさとK美さんと二人、そこに陣取る。
そこは隅っこで、店内をよく見渡せる位置でもあった。
「あー、生き返る……」
自分で思っている以上に、どうも疲れていたらしい。
まあ、そりゃ、アップダウンの激しすぎる五行山なんて場所を、猛ダッシュで駆け巡った直後だし、そりゃ疲れるよ。
「無理して観光するより、こうやって、まったり過ごす方が正解だね」
K美さんも、目を細めて店内から通りへ視線をやって、ふっと一息ついたご様子。
この、午後の気だるい時間の流れが、心地よい。
黄色い壁に、中国風の古い調度品。
各所に飾ってある、南国の花。
忙しい中でも、ゆったり休憩をとることを忘れない店員さんたち。
暗い店内と、あまりに眩ゆい外の景色。
◯
夜の幻想的な光景を見られないのは残念だけど、飛行機の時間が近づいている。
空港へ向かうタクシーの中で、K美さんはぐっすり寝落ちしていた。
空路で一時間半。
ハノイへ到着すると、夜の11時。
24時間後には、もう帰国だ。
ホテルへ戻るタクシーでは、運転手さんが、時おり咳き込むわたしを気遣って、喉に優しい飴っぽい薬を、笑顔で手渡してくれた。
つづく
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