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【ダナン】 ベトナムその4 風流なる水郷・ホイアン旧市街

ホイアン旧市街

「夜だったら、めっさ風流だっただろうね……」
 ホイアン旧市街は、中国風の灯籠がたくさんぶらさがっている水郷だ。
 川だか運河だか、とにかくかつては水運による貿易がさかんだった街で、両岸に中国風の建物がならんでいる。

 残念なことに、わたし達は日帰り。
 夜まで悠長に過ごしているわけにはいかない。

 まずはお昼ご飯。
 ベトナム料理は、大まかに調べてある。
「ホイアンなら、カオ・ルーだ!」
 少し時分どきをはずした食堂には、他に客らしき姿は見当たらず、まず貸切状態。

カオ・ルー

 カオ・ルーは、チャーシューが乗った汁なし米粉麺、という感じ。
 や、正確に言えば、中華スパイスを効かせた汁にからめてある、というか。
 パクチーなどのハーブ類が、アクセントを添えてくれる。

 店内は黄色を基調としているが、壁はちょっとくすんでいて、年月を感じる。
 建物のつくりや色のセンスが、日本とは違っていて、外国へ来ていることを印象づけてくれる。
 なんだか、カオ・ルーの味わいと相まって、胸に、じぃんとくる。

現地レストラン

ホイアンの水郷っぷり

 水運をはさんで、両岸に並ぶ古風な建物をながめつつ、観光客でごったがえす道を進む。
 頭上には、ホイアン旧市街を象徴するランタン──中国風の灯籠が吊り下がっていたりもする。
 なんなら、灯籠屋さんもあったりするが、さすがにかさばるおみやげは買えない。

 中国風の扇や、真鍮製の風鈴も、かさばる。
 ただ、文化的風情は堪能させてもらう。

ランタンのおみやげ屋さん

 炎天下の中を歩き回り、マップアプリで探したカフェへ飛び込むと、冷たいベトナムコーヒーにありついた。
 ベトナムコーヒーと言っても、現地ではどうもあれこれと種類があるのか、とりあえず、わたしが頼んだのは〔サイゴン・コーヒー〕だった。
 サイゴンは、ベトナム南部・ホーチミン一帯のことだ。

 店内を見渡すと、一席だけ、ふかふかのソファ席があったし、運よくそこが空いていたので、そそくさとK美さんと二人、そこに陣取る。
 そこは隅っこで、店内をよく見渡せる位置でもあった。
「あー、生き返る……」
 自分で思っている以上に、どうも疲れていたらしい。
 まあ、そりゃ、アップダウンの激しすぎる五行山なんて場所を、猛ダッシュで駆け巡った直後だし、そりゃ疲れるよ。

冷たくてキリッと甘い、ベトナムコーヒー

「無理して観光するより、こうやって、まったり過ごす方が正解だね」
 K美さんも、目を細めて店内から通りへ視線をやって、ふっと一息ついたご様子。

 この、午後の気だるい時間の流れが、心地よい。

 黄色い壁に、中国風の古い調度品。
 各所に飾ってある、南国の花。
 忙しい中でも、ゆったり休憩をとることを忘れない店員さんたち。
 暗い店内と、あまりに眩ゆい外の景色。

カフェの外観

 夜の幻想的な光景を見られないのは残念だけど、飛行機の時間が近づいている。
 空港へ向かうタクシーの中で、K美さんはぐっすり寝落ちしていた。

 空路で一時間半。
 ハノイへ到着すると、夜の11時。
 24時間後には、もう帰国だ。

 ホテルへ戻るタクシーでは、運転手さんが、時おり咳き込むわたしを気遣って、喉に優しい飴っぽい薬を、笑顔で手渡してくれた。

喉によいらしい飴的な薬

 つづく

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