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引用/被引用特許情報の使い方。集合で見ても面白い!

こんにちは!特許調査の仕事をしてます、酒井といいます。この記事は「引用/被引用特許は『集合』で見ても面白いかも!」という話を書きます。
2021/07/27のライブ配信からです。

引用/被引用特許の基本的な定義を確認されたい方 特許庁の資料でどうぞ。

さて・・・ライブ配信は「質問BOX」のおたよりから。

おたより下さった方は、とても大事なことを書いてくださってます😘
「審査官や登録調査機関の方の検索力に頼る」
これ、引用/被引用情報の本質じゃないでしょうか?

そしてご質問は「どのくらい活用されていますか?」だったのですが、
定量的に「んー、週3回ですね☆」・・・って話ではないと思ったので 笑
今回は「どんな使い方をしているか」をご紹介してみました。

無効資料調査の序盤

本件を中心に「引用⇔被引用」を複数回検索します
(以下、特にシステム名を特定しない場合は全部「商用データベースを使ってるのね」と思ってください 😄)

または
本件を探すつもりで、出願時期関係なくキーワード検索します。
本件より新しい公報がヒットしても、全然構わないです。
それで、良さそうな特許をピックアップして
「引用⇔被引用」を複数回検索します。

上記をまとめると、古い公報も新しい公報も混じって、
300件とかの集合ができると思うので、
最後に「遡及基準日」で足切りして、中身をチェックすると
無効資料調査の「初動(序盤)」をスピードアップできたりします。

無効資料調査の中盤以降

調査が進んできた、けど、
自力サーチが何となく手詰まりになってきたな・・・って時にも使います。

自力サーチで見つけた「使えそうな先行例」を起点に
「引用⇔被引用」検索をして「遡及基準日」で足切りです。

冒頭で書いた通り「引用/被引用情報」って他人の知恵なので、
自分では思いつかなかった切り口が垣間見れて、
突破口になったりします。

キーワード探しに

これも「調査の手詰まり感」が出たときです。
自力で探せない公報って、割と「自分の知らない表現/知ってるけど思い浮かべることができていない表現」が使われていたりします。
なので・・・引用/被引用情報を入り口にして、キーワードを探すことがあります。(分類検索を入り口にして探すことも多いです)

自分では思い出せていない表現、ということは
機械的に取り出すのは多分難しい(少なくとも私はできないです・・・)ので「公報内容を確認しながら、目視で使える表現を探す」という感じに作業します。

分類候補を探す

キーワード探しと同様で「調査がちょっと手詰まりな時に、自力では見いだせなかった分類を探す」のに使います。

キーワード探しと違うのは「既知分類を引き算することで、ある程度までは機械的に探せる」点ですが、
結局のところ、使える分類と全然使えない分類が混在して出てきます・・・
実際にどの分類を使うか?は試行錯誤したり、作戦考えたりになります。

分類候補-群で見る

分類を探したい時は、たとえば・・・
「自社特許500件に対する、引用文献で挙がった公報1500件」
のような規模感で見ると、
少数の特許を起点にした時とは違った発見があります。

私が時々集計するのは
「特定企業(の特定事業)」× 近年 × 拒絶理由/拒絶査定あり
で集合を作って、引用情報1世代目を出力。
引用公報に付与されている分類のランキングをとる。という方法です。

通常
ランキング上位は「本件と同じような分類」が多めになり
ランキング下位は「たまたま1回だけ登場する分類」が多いので
割と無視していて 笑
「真ん中あたりで複数回登場する、ちょっと予想外の分類」を重視しています。先行技術調査に有用だったり、盲点となっていた技術の繋がりを把握できたりと、効果は色々で面白いです

海外の引用/被引用情報(CCD)Common Citation Document

ここまで「日本特許×商用データベース」を念頭において書いていたので
箸休め?で、海外の引用情報についても触れておきます。

海外特許の引用情報を調べるソース(情報源)も色々ありますが
個人的には
・普通に商用データベースで見るか
・Espacenetで見るか または
・引用データの大もと、CCD を使う  ・・・あたりを多く使います。

CCDというのは、各国での引用情報がパテントファミリー単位でまとまっているデータベースです。Espacenetの引用情報もCCDから取り込んでいる情報だったりします。

CCDで特徴的なのは、
・ファミリーに紐付いている引用情報をExcel形式で出力できるのと
・引用情報がタイムライン表示される(下記)です。

タイムライン表示が何に使えるか?というと、
正直、そこまで使える用途は見いだせてないのですが
面白いのでつい見てしまいます  笑

情報分析「技術的に影響が大きそうな特許」

重要特許というと、皆さんどんな特許を思い浮かべますか?
「技術的に重要」とか「経済的に重要」「社会的にインパクトがあった」とか、色々ありそうですよね。

どれも定量的に評価するのは難しい、と言われる事が多いですが・・・

「技術的に重要な特許出願」の指標を、あえて定量するなら
「被引用回数が多い≓後の技術に与えた影響が大きい」と言えるかもしれませんね。実際に情報分析の際、指標に使っていたりします。

情報分析「引用特許を集合で見ると?」

2007年のJAPIO Yearbook に掲載された
「日本特許における引用情報の有用性の検証および活用例」
10年以上前の論考ですが、考え方は現在でも使えます。

「重要特許の判別指標」こちらは2006年です。

たとえば「自社事業に影響の大きそうな特許群の推定」などは
上記論考を応用すると、すぐにでも試行できそうです。

審査官/調査機関の知恵が詰まった引用情報。
私も改めて活用を研究していきたくなりました。

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