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[知財塾]練習問題シリーズの種明かしと検索の難易度

こんにちは!特許調査の仕事をしてます、酒井といいます。
この記事では、今ちょうど中盤に差し掛かっている
「知財塾・先行技術調査ゼミ(2022)」の練習問題作成を例に
「調査の難易度が高いって、こんな事かも?」という話を書きます。

知財塾・先行技術調査ゼミでは 全12週にわたって演習をします。
練習問題は5題です。
最初の問題は4週、2題目以降は2週ずつで演習を進めていくので
スケジュールは下記のようになります。

(4週で1問) +(2週で4問)= 全12週で5問

上記のような「複数題で演習を進める」カリキュラムの場合
やっぱり定番は 「簡単 ⇒ 難しい」の順でシリーズを作る、というものです。
先行技術調査ゼミでも そのように作っていますが・・・

そもそも
先行技術調査って、どんな条件が揃うと
「簡単」あるいは「難しい」って事になるのでしょうか?

みなさんはクラウドファンディングのサイトに上がっているアイデアや
企業のプレスリリース、または知財関連のニュース等を見た時
直感的に「簡単に調べられそう」とか「ちょっと複雑そう」「調査の切り口が思いつかない」などの感想が思い浮かんだこと、ありますか。
その直感は、結構当たっているかもしれないし、
たまにはハズレているかもしれないです(笑)

ということで
現在(2022.5月末時点)、中盤の3問目に差し掛かっている
知財塾・先行技術調査ゼミの演習課題を例に
「調査の難易度」メモを書いてみたいと思います。

先行技術調査の難易度を決める条件はたくさんある

とはいえ、調査の難易度って割と複雑な要素で決まります。
この段落ではまず、難易度に影響する要素をたくさん挙げていきます。
最初に、下記は凡例です

易)構造が一目でわかりやすい技術  例:歯ブラシの形状
難)目視だけでは概要がわからない技術 例:ソフトウェア

・・・⇧ このような感じで 「簡単」「難しい」を組にして記述していきますね!
それではまいります。

易)出願人が限定される   例:自動車ならトヨタ、日産、ホンダ・・・
難)出願人の数が非常に多い 例:多数の企業+多くの個人発明家

易)定番の明細書表現・技術用語がある  例:空気を潤す「加湿機」
難)表現・言い方が定まっていない 例:初期のIoT関連出願

易)過去の特許出願件数がさほど多くない 
難)過去の特許出願件数が非常に多い(+出願自体が古くから存在)

易)ズバリの特許分類が設定されており、その分類を使えばOK 
難)特許分類が多岐にわたっている

易)ひとつ~少数の技術で成り立っている 
難)複合的な技術

易)調査のポイントが最初から明示されている 
難)調査ポイントの見極めが求められる
  (発明の要素が複数ある/自分で調査ポイントを設定する 等)

易)調査する人が技術(や過去からの流れ)を熟知している
難)なじみ・土地勘のない技術について調査を行う

もちろん他にもあるかもしれないのですが、
主な「難易度に影響する要素」はこんなところです。

ですが!

ホントはこれ、大半を2軸にまとめることができて・・・

「先行技術検索」に使うのは「キーワード」と「分類」

先行技術調査によく使う検索用項目は
だいたい「特許分類」か「キーワード」なので、
調査の難易度も 分類・キーワードがどの程度簡単に選べるか?で変わります。
単純化すると下記のようになります。

たとえば前項で「出願人(プレイヤー)の数」という項目がありましたが

易)出願人が限定される   例:自動車ならトヨタ、日産、ホンダ・・・
難)出願人の数が非常に多い 例:多数の企業+多くの個人発明家

こちらは主に「キーワード選定の難易度」に影響します。
プレイヤーが少ない場合、
明細書表現も特定の表現に集約される傾向にありそうですよね。
逆に
プレイヤーが多かったり、そこに多くの個人発明家が加わったりすると
明細書に使われる表現の種類自体がとても多くなって、
キーワード選定は難しくなります。

同様に次の項目も「キーワード選定の難易度」に影響していて

易)定番の明細書表現・技術用語がある  例:空気を潤す「加湿機」
難)表現・言い方が定まっていない 例:(過去の)IoT関連出願

たとえば「加湿機」に関連する公報は
単純に「加湿機+加湿器具」と検索するだけでも
かなりの公報を拾うことができます。(勿論、他の表現もありますよ😄)

これに対して、IoT関連の先行例を探す場合
「たぶん、Internet of Things とは明細書に書いていないけれど・・・」
「センサ × 機器 × データ × インターネット・・・?」
「いっその事『ユビキタス』でも検索してみる??」
なかなかキーワード選定が悩ましいです。😅

「知財塾・先行技術調査ゼミ」出題の種明かし(2022年分)

この記事の前半で

>「複数題で演習を進める」カリキュラムの場合
>やっぱり定番は 「簡単 ⇒ 難しい」の順でシリーズを作る、というものです。

という事を書いたのですが
この項目では
実際にどんな感じで例題の難易度調整を考えているか? を書きます。

基本形は先ほどの2軸で・・・

キーワードも分類も簡単に決まってしまう「難易度1」だと
今ひとつ練習にならないので、
基本的には 上記の表から 2→3→4 の順で問題を作っています。
ちなみに「お茶・コーヒー」「加湿機」などは難易度1です
(難易度は筆者の独断です😉)

演習問題1:歯ブラシ (難易度2)

電動ではなく「手磨き」に特化した出題をしてます。
※知財塾では実在の商品を例題にしているのですが、
 この記事では単に「手磨き用の歯ブラシ」として説明させて頂きますね。

歯ブラシの分野では、くっきり「手磨きの分類」「電動歯ブラシの分類」と分類表に明記されてはいないです。ですが、大まかに「手磨きはこちら」「電動はこちら」という住み分けがあります。
つまり・・・「分類表の説明文だけ見ると どちらが適切な分類か?が一見わからない」けど「実際に検索して、結果をサンプリングしてみたら『手磨き』『電動』が割とハッキリする」という感じです。
ということで、分類選択は「割と簡単」に分類しました。

キーワードには2つポイントがあって
1)「歯ブラシ」→ 普通に「歯ブラシ」と検索する他に
誰でも知ってる表現でありながら・・・「え?それ検索に使うの?」という表現があるんです。正確に統計等は取ってないですが、「たぶん、大企業よりも個人発明家が使いそうかな」という表現です。
頭を柔らかくして探せるといいですよね! というポイント1です。

キーワードでもうひとつ。
2)「音が出る機構」
単純に 音×歯ブラシ で検索すると、その結果は電動歯ブラシ方面に傾きやすいんです。
今回は手磨きブラシを探したいので、「電動歯ブラシ化」を防ぐためには
①「手磨き系の分類」をちゃんと選んでおいて
②「音が出る」系のキーワードを充実させる
という作戦をとるとスムーズなんですが
さて、「音が出る系」の表現をどうやって探すのか・・・? がポイント2です。


ちょっと長くなってきたので、2記事に分けますね!
次回は「スニーカー」「テイクアウト容器」についてポイントを書きます。

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