見出し画像

調査でよくある「コスト」の話

こんにちは! 特許調査の仕事をしてます、酒井と申します。今日は「調査範囲を広げることと費用対効果」について書きます。

今日は調査打合せがあったのですが
その中で「広めの調査範囲と、依頼者の事業分野に絞った調査範囲」を比較する話題になりました。そして
「弊社の事業分野に絞った調査の場合、安全度はどの程度(何パーセント)ですか?」とお尋ねがありました。

多分これ、多くの方が気になる部分だと思います。
ですが、安全度をパーセンテージで答える事は非常に難しい、というのか
多分正確な答えはないだろう、という点についても
知財業務に携わっている方、みなさん頷いてくださるとも思います。

質問を下さった方は開発部門の方だったので・・・
きっと「正確な答えはない」という先入観もなくて、疑問点を素直に口にして下さったんじゃないかな?と感じました。

単に「正確な答えは誰も持っていませんよ」とお答えしたのでは
はぐらかしたようになってしまうだろうな・・・、とも思って
次のようなご説明をしました。

対象技術(例)

※打合せの内容とは異なります。念のため!

この記事では、侵害予防調査を念頭において説明します。
■依頼者の事業分野に絞った調査範囲
に相当するのは

レシートをスキャナで読み取って文字認識し、金額入力を行うとともに
レシートの店名や品目等の情報から自動的に勘定科目の仕訳を行うもの。

として説明します。
こちらが依頼者が実際に開発・実施しようとしている内容です。

たとえば、駅での領収書には「鉄道会社名」「〇〇駅発行」と印字されている物が多いです。これを文字認識した後、「鉄道会社名や駅名が入っているから、交通費に分類する」といった技術だとします。

次に
■広めの調査範囲

レシートをスキャナで読み取って文字認識するもの全般。

とします。
今日の打合せでも「自社事業ドメインだけを調査したら100%安全と言えるのか?文字認識全般を広く見た方が安全ではないか」・・・といった質問がありました。

調査の安全性は「相対的」&「費用対効果」

冒頭の
「弊社の事業分野に絞った調査の場合、安全度はどの程度(何パーセント)ですか?」
というお尋ねについては

まず
「どんな調査でも100%安全(侵害のおそれなし)というのはないです」
という前提をお話ししました。

次に、下図のような内容をご説明しました。
始めにお断りしておくと、カバー率の「85%」「97.5%」という数字も
イメージを掴んで頂くためのものです。
数字の絶対値には意味はない、とお考え下さいね!
さて・・・

事業分野に絞った調査で、300件規模の母集団が得られたとします。
また、事業分野に絞っても実施予定内容に近い構成の特許は概ねカバーされる、と考えて、そのカバー率(安全度)を仮に85%、とします。

次に「安全を考えてもっと広い調査をしよう」と考えたとしましょう。
このとき、母集団規模は10倍の3000件になりました。
カバー率100%にはならないので、こちらも仮に97.5%、とします。

すると・・・
調査範囲を広げて10倍に(おそらく調査費用も10倍近くに)なるけれど
カバー率の上昇は12.5%程度、という事になります。

どちらも(仮)の数字ではあるのですが
ここでお伝えしたいのは
「安全性を考慮して広い範囲を見る事はできるけれど、
 調査としての効果だけを見ると、相対的に費用対効果は低下していく
ということです。
これは、多くの調査に当てはまるのではないか?と思っています。

調査範囲の選択

ということで、
調査範囲の選択は、リスク対策にいくら費用をかけるか?
別のものに例えると「お手軽な保険を掛けるか?高額な保険を選ぶか?」という感じになるのだと思います。

そして、自分が出会った範囲に限っていえば
調査範囲の選択には業種差も大きいし、企業のポリシーも反映されます。

コスパ重視で安ければいい、とか、安全重視で費用に糸目をつけるべきではない、とか、一律に「どちらが優れている」という話ではないですよね。

そして・・・繰り返しになりますが
調査範囲の選択は企業のポリシーと深く関連する部分です。
ごくごく稀に「調査会社で決めてください」と丸投げを試みる方もいらっしゃるのですが・・・多分、調査の外枠って調査会社が決めて良いものではないです。(自分の手綱は自分で持った方がいいです!)

もしも、自社に向いている調査が「コスト重視」か「安全重視」、どちらなのかわからない場合は、無理に安全重視をする必要もないかな、と思います。最初は自社事業に影響の大きい範囲に絞って調査、その後社内でご相談されて、広めの調査範囲を追加する、という方法もアリですよ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?