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「おひとりさま」の新しい社会保障 ~「骨太の方針」への提言~

この季節、与党自民党の国会議員は、自分たちが議論している政策を「骨太の方針」に反映させるため、それぞれのテーマにおいて政府への提言の取りまとめ作業が佳境に入ります。
骨太の方針とは、政府がまとめるもので、政府が力を入れていくことが盛り込まれています。つまり、ここに自分たちの提言した政策が盛り込まれると、政府の方針として予算が付き、実際に施策が進むことになります。そのため、我々にとって政策的に大事な節目となるのがこの時期なのです。

■ 「おひとりさま問題」の言いだしっぺ

党内の議連、調査会や様々なPTでまとめた提言を担当部会との合同会議で了承を取り付けると、次に党の政務調査会のもとで行われる政調審議会で審査をし、党の提言として政府に提出できるお墨付きをもらえれば、行政府である総理や担当大臣に提出するという段取りを踏みます。
私がPT座長を務める「幸齢社会実現PT」では、5/22に提言を総理に出しました。と言うのも、この施策は私が昨年5月の衆議院予算委員会での総理質疑から動き出したからです。

■ 「新しい社会保障」

「身寄りのない独居者にかかわる課題」に対する今回の提言は、「新しい社会保障」が必要だと概観するところから始まります。
今までの社会保障の考え方は、サービスを「受ける」と「提供する」の範囲が明確でした。そのため、その両者間の「すき間」は家族がボランティアで担うことが当然のこととして制度が想定されていました。
しかし、今までの制度の前提条件とされてきた「家族」の在り方が変化し、必要とされている支援が提供できない事案が多くなってきています。結果、「たまたま近くにいる人」がボランティアとしてお世話をすることを強要される事態が問題となってきているのです。
この家族の変化に合わせて、これからはサービスを受ける人が、場面が変われば提供する側にも回るという社会保障の在り方が求められると提言では指摘しました。
そしてこれらの問題は高齢者のみならず、若い世代でも構図は一緒です。
また、これまでは死後のことばかりが取り沙汰されていましたが、それに加えて、今や認知症をはじめ意思を伝達できない場合など、生前も問題になっています(特に入院時)。意思決定支援が特に重要で、周囲の手助けでは労力のかかる部門でもあります。
この課題はすそ野が大変広く、それ故、いくつもの省庁と制度が関係しているため、問題が顕在化していても、どこも動けなかったのです。

■ 社会的負担を軽減するために

今回の提言で苦労した一つは、多岐にわたる分野をどのように整理するかということでした。結果として、①ビジネスの分野で進めていくもの ②行政が進めていくもの ③新しい取り組みや制度が求められるもの の3つに分けることにしました。

①ビジネスの分野
例えば、高齢者等終身サポート事業者(旧・身元保証事業者)は、「おひとりさま」の課題の多くを死後の対応も含めて任せられるので、金銭的に一定程度余裕がある方には望まれる選択肢ではあります。しかしイニシャルコストが200万円程度かかり、日常支援にもそれぞれ時給などの費用がかかることや、何より安心して任せられる事業者かどうかの見極めが難しいことが指摘されています。
今回、これら事業者へのガイドラインを作り、パブリックコメントにもかけましたので、これからこのガイドラインが守られるよう、実際に有効性を担保できる運用が求められます。
また、死後の対応も含めた商品が生命保険に登場しています。信託会社を間に入れて、死亡保険金で信託会社が葬儀や納骨などを行い、残金は本人の希望に合わせ寄付などをすることになっています。金融商品であれば、様々な組み立て方ができるので、現実に即した商品を期待できると思います。

②行政の役割
これに関してはいくつも指摘しましたが、特に重要なのは、関係者の連携のハブになることと、いざという時の前の「平常時」に行うべき準備の大切さを知らしめるという啓蒙を行うこととしました。
家族であれば当然知っているであろう出身地や親せきの有無や所在先などの情報を、他人(サポートする事業者、医療機関等)が手に入れるには大変な手間がかかります。これらの点がわかるだけでも、その後の作業量とスピードが大きく変わります。実際、横須賀市ではこの取り組みが行われています。
社会全体の負担を軽減するのが大切なポイントです。

③新しい取り組みや制度
隣近所、サークルの仲間など、何らかの地域におけるグループや仲間に、今まで家族が担っていた役割を分担してもらえないかという発想を入れました。これは今までにない形です。
また、データ登録プラットフォームなどを備えることや介護保険と連携できる部分はないのかといったことも検討すべきとしました。
いずれにしても、これらのサービスを行政が提供しようとしたら、見当がつかないくらいの膨大な予算とマンパワーが必要になります。社会課題の解決に「ウルトラC」はありません。一人ひとりが少しずつ社会的負担を減らすよう努力していくこと、これが何より必要だと今は考えています。

総理への提言はこちらからもご覧になれます→身寄りない独居者等を支える『新しい社会保障』にむけて

24年『時報紙 6月号 NO251-1』はこちらから。

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