絶対せんで良い質問

今年の2月中旬、沖縄花月の出番をいただいた時の事。

朝、難波からバスに乗り、伊丹空港に向かいました。

空港に到着してすぐに、手荷物検査所へ。

一泊ということもあり、僕の荷物は少し大きめのリュックのみ。

漫才衣装のスーツ、革靴などもまとめてそこに入れていました。

検査所の列。

並んでいる間に、想い当たる金属類を全て頭に浮かべました。

自分の番。

僕は素早く、リュックから金属類を取り出し、コンベアに流すトレイの中へ。もちろん身に付けていたベルトなども。

自信がありました。

僕の体は、難無く検査所のセンサーを通過。

正直余裕。

あとはリュックとトレイに分けた金属類が、コンベアを流れて来るのを待つだけ。

コンベアの布から彼らが顔を出すのを、歩きたての幼児を迎え入れる父のごとくスタンバイ。

そこに検査所職員さんが僕のリュックを抱えて、足早に近づいて来ました。

「こちらはあなたのお荷物ですか?」

「はい」

「ライターが4つ入ってます」

恥ず過ぎる。

「ライターが4つ?」

「はい。このリュックの中にライターが4つ入ってます」

しっかりもっかい言われた恥ず過ぎる。

「そんな入ってます?」

「はい。モニターで確認しました」

「まじですか??」

僕はタバコを吸うので、常にジッポライターを1つ、ズボンのポケットに入れています。

それとは別に、オイルが切れた時用に、100円ライターを1つ、いつも使う鞄に、入れるようにはしてるのですが、


4つ???


「出してもらっていいですか?」

「いや、、4つも入ってますかね?(笑)」

「(無言)」

にわかに信じ難かったのですが、職員さんの覇気に押され、人がごった返す検査所で、僕は荷物をひっくり返しました。

まあ、出るわ出るわ。

けっこうすんなり、3つ見つかりました。

いつも使う鞄なので、前に入れたのを忘れて、どんどんライター継ぎ足していっちゃってたみたいね、私ったら。

容易に3つ見つけれた事で、恥ずかしいなりにも、まだ上記の口調のような余裕がありました。

その後、数分リュックを漁るも、4つ目がなかなか出て来ません。

「4つですか?」

「4つです」

職員さんに一点の曇りなし。

「4つ」という言葉にこれほどの圧力を感じた人類が、かつて居たのだろうか?

そんなことを思いながら、リュックを漁る僕。

検査所を通過していく人々が、刺すような視線を自分に向けているような気に陥ります。

羞恥心と焦燥感が溢れ、こんな気持ちが膨らんで来ました。


何があかんねん


ライター4つ持ってて、何があかんねん


すいません、完全に逆ギレです。

細かいルール把握してない僕でも、ニュアンスで分かります。


飛行機乗る時、ライター4つ持ってるやつきしょい


ニュアンスでですが、あかん事はめっちゃ分かります。

でも4つ目が出てこないんです。

どうしても出てこないんです。

慣れない場所でのライター探しという、感じた事のないストレス。

精神崩壊寸前。

自分の保身の為だけに、絶対せんで良い質問をしようとしました。


ライター4つでハイジャック出来るんすか?


そう言おうとした寸前、鞄の底の、整髪料とか入れてるスペースに入り込んで居た4つ目がこんにちは。

「飛行機への持ち込みは1つになります」

ポケットに入れていたジッポライターを選択。

4つ全てに、伊丹でシーユーレイターならぬシーユーライターを決め、僕は沖縄に飛び立ちました。

え?

シーユーレイターならぬシーユーライターが気になる?

何があかんねん

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