泥棒退治、の夢(2022.2.5)

 夜。ビルの窓から、唐草模様の風呂敷を背負った、あからさまにそれと分かる泥棒が、周囲を見回しながら出てきた。
 そいつとは以前にも偶然、鉢合わせたことがあり、そのときは逃げられてしまった。ここで会ったが百年目、である。
 泥棒が降りてくる階段の陰で待ち伏せて、殴り倒す。
 ビルの駐車場で車の外に立ってタバコを吸っている男性がいたので、警察に通報してもらいたいと頼んだ。自分の携帯電話は手元に無かったので。夢の中の僕は、電話を携帯するのを忘れがちである。
 男性は驚いたような、困ったような、面倒臭そうな顔をした。僕の頼みに応じて携帯電話を取り出したりはせず、車の窓をコンコンとノックした。そして、タバコを地面に捨て、踏みつけた。
 車のドアが開き、もうひとり男が出てきた。僕が引きずってきた泥棒を見て「ヘマしやがって」というようなことをぼそりと言った。
 こいつら、泥棒の仲間だったのだ。
 ふたりがかりで僕に向かってきたので、あっさりとやられてしまった。どこぞに連れていくつもりのようだ。
 ふたりが車の両側に離れたところを、ひとりずつぶちのめしてやった。
 動きが鈍くなった三人を駐車場の真ん中の広がりにまとめて、たまたまそこにあったパイプ椅子を奴らの上に山盛りにして、その上から散々に踏みつけた。しかし、プロレスの試合じゃないのだから、何も気を遣うことはない。盛っていた椅子を除けて、一脚だけ手に持ち、直接殴打することにした。
 パイプ椅子の金属の部分が当たるように幾度も振り下ろしていると、まるでトムとジェリーのアニメのように、泥棒どもの体が薄っぺらくなってきた。終いには、舗装されていない地面にめり込んで表面がなめらかになり、さながら伝統工芸品、象嵌細工のようになった。
 そこへ一台の車が入ってきた。年配の女性が運転している。彼女に警察への通報を頼むことにした。
 おばちゃんは電話を取り出すと、まず自分の息子にかけた。「なんだか大変なのようんぬんかんぬん」と長くなりそうなので中断させて、警察へ、と、つい声を荒げてしまった。

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