透明な物質、の夢(2022.10.20)
昭和初期という雰囲気の、お屋敷。
裕福な家なのだろう。使用人が何人も、忙しく働いている。僕はそこのお坊ちゃまというわけだ。
親と上の兄たちがみな出掛けて、いなかった。慌ただしいとすら感じるほど動き回っている使用人の邪魔をするのも悪いので、遊び相手がいない退屈を持て余していた。
遊び相手もいないが、それは同時に叱る相手もいないということなので、屋敷の中でも普段は入らないような部屋に入ってみた。
棚に皿が積み重ねてあるのを見つけた。
よく見てみると、皿と皿が密着しておらず、隙間があいている。皿が浮いて見えたので、どういう仕掛けかと不思議に思い、触ってみた。浮かんでいるのなら指でつつけば、ゆらゆら揺れるのではと予想したのだが、固定されているように、動かなかった。
積んである皿を何枚か取り出してみると、浮いて見えた理由が分かった。何か透明な物質で、皿のすり切り一杯まで満たされていたのだ。見た目は水のようだが、押してもへこまない固体だった。浮かんで重なっていたのではなく、透明な物質の上に皿が積んであったのだ。
ガラスとも違う質感だった。氷とも違う。透明度が高い。水を常温のまま固めたような感じがする。物質の正体について、僕には何のアイデアも無かった。
ひっくり返しても、皿にぴったりくっついて、落ちてはこない。
いろいろな角度から謎の物質を観察しているところに、来客があった。
この部屋からは少し離れている玄関で、男性の声が聞こえた。僕もそちらに向かったが、使用人の誰かが応対するだろうと、特に急ぎもせず歩いていった。
ところが、もう一度、男性がさっきより大きい声で呼びかけるのが聞こえた。そういえば、屋敷の中が静かだ。いつの間にか僕以外、誰もいなくなっていた。
僕が玄関に着く前に、女性の声で、いませんね、と聞こえた。
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