試合前、の夢(2022.2.14)

 庭。自宅のではない、どこかの庭。
 雪はない。現実の北海道では、真冬にこれほど草ぼうぼうの庭などあり得ないのだが、この季節感の無さこそ、まさに夢。
 ピンク色の、タンポポによく似た花を見付け、しばし観察していたが、それほど暇ではないので作業にかかる。自分の庭ではないが、なぜか僕が草むしりをしなければならない。
 とりあえず、今回はここからここまでの草をむしろう、と心の中で線を引いて、取り掛かる。
 草を一握り、腰を入れて引き抜く。草の影に隠れていた小虫が、わーっと逃げていく。逃げ込んだところの草もまた引き抜かれて、また逃げる。
 やろうと思った範囲の草を、だいたいはむしったので、ひとまず終了として、庭に隣接するビルに入った。
 ビルの入り口で、ふたりのプロレスラーに会った。実は僕もプロレスラーで、彼らとは顔見知り、というか、今日の試合で対戦する相手だった。相手は先輩なので、こちらから挨拶をすると、ひとりは励ましの言葉、ひとりはからかい半分「負けねえからな」と笑いながら。当然、新人の自分が勝てるような相手ではない。
 自分の部屋に戻ると、同じ団体のレスラー仲間が何人か雑談をしていた。最近うちの団体を退団した選手のファンから、嫌がらせを受けたとぼやいていた。そんなことをするファンが付いている選手が退団したことは、団体にとっては良かったかもしれないと、僕は思った。
 急いで支度をして、先輩と一緒に試合会場に向かったのだが、忘れ物をしたことに気付いて、「早くしろよ」などの声を背に受けながら、部屋に走って戻る。
 部屋では掃除のおばちゃん(以前の勤め先にいた人)が掃除機をかけていた。何しに戻ってきた、という顔で見られながら、なぜか僕は一旦、全裸になり、着替え直した。
 靴下が、いまにも穴が開きそうな使い古しのものしかなかった。時間もないので探すのはほどほどに、仕方なく一番マシなものを選んで履いて、試合会場に戻った。

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