お肉屋さん

ちょうどいい悪夢を人は好むから
私は自分の体を小分けにして売ることにした

今日は親指一本
今日は太ももを一切れ
今日は舌を一つ
今日は乳首を一つ
明日のお客さんには耳を一つあげようか

小さく小さく切り分けた私を
みんなは嬉しそうに食べてくれた

ある日私の体全部がほしいって人がきた
綺麗なお姉さんだった
私は喜んで全てを差し出した

お姉さんはゆっくり私を食べた
足の親指をかじったと思ったら太ももをかじった
おっぱいをかじったと思ったら二の腕をかじった
ほっぺを完食してくれるかなと思ったらお尻に目移りした

そうやってゆっくりゆっくり味わって
最後に目玉を舌で転がし溶かしてくれた

お姉さんの胃袋の中で
私はゆっくり消化され
お姉さんと一緒になれた

私のことを消化したお姉さんは
幸せそうに苦しみながら死んだ
腐乱するお姉さんの体はアスファルトの上にどろどろに溶け出して
お腹の中を探検していたぬるぬるの私の残りも一緒になって飛び出した
そうして二人でぐしょぐしょのびちゃびちゃに混ざり合った
これでほんとにひとつになれた
ほんとのほんとに一緒になった

とろとろに溶け出した私たちを干してみた
すっかり乾いて固まったから縫い合わせてみた
危なっかしいところはしっかり炙ってくっつけた

私たちはお肉屋さんを再開した
私とお姉さんがひとつになった悪夢は今までよりちょっとだけ強いから
明日からのお客さんは
関節二つ分にしておかないとね

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?