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PAIN

こちらも四年前の作品です。
さっき投稿した『Anti christ』の原型です。
主人公の行きつく先は同じですが、内容はかなり違いますのでよかったらよんでくださいな。
さっきと同じくPDFファイルとテキスト両方で読めるようにしてあります。




PAIN
 
霧島 はるか


【キャラクター】
・篠田文哉(23) 男 写真家を目指す

・桃香(23) 女 文哉の彼女看護師

・麻央(30) 女 文哉の元カノ

・瑞穂(17) 女 文哉の元カノ

・篠田よう子(28) 女 篠田の母親

・ナナツメ(20代) 女 篠田の夢の中の在

・FEAR(10代前半) 女 篠田の夢の中の存在

・PAIN(30代) 男 篠田の夢の中の存在

・POWER(30代) 男 篠田の夢の中の存在


【ログライン】
過去にトラウマを持つ主人公の文哉は、些細なことで過去のトラウマに悩まされる日々を送っている。そんな文哉が見た、一夜の悪夢。



1暗闇
真っ暗な空間。
水の中でもがく音が聞こえてくる。

2文哉のアパート 朝
カーテンの隙間から、強烈な日差しが入り込んでいる。

3教会 夕方 晴れ
マリア像が立っている。
マリアは一点を見つめ続けている。

4文哉のアパート 昼 晴れ
カーテンの隙間から、強烈な日差しが入り込んでいる。

5公園 屋根付きベンチ 夕方 晴れ
屋根の梁のところに、ベルトが輪を作ってぶら下がっている。

6文哉のアパート 夕方 晴れ
カーテンの隙間から、強烈な日差しが入り込んでいる。

7港 夕方 晴れ
うだるようなオレンジに照らされた海。
吐き気を催すほどうるさい蝉の声。

8文哉のアパート 夕方 晴れ
カーテンの隙間から、強烈な日差しが入り込んでいる。

9篠田家 寝室 昼
ベッドによう子(29)が座っている。
こちらに背を向けている。
赤ん坊の泣き声がする。
姿は見えないが、よう子が赤ん坊をあやしているようだ。
よう子がゆっくりとこちらを振り向く。
よう子の両目は包帯でふさがれ、両目の位置から血がにじみ出している。
両目の間あたりに、目が一つ描かれている。
ナナツメ 「起きて」
  どこからか、ナナツメ(20代)の囁き声がする。

10文哉のアパート 夜 晴れ
文哉(23)がベッドで寝ている。
文哉の耳元で何か囁くナナツメ。
ナナツメの右頬には目が三つ、左頬には目が四つ描かれている。
描かれた目は全て違う方向を見つめている。
文哉が急に目を開ける。

11タイトルイン

12商店街 夜 晴れ
様々な人で賑わう商店街。
立ち並ぶ店は皆ハロウィン仕様で、盛り上がっている。
店先に並ぶジャックオランタン。
つるされた可愛らしい魔女や蝙蝠。

13住宅街 夜 晴れ
小面のような白い仮面をかぶり、魔女のような服装をしたFEAR(10代前半)がジャックオランタンを持ちながら歩いている。
仮面の目の位置には包帯が巻かれ、両目の間あたりに目が一つ描かれている
楽しそうに腕を振っている。
路上には枯れた草。電柱に、「目ヲ背ケルナ」という落書きがある。

14文哉のアパート 洗面所 夜 晴れ
排水溝に水が流れ続けている。
文哉が顔を洗っている。
文哉、顔を洗い終え鏡を見る。
上半身裸の文哉。へそのあたりに、『Everything,s not lost』と、右腕には『WITH PAIN』とタトゥーが入っている。
じっと鏡を見つめる文哉。
文哉、洗面台の脇に置いてあった煙草を手にとる。
残り僅かな煙草の一本を手に取り、火をつける。
そこへ、玄関の扉をたたく音が聞こえてくる。
文哉、洗面所を出る。

15同 玄関 夜 晴れ
玄関にやってくる文哉。
文哉 「お帰り~」
と、扉を開けるが、そこには誰もいない。

16同 玄関前 夜 晴れ
文哉、外に出て扉の裏を確認するも誰もいない。

17同 玄関 夜 晴れ
中に戻る文哉。
すると今度は、部屋の方から窓をたたく音が聞こえてくる。
文哉、少し驚く。
ゆっくりと部屋の方に向かう。

18同 部屋 夜 晴れ
文哉が部屋にやってくる。
六畳の狭い部屋。
壁にはカート・コバーン、シド・ヴィシャス、Slipknotのポスター。
本棚から溢れかえる大量の本、CD。
文哉が窓のカーテンを勢いよく開ける。
外には誰もいない。
窓に反射した自分の姿を見つめる文哉。
窓を開け、外を確認する文哉。
外にはやはり誰もいない。
すると、またドアをたたく音が聞こえる。
文哉、玄関に向かう。

19同 玄関 夜 晴れ
玄関に来る文哉。
ドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開ける。
桃香 「わっっ!!!」
扉の隙間から、急に顔を出してくる桃香(23)。
驚く文哉。
桃香、笑いながら扉を開く。
桃香 「いえーい」
文哉 「おい~」
文哉、そう言いながら桃香の両頬を軽く引っ張る。
桃香 「びっくりした?」
文哉 「うんこ漏らしたわ」
桃香 「いえーい」
文哉 「いえーいじゃねえわ(笑)」
桃香 「ただいま」
文哉 「おか。早かったね」
桃香 「早く上がれた!てか風邪ひくよ」
文哉 「うん。糞寒い」
二人は、扉を閉め部屋に向かう。

20同 部屋 夜 晴れ
部屋に入る文哉と桃香。
文哉、椅子に掛けてあった服を手に取り、着ながら
文哉 「ちょっと煙草買ってくるわ」
桃香 「今から?」
文哉 「うん」
桃香 「ラインしてくれたらよかったのに」
文哉 「今起きたんだよね」
桃香、呆れながらも少し怒ったように
桃香 「はあ?」
文哉 「ごめんごめん」
桃香 「ほんとにさあ」
文哉 「申し訳ね」
桃香 「うう!」
と言いながら文哉を軽くパンチする桃香。
文哉 「いたっ!ごめんごめん。でも今日はなんもなかったから」
桃香 「そういう問題じゃないわ」
そう言いながらもう一度文哉に軽くパンチする桃香。
文哉 「すまんすまん」
桃香 「ほんと、罰としてチーズケーキ買ってきて」
文哉 「了解しました!」
とおどけた様子で敬礼する文哉。

21住宅街 夜 晴れ
家に囲まれた細い小道。
道の先は真っ暗で何も見えない。
文哉が住宅街を歩いている。
耳に付けたイヤホンからはシャカシャカと音が漏れている。
道端に男(50代)が立っている。
男はプラカードを持っている。
プラカードには、『Don't look away』の文字。
文哉、男に気づき、少し視線をやるが、そのまま通り過ぎる。
すると、どこかから囁き声が聞こえてくる。
文哉、少し驚いたように足を止める。
イヤホンを外し、周りを見る文哉。
後ろを振り返ると、先ほどの男はいなくなっている。
ふと、右側に真っ暗な小道があることに気づく文哉。
道の先は真っ暗で見えない。
誰かの囁き声が聞こえてくる。
同時に、水の中でもがく音も聞こえてくる。
小道に向かって歩き始める文哉。
×××
歩く文哉。
少し明るい道に出る文哉。
道に並走する形で建てられた壁には、様々な落書きがしてある。
文哉、ふと足を止め、どこかを見つめる。
文哉の視線の先には、真っ暗な公園のような場所の入り口。
入り口の先は暗くて何も見えない。
文哉、入り口に向かって歩き出す。
文哉の背後の壁には『一切ノ希望ハ捨テヨ。汝ラ、我ヲクグル者』と落書きがされている。

22公園 道 夜 晴れ
木々に囲まれた道を歩く文哉。
一人の男(40代)が前方を歩いている。
歩く文哉。
前方に、更に二人の女(20代)が歩いているのが見える。
歩く文哉。
更に前方に、夫婦と思われる男女(30代)が歩いている。
前方に広場が見える。

23公園 広場 夜 晴れ
  広場の真ん中あたりに、人が集まっているのが見える。
そちらに向かって歩き始める文哉。
街灯のそばでふと足を止める文哉。
街灯の足元に、男がもたれかかりぐったりとしている。
男は顔を黒い布で覆っている。
黒い布には、目が五つ描かれている。
文哉、しばらく男を見ていたが、再び人ごみの方へ歩き出す。
文哉、人ごみに近づく。
先ほど前を歩いていた男女が列を作って何かを待っている。
列の先には、FEARが立っている。
FEARの両脇には、PAIN(30代)とPOWER(30代)が立っている。
二人ともスーツを着て、顔は白い布に覆われている。
布の真ん中には、目が一つ描かれている。
文哉、FEARのそばまで歩いていく。
FEARの前で、先ほどの夫婦がひざまずいている。
FEAR 「トリックオアトリート」
そう言い、手を差し出すFEAR。
FEARの手には、ジャックオランタンをかたどったバケツが握られている。
ジャックオランタンの両目は包帯でふさがれ、両目の間あたりに目が一つ描かれている。
ジャックオランタンを持つFEARの腕には、『FEAR』とタトゥーが入っている。
夫婦の女の方が、ゆっくりと自分の両目に手を持っていく。
女が指を両目に突っ込む。
女が悲鳴を上げる。
じっと見つめる文哉。
女、うなり声を上げながら、両目をえぐり出す。
地面に滴る女の血。
えぐり出した両目をジャックオランタンのバケツの中に入れる女。
バケツの中には、いくつもの目が入っている。
PAINが女の元に駆け付け、両目に包帯を巻く。
包帯の両目の位置には目が一つ描かれている。
今度はPOWWERが女の元にやってくる。
POWWERは、目玉を持っている。
女の口に目玉を入れるPOWWER。
目玉を飲み込む女。
立ち上がり、夫を見る女。
FEAR、彼女の夫である男にジャックオランタンを差し出しながら、
FEAR 「トリックオアトリート」
男、ゆっくりと両手を目に持っていく。
男の両手は震えている。
男、両目まで手を持ってきたが、怖くなり、手を下ろす。
何かを懇願するようにFEARを見つめる男。
FEAR、じっと男を見つめる。
POWWERが男の顔に黒い布をかけて、押さえつける。
布には四つの目が描かれていて、みな違った方向を見つめている。
PAINがやってきて、男の首を掻き切る。
並んでいた人々から悲鳴が上がる。
文哉、少し呼吸が荒くなる。
女は男をじっと見つめている。
FEARが文哉を見る。
文哉、後ずさりする。
ふと、近くにある街灯に気づく文哉。
街灯の足元には、両目を包帯で目隠ししたよう子がひざまずいている。
よう子の両目の位置からは血が滲み、両目の間くらいに目が一つ描かれている。
よう子、街灯の光を見上げながら何かを囁き続けている。
よう子が文哉に気づき、文哉を見つめる。
文哉、呼吸が荒くなる。
いつの間にか、文哉の後ろにFEARが立っている。
FEARが文哉の顔を黒い布で覆う。

24港 夕方 晴れ
うだるようなオレンジに照らされた海。
吐き気を催すような蝉の鳴き声。
文哉、急に目を開ける。
文哉、周りを見渡す。
自分が堤防に腰掛けてことに気づく文哉。
文哉、堤防の下に二人の男女がいることに気づく。
文哉、二人を見る。
驚く文哉。
堤防の下には、学生服を着た文哉と、学生服を着た瑞穂(17)が座っている。
二人の手元にはジェンガが積み上げられている。
二人は楽しそうに、強力しあいながらジェンガを積んでいる。
堤防に座る文哉、呼吸が荒くなる。
堤防に座る文哉 「違う」
二人は楽しそうにジェンガを積んでいる。
堤防に座る文哉 「違う」
最後のひとつのジェンガを積み終わる学生服の文哉。
瑞穂、嬉しそうに笑う。
文哉も嬉しそうに笑っていたが、ふと何かに気づいたように海を見つめる。
汚い海。
波に揺られる汚い泡。
文哉、急にジェンガを見て、思い切りジェンガを蹴り飛ばす。
勢いよく散らばるジェンガ。
呆然とする瑞穂。
堤防に座る文哉 「違う」
いつの間にか堤防に座る文哉の横に、瑞穂が座っている。
瑞穂、無表情に文哉を見つめながら
瑞穂 「理由くらいは」
文哉 「違う、俺だって……」
文哉、言い切らないうちにふと海の方に気を取られる。
海を見つめ続ける文哉。
汚い海。
波に揺られる汚い泡。

25公園 夕方 晴れ
暖かい夕日に照らされて公園。
屋根付きのベンチがある。
屋根の梁のところに、ベルトが輪を作ってぶら下げてある。
ベルトの前で呆然と座り込んでいる文哉。
文哉の後ろにナナツメが現れる。
文哉を後ろから抱きしめるリリス。
ナナツメが文哉の耳元で何か囁く。
安堵したように笑う文哉。
屋根の梁にはベルトが輪を作ってぶら下げてある。

26公園の駐車場 夜 晴れ
人気のない駐車場。
コンパクトカーがとまっている。

27同 車内
カーナビの上に、片目が飛び出したゾンビのマスコットが置かれている。
文哉と麻央(30)がキスをしている。
麻央、文哉の首筋にキスをし始める。
麻央の頭をなでる文哉。
麻央、文哉から離れ、文哉を見つめる。
麻央、微笑む。
麻央の喉が動く。
麻央、口を開け舌を出す。
麻央の舌の上には目玉が載っている。
目を見開く文哉。

28草原 朝 晴れ
文哉がひざまずいている。
文哉の目の前に、桃香が立っている。
桃香の喉が動く。
文哉の呼吸が荒くなる。

29文哉のアパート 部屋 夜 晴れ
ベッドで寝ている文哉、いきなり目を開ける。
換気扇の不快な音が鳴り響いている。
起き上がり隣を見ると、桃香が寝ている。
文哉、桃香を見つめる。
文哉、キッチンの方に目をやる。
キッチンの電気と換気扇がつけっぱなしになっている。
文哉、だるそうに枕もとの煙草を手に取る。
最後の一本を抜き出し、火をつける。
キッチンに向かおうと立ち上がりキッチンの方を見る文哉。
文哉の動きがとまる。
いつの間にかキッチンにナナツメが立っている。
ナナツメ、文哉を見て少しほほ笑む。
ナナツメ、右手の親指で、左手首を切るジェスチャーをする。
安堵したような表情をする大河


END

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