産後に骨盤が開いたままになる理由のひとつは内腹斜筋?

産後に骨盤が開く理由はリラキシンの影響と言われています。ですが、内腹斜筋が影響するのではないか?という文献を見つけたので考察してみます。

骨盤は年齢とともに開大していく

"年齢の上昇とともに相対的に上前腸骨棘間距離が開大していく傾向にあった。"という結果が出ている研究があります。

内腹斜筋が影響しているという考察

研究の考察の中で、"開大していくのは内外腹斜筋の影響、特に内腹斜筋の影響が考えられる"とあります。
その理由は内腹斜筋の走行が上前腸骨棘間距離の開大を抑制する走行で、安定性への関与があるからです。

ここまでで言えば、解剖学的に影響しているだけで年齢は関係ないように思えます。ですが、この内腹斜筋の厚さが若年群よりも高齢群の方が有意に減少するという研究があります。

つまり、年齢とともに骨盤が開大していくのは内腹斜筋が衰えていくからということです。なので、内腹斜筋の機能がしっかり働いていていれば、骨盤は開きにくいということになります。

出産を介して、この内腹斜筋が疲労していれば、圧力がかかりづらくなり骨盤の開大がますのではないかと考えられます。

産後の骨盤が開くのを抑制するために

そのためには基本的には疲労を改善するのが1番だと考えています。内腹斜筋はもちろんのこと、恥骨に付着する筋、骨盤周りの筋肉の疲労の改善が大切です。その後にトレーニングがとても有効ですが、その時に特に内腹斜筋を意識するのが大切かと考えます。

今回の考察はここまでです。また新しい見解があれば更新します。


おまけ

骨盤が開大していくだけでなく、仙腸関節にも影響があると論文の中に記載がありました。

仙腸関節には、解剖学的に一定の捻じれが存在していて、骨盤輪の縦方向への負荷に対する骨性支持貢献する役割があります。その仙腸関節の変性が20歳代から始まり、加齢とともに進行して40歳代以上にて変性を顕著に出るそうです。
仙腸関節面下部の変性と関節面の捻じれの間には有意な関係があり、 年齢の上昇とともに骨盤の捻じれは促進する可能性が高いそうです。
そして、40 歳以下の 骨盤の捻れ度(第一外斜径と第二外斜径の差の絶対値に対し、身長にて正規化した値)は、年齢の影響を受けず個体差に依存することが分かった。とありました。

年齢とともに衰えていく。そんなの当たり前でしょ!という人が多いかもしれません。ですが、本当に衰えていくのでしょうか?鍛えて若い人よりもよっぽど筋肉が多い高齢者もいます。今回そのうちのひとつの理由が解明されたような論文でした。常識に捉われずにひとつずつ精査しながら治療していきたいです。

とても面白い論文でした!

参考文献

増田一太"成人における骨盤形態の性差 -男性と未産婦の比較-"愛知県理学療法学会誌 第33巻 第2号 2021 年 12 月


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