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肉の味がしない原因

名古屋四間道のオーロックス。肉料理の店だが大きな熟成庫を構える店内は、たった6席しかない。フレッシュから熟成まで、その日のベストを提供してくれる。

SNSで、ある銘柄牛を食べたがまったく肉の味がしなくてがっかり。これが銘柄牛なのか。という投稿があった。コメント欄には、A5を目指して届かなかったからなんじゃないかとか、農家も頑張ってるんだからとか。様々な意見が。

僕の見立ては、農家も格付けも関係ない。過去、何度も書いてますが、処理と保存です。

枝肉から骨を抜いて分割した肉を部位ごとに真空パックにします。早めに(7日以内)使えば問題ないが、真空パックのなかでドリップがではじめたら味が低下していきます。

サシが多い肉ほど脱骨後の酸化スピードが早いので、真空パックにしたばかりを10とすると、ドリップがではじめて8、7、6と味が下がるイメージです。

そして、真空パックにした場合、消費期限が約30日とシールに印字されているので、消費期限が近いものから味が抜けていくと思ってください。

赤身の肉の場合、水分が多いので、消費期限が近いものは、真空パックの中がドリップで溢れています。ドリップのなかで肉が溺れているようで、言葉よくないですが、見るだけで気持ち悪いです。真空パックを開けると、大量のドリップが流れ出し、肉にも浸透しているので、おいしいはずがありません。

焼肉にすればある程度たれで誤魔化せますが、すき焼きにすると一目瞭然です。割下が肉に入っていかないので、肉の味がしないのです。シンプルに焼くステーキも同じです。

だから僕は枝肉にこだわるのですが、和牛でいちばん重要な「香り」が真空パックによって損なわれているのは残念でしかありません。ただ、便利だし効率がいいので、一概によくないとは言い切れませんが、難しいところです。

枝肉を扱うには、冷蔵庫も必要だし、技術と体力も必要だし、なによりも売る力が必要です。

まとめると、真空パックは、長く保存する便利なもの、という考え方をするのではなく、流通させるための便利なもの、という考え方が僕は正解だと思う。なので、リパックしたり、長期保存したりしないで、すぐに使うべき。それと、いつ真空パックしたのかも重要。それと、ドライエイジングに対抗して真空パックの肉をウェットエイジングと呼んで、いかにも熟成肉だと謳うのはちょっと違うのではないかと思う。

話が真空パックのことになったしまいましたが、肉の味がしなかった原因は、酸化によるもの、というのが僕の見解です。

ありがとうございます!