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ギーク過ぎる原料解説HOP Vol.1 Columbus

前書き
クラフトビールに熱中し始めた2014年頃は、ビールに関する知識や情報が欲しくてもWikipediaに書いている程度のことを、わざわざ書籍や記事にしたような〇〇みたいな文字の羅列ばかりが並んでいてウンザリしたことを覚えています。しかしながら、生きた知識が一部のブルワーから発信されていたことは僕にとって救いでした。それがこの世界に投げられた数少ない情報と手がかりにして、小さな入り口だったのかもしれません。時は過ぎて、今は僕が、この道を目指す若い人たちに何かしらのヒントを少しでも提供できたら良いなと思ってます。如何ほどの価値があるか分かりませんが、まずは自分のアウトプットのために続けてみます。第一回目はコロンバス!

前書き→基本→歴史→経験則という流れで今後も組み立てていきます。

基 本
特徴:スパイシー、大地、柑橘、コショウなどと表現される。
α酸:14-18%程度
使用:ビタリングにもドライホップにも使用できるデュアルユースホップ。

歴 史
名前が3つ(Columbus, Tomahawk, Zeus)あり、総称してCTZと呼ばれるだけあって少し訳アリな過去を持ちます。真偽について論争はあるもののキーマンであり開発者の一人Zimmermann氏の記録や証言が参考になる。もともと1970年代にUSDA(米国農務省)のホップ育種プログラムの一環として、研究者のZimmermann氏が育てた品種だそうです。Zimmermann氏は、USDAを辞めて民間のホップユニオンにブリーダーとして仕事の場を移して、同種を育種していたが、1979年以降にさらにヤキマチーフへと移った際に遺伝資源(苗、根、葉、いずれかは不明)を持ち込んだことが問題の端を発しているようです。

Zimmermann氏が持ち込んだ遺伝資源は許可がなかったものの、1980年半ば当時、特許の取得が容易になる法律に変更されるまでは、特許について真剣に考える人が少なかったといいます。ともかく、Zimmermann氏がホップユニオンを去った後、ホップユニオンはコロンバスホップの特許を取得しようとしました。ヤキマチーフに移って働いていたZimmermann氏は、Tomahawkという名称で同じホップの特許を取得しようとしました。誰が実際に権利を所有しているかについて行われた法的係争がいくつかありましたが、最終的に彼らは一連の条件に同意し、それぞれの名称で権利を持つことで係争は収束しました。

Zeusと呼ばれる3番目の非常に類似したホップ品種は、Hop Steinerによって特許が取得されます。そして、最終的には、ホップユニオンが、Columbusの特許を、ヤキマチーフがTomahawkの特許を最終的に取得した企業になりました。ガスクロマトグラフィーにより、後にColumbusとTomahawkは確かに同じ品種であり、Zeusはわずかに異なる品種であることが明らかになりました。よって、その特性がColumbusとTomahawkの特性に非常に近いものの、品種違いのZeusを含めたCTZ(コロンバス、トマホーク、ゼウス)という名称が、3つすべてを網羅する総称となりました。

コロンブスの家系については、その特許が秘密保護対象のため記載がされていない。特許はそれが風によって授粉されたと述べているが、母親に関しては、多くの人は、ナゲットとの混合で派生した英国の品種ブリューワーズゴールドの子孫だと考えています。

CTZにまつわる一連の物語はZimmermann氏含む当時の研究者たちの中で、亡くなっている人物もいるため真偽については確かめる余地が少ない。僕は全然違う主張や物語も確認したのでこれ以上調べるのもナンセンスだと思いやめました。何より、ホップ1つとってもこんなに歴史があるんです。それが今、僕たちの手元にあるという奇跡に感謝しましょう。

経験則
かねてからクリーンな苦みもたらす印象を持っています。ケトルに投入した直後の麦汁からは、控えめな柑橘とハーバルな香りを浴びられる。うっとりリラックスできるような揮発香です。個人的にですが、よく言われるようなスパイシーな印象は、ホットサイドで特段強く感じたことはありません。出来上がりのビールからもそれほど。ペレットを直で嗅いだら確かにそんなニュアンスはありますが。ですが、ドライホッピングに使うと急に表情を変えます。煙や土のようなアッシュなキャラクターに様変わりで、いわゆるダンク表現されるマリファナの香りに似ている香味を呈します。コロンバスをドライホッピングしたビールは、フレッシュな時は多少の柑橘感を含んだ魅力的な香味に感じますが、ダンクな印象はたちまち渋みへと変わるような疑いがありました。これは今も原因がなんなのか詳しくわかっていません。経験のみが頼りになっています。ドライホップで採用する際は、強力なキャラクターゆえに使用量・適正値は探る必要があると思います。少量からお試しください。コロンバスをドライホッピングで制したら、なんだか格好いいです。

また「ビタリングホップはどれも同じ」という一部の醸造士の主張に反して、近年の研究では、ホップには20分以上の煮沸でスパイシーな苦みを呈するものと、そうでないものがあるとの発表があり、その研究によるとコロンバスはクリーンな苦みに分類されているので、僕らの感想である「クリーンな苦み」はあながち間違っていないようです。

糞みたいな余談ですが、コロンバスのペレットの香りはカレーのスパイスを想わせるものがあり、柑橘感+ちょいスパイシーがそうさせているのかもしれません。他の品種で最もカレーが食べたくなるのはチヌークです。実際に入れてみたらどうなるのか気になっていますが未だ試せていません。誰かやってみてください。ビジネスチャンスかもしれない!

読み切りやすいようにこれでも短めの文章を意識しました。こんな第1回目でどうでしょう。

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