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ギーク過ぎる原料解説HOP Vol.3 El Dorado

前書き
鈴木的、ワールドクラスホップベスト10の1つです。前回のSimcoeもワールドクラスホップベスト10の1つです。すっかり書きそびれていました。今度、ワールドクラスホップで打順組んでみます。とても雑に、一言でこのホップを言い表すならば「パイン飴」フレーバーです。

基 本
α酸 13-17%程度
トロピカルフルーツ、パイナップル、ストーンフルーツ、マンゴー、キャンディの味。洋ナシ、スイカの香りとされる。洋ナシもスイカも全然分からない。同意できない。

歴 史
名前の由来は黄金郷(El Dorado)伝説からです。16世紀スペイン人コンキスタドールが,新大陸に実在すると信じ,熱心に探し求めた伝説上の黄金の国エル・ドラード。この伝説はボゴタのチブチャ族の首長が年に1度グワタビタ湖の霊に供物をささげ,体中に金粉を塗って沐浴するという儀式に発し,スペイン人がそれを歪曲・誇張して作り上げたものとされています。なかなか秀逸なネーミングで、パイナップルやマンゴーの様な色味のフルーツを連想するキャラクターを持っていて、その名前について納得できます。

El Doradoは、ワシントン州モクシーバレーのCLSファームで作成されました。黄金郷伝説のように、このホップにも謎が秘められています。このホップはなんと2008年に開発され、2010年にリリースされました。まるで突如現れたかのように。通常、ホップ育種基準では神話クラスの異例事態です。新しいホップが商用利用されるまでには通常10年から14年はかかります。しかも何万種の中からたった数種のみだけ。詳しいことは未だ発表されていないようです。

時間のある方はCLS FarmsのHPを見てみると良いです。僕が所属するブルワリーはホップ農家の方と近い関係を持っていて、彼らの仕事ぶりと彼らの製品の価値に敬意をもっていますが、それでもやはり米国をはじめとした海外のホップ産業をネットで見てみると絶望にも近いスケールの差を感じます。あのクラスでもアメリカでは小規模で、しかも家族経営でやっているという、アメリカンスケールをまざまざと見せられる動画があります。圧巻の光景ですので是非見てみてください。

経験則
ペレットからすでに甘いトロピカルフルーツ感がある。突出しているのはパイナップルのキャラクターで、ビールに使うとパイン飴を溶かしたようなフレーバーが現れる。カラメル系と合わさるとグミのようなアロマも感じられる場合がある。最終比重の高いビールに使うとかなり甘く感じられるため注意が必要かもしれない。僕が使うなら、そこそこドライなビールに使いたい。というか結構使っています。甘みを際立たせるため、ジューシーにしたい場合はそれはそれで相性は良いと思います。

同じパイナップル系ホップには、Vic Secretというオーストラリア産の最強ホップがあり、キャラクターとしては下位互換のようにも感じられますが、Vic SecretにはないChinookのようなパイニ―感というか、樹脂っぽさをEl Doradoでより感じるので、パイナップル系ホップの二番手だとは決して思いません。結局のところ、使い方だと思います。

日本で育てられているホップにはトロピカル系が少ないので、今後El Doradoみたいな品種を育てるファーマーが増えたら、ハーヴェストブリューなんかはもっともっと面白くなると思っています。
ハーヴェストブリュー=「瑞々しい」とか、「青々しい」とか、ステレオタイプ的、刷り込み的な感想も、もしかしたら少なくなるんじゃないかと思っています。別にその感想が悪いとかは思ってないです。僕もそう感じることが多いです。そして、売る側もコマーシャル的に使用しがちな表現です。感じ方も人それぞれなので全く否定するつもりはありませんが、ブラインドで飲んでもハーヴェストブリューが分かりますか?という疑問も持っています。私の中では心理に触れる部分が大きいと分析しています。主観というか、バイアスというか。例えば、IPA10種中、1種だけがハーヴェストブリューIPAですと意地悪な官能試験を行われたら僕は当てられる自信がありません。
そもそも、ハーヴェストブリューの真の価値は、ペレットや乾燥ホップの加工由来の酸化がほとんど無いことにあると思います。瑞々しいというか、味わいが薄く感じられるのならば使用量が少ないのだと思います。ペレットホップと同じフレーバーを生ホップで乗せる場合、ペレットホップの8-10倍(重量)のホップが必要とされています。これはなかなか贅沢な行為で、簡単にできるものではありません。また、生ホップは瞬く間に酸化してしまうので、ハーヴェストブリューとはいえ全てのハーヴェストブリューが新鮮とは限りません。形式だけでなく、本当に新鮮な生ホップを、収穫して数時間以内に使うことで達成されるクリーンな味わいのビールが皆様のもとに美味しく届くことを願っています。

こうやっていつも話が逸れます。何の話でしたっけ。

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