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元営業部長がケーキ屋をはじめるまで②

「アレルギーのある人でもおいしく食べられるケーキを作ろう。」

2021年春、電通を退社して初めて桜が咲いた頃、自分が辿り着いた結論でした。

でも、小麦、卵、乳を使わないケーキ。

美味しいのか?

子供が小さいころ、アレルギーがきつかったので、

アレルギー対応専門のケーキ屋さんを利用したことはありました。

見た目は小麦、卵、乳を使っているものと変わりはありません。

でも、生クリーム、スポンジ、チョコレート、やっぱりどれも違います。

アレルギー対応のケーキだからと思って食べると、そういうものだと食べれるのですが、いわゆるケーキとは大きな違いがあります。

そのお店でそもそもアレルギーでケーキを食べたことがなかった娘が、生まれて初めてのショートケーキを食べました。(アレルギー対応の)

一口、二口食べて、食べるのをやめてしまいました。

初めてのショートケーキはおいしくなかったようです。。

娘は大きくなるにつれて、小麦や乳は少しずつ食べられるようになったのですが、その後もケーキを食べることはなかったです。。

今も、ケーキは食べません。。

アレルギーのある人でもおいしく食べられるケーキは、

アレルギーのある人もない人もおいしく食べられるケーキじゃないと、

食べた人を幸せにはできないと思いました。

小麦の代わりに米粉や大豆粉、牛乳の代わりに豆乳やココナッツミルク。

卵の代わりに米油やごま油をつかって、いろんなお菓子をつくってみました。

見た目はそれなりのものができても、なかなかおいしいものはできません。

小麦、牛乳、卵を使ったお菓子には遠く及びません。。

自分で作ったものを試食することすら辛くなってきます。。

ABCクッキングで写真のような小麦、卵、生クリームたっぷりのケーキを作る時間が楽しくなってきてしまいます。。

アレルギー食物を使わないケーキのレシピは難航しました。

そして、立ちはだかった壁はレシピだけではありませんでした。

「お菓子を作って売る」ためには保健所で営業許可申請が必要になります。

菓子製造販売の認可を得たキッチンで作ったものしか販売はできません。

自分的にはいきなり店舗を構えることは自分が置かれている状況的にも難しいと思っていたので、まずはお菓子を作ってマルシェやネットで売るところからはじめようと思い、自宅のキッチンをリフォームして菓子製造販売の許可を取得しようと思っていました。

でも、自宅のキッチンをリフォームして許可を得ることは難しいことが判明します。

衛生面の観点から、自宅で許可を得るためには、日常で使用しているキッチンとは別にもう1つキッチンを作って許可を取る必要があります。

家にもう1つキッチンを作る・・・

無理無理無理ー。

そうだ、シェアキッチンがある!

名古屋にもシェアキッチンがいくつかあり、すでに営業許可を取得しているキッチンであれば、食品衛生責任者の資格さえあれば、そこで製造して販売が可能です。

急いで、食品衛生責任者の資格を取りに行こうとネットで調べました。

すると、

「現在、食品衛生責任者講習会は新型コロナウィルス蔓延防止のため、講習会の実施を見合わせております。再開の目途がつきましたらご連絡いたします。なお、すでに講習会の再開をお待ちになっている方が多数いらっしゃるため、再開後のご案内に時間を要することがありますのでご了承ください。」

。。。涙涙涙。。。

3か月待って、無事講習会を受けることができ、食品衛生責任者の資格を取りることができました。

食品衛生責任者若葉マークの私は意気揚々とシェアキッチンに連絡し、担当者さんと打ち合わせを行いました。

当たり前ですが、シェアキッチンにはいろいろなルールがあり、そのルールを順守する必要があります。

また、私以外にもシェアキッチンを利用されている方はたくさんおり、多くの方が週末に開催されるマルシェに出店するために利用されていることが多く、木曜日、金曜日はおおむね、予約で埋まっているとのこと。。

あかんやん。。木か金で利用しようと思っていたのに…。

「でも、今なら空いてますよ。コロナでマルシェ自体が開催されていないので。。」

やっぱり、あかんやん。。

さらにもう1つ、大きな問題が出てきました。

仮に運よく木曜日か金曜日にシェアキッチンを借りれたとしても、

シェアキッチンはみんなが利用するキッチンです。

みんなが小麦や卵や牛乳をたっぷり使ってお菓子を作る場所です。

私が小麦、卵、乳を使わないお菓子を作っても、同じキッチンを使っている以上、そのお菓子にアレルゲンが混入してしまうリスクをどうしても避けられません。。

よくグルテンフリーの食品の成分表に記載されていると思います。

「※本製品と同じ場所で小麦を使用しています。」

ちゃんとしたメーカーさんの工場でも混入のリスクがあるのに、シェアキッチンで混入のリスクをなくすのは困難です。

人によっては少しの小麦でも卵でも乳でもアレルギー反応が出てしまう人がいます。

そんな人たちでも安心して食べてもらえるアレルギー対応のお菓子を提供したい。

シェアキッチンではそれが難しいということがわかりました。

シェアキッチンを使う限りは、販売するお菓子に、

「小麦・卵・乳を使用していません。※同じ場所で小麦・卵・乳を使用しています。」

と表記する必要があります。

これでは私が目指しているお菓子を作ることができません。

もう道は1つしかありません。

アレルギー対応のお菓子を作る専用キッチンを作るしかない!

気がつくと、1年遅れの東京オリンピックも終わり、

すっかり秋になっていました。


さらにつづく



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