散乱する本

本棚が崩れた。夜中に突然「ドッ」という音がして、おそるおそる電気をつけると、棚板は崩れ落ち本が床に散乱していた。夫と二人で「ああ…」と言ってとりあえずまた寝た。こんなに本が詰まっていたのか、と我ながら呆然としたけれどそれは言わなかった。本棚は壊れない、と勝手に思い込んでいたことも黙っておいた。

本棚は夫と同じものを使っているが、場所で分けているので基本的には個人管理だ。私の本棚が崩れれば、それは私が片付けるしかない。

正直言って、無理である。

落ちた分だけ元あった場所に戻せばいい、という簡単な話ではない。また落ちることのないように、本棚に並べるものを減らすために選別しなければならないからだ。

もう一度言うが、無理である。

元々片付けが苦手過ぎて、というかモノを捨てるのが苦手すぎて、中高生の思春期真っ盛りの頃に親から自室のガサ入れに遭ったことがある。要は「きったねえから片付けろ。できないのならやってやる」ということだ。あの時、互いに武器を所持していなくて本当に良かった。幼い頃から関係が良くないので、あの時もしかしていたら今ここで呑気にキーボードなんか叩いてないだろう。

とりあえず、棚から床に強制的に移動させられた本たちは、棚に戻れないままもう約2週間が過ぎようとしている。ひしゃげた棚受を交換して棚板だけは元に戻ったけれど、そこには私が整理に着手してすぐ挫折した名残として、なんとなく5冊だけ文庫本が置いてある。そして本棚の前を歩く度に「通れるしいいか」などと思っている。ちなみに「片付けなよ」とはもう言われなくなった。諦められるのがツラいか、しつこくされるのがツラいかは人によるだろうが、私は常日頃から「期待しないでくれ」と念を送っているので、これはこれで平和でいい。しかし、このまま放置するといつかマジギレされるのはわかっているので、とりあえず、どうにかしたい、と思うようにしている。行動を起こすのはそれからだ。


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